私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

批評・感想

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山田太一は『落下する夕方』(合津直枝監督)を本当に評価したのか

巨匠・山田太一と40も年の「親交」があったと複数のメディアで胸を張り、放送文化基金の助成まで受けた合津直枝プロデューサー(「東京新聞デジタル」2025年12月10日)。その「親交」の根拠として挙げられたのが、合津の監督映画を激賞したという山田の手紙…

野沢尚の命日・2004年6月28日

『破線のマリス』(講談社文庫)などで知られる作家・野沢尚は2004年6月28日に自ら命を絶った。映画・テレビ・舞台の脚本、小説、エッセイなど多分野で活躍していた野沢の急逝は衝撃的であった。

昭和末期の「自分らしさ」・『いこかもどろか』『男女7人秋物語』(2)

独立独歩を宣言する人物は、鎌田敏夫の作品に男女を問わず頻繁に登場する。その中でも自分の人生を自分で生きる女性像は『男女7人夏物語』(1986)と『男女7人秋物語』(1987)の系譜であり、他の作品以上に強烈ではあった。ただし『いこかもどろか』(1988…

昭和末期の「自分らしさ」・『いこかもどろか』『男女7人秋物語』(1)

暴力団の裏金に手をつけてしまった男(明石家さんま)はひったくりで賄おうとするが、その金をギャンブルで困窮する女(大竹しのぶ)に奪われた。再会したふたりはさらなる強盗を実行するも、悪徳刑事(小林稔侍、加藤善博)も絡んで大金の奪い合いが勃発す…

合津直枝と山田太一・放送文化基金の助成を受けておきながら

『男たちの旅路』シリーズや『岸辺のアルバム』(1977)、『ふぞろいの林檎たち』シリーズなどで知られる巨匠・山田太一。その山田の作品を振り返る展覧会の開催や石碑の建立といったことで、俄かに目立っているのが合津直枝である(放送文化基金の助成も受…

伴一彦と君塚良一・『誰かが誰かに恋してる』『踊る大捜査線 THE MOVIE』(2)

シリーズの起爆剤となったネットコミュニティを、こともあろうに悪の巣窟として扱った『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998)。その逆転構造に関して、速水健朗は10年以上を経た時点でこう述べる。

伴一彦と君塚良一・『さよなら、小津先生』『踊る大捜査線』(1)

テレビから映画化されて大ヒットした『踊る大捜査線』シリーズ。脚本を手がけたのが君塚良一で、その君塚に『うちの子にかぎって…』(1984)などで知られる伴一彦が影響を与えたのではないかと筆者は想像している。

評伝 山田太一の生涯(1934-2023)

【青年時代】 1934年、浅草の食堂を営む庶民的な家族のもとに山田太一は生まれた。父と後妻とが対立するなど荒んだ家族から脱出して大学に進学した山田は、孤独に読書に耽った。同期の寺山修司とは頻繁に会って手紙を出し合うなど密に交流し、クラスメートと…

『山田太一からの手紙』(合津直枝演出)を嗤う

2023年秋に逝去した山田太一の追悼として一周忌に放送されたのがETV特集『山田太一からの手紙』(2024)である。他に山田の追悼番組は、同じNHKの『クローズアップ現代』の「山田太一 生きる哀しみを見つめて」(2023)や『TBSレビュー』の1回分、『あの日 …

遠藤龍之介プロデューサーの軌跡・『どきんちょ!ネムリン』『勝手に!カミタマン』『もりもりぼっくん』『ジュニア・愛の関係』

2025年1月27日に行われたフジテレビの10時間記者会見にて、特にきびきびとした対応をみせたのが遠藤龍之介副会長(当時)であった。遠藤は80年代からさまざまな作品を制作しており、その歩みを簡単に追ってみたい。

野村正昭が隠棲していたころ

さまざまな映画監督の若き日を追った『デビュー作の風景 日本映画監督77人の青春』(DU BOOK)は優れたルポルタージュだが、その著者・野村正昭がかつて、仕事が厭になったなどと記していて何となく印象に残っていた。調べてみると2007年に季刊誌「映画芸術…

杉田成道演出「3番テーブルのもう1人の客」の敵意・『3番テーブルの客』(2)

『3番テーブルの客』(1996)のスペシャル版「3番テーブルのもう1人の客」は、台本の遅れによって舞台が初日を迎えられずにパニックに陥っているところから始まる。

杉田成道演出「3番テーブルのもう1人の客」の敵意・『3番テーブルの客』(1)

かつて歌手だった男は、いまは劇場の前に位置するカフェで働いている。ある日、別れた妻が偶然カフェに現れ、男はいまも歌っていてきょうは劇場で著名なビビ萩原と共演するんだと懸命に見栄を張った。だがその元妻の正体こそが…。

唐沢俊一の「私はここにいるよ!」

評論家の唐沢俊一には、幸か不幸かあまり影響を受けていない。当方の無知ゆえに唐沢の訃報に接しても感慨が湧くこともさほどないのだが、SNSによって死が発覚したと知ると何だか複雑な心境にはなる。

山田太一『終りに見た街』が帰ってきた

都心に通う生活者が暮らすようなベッドタウンに住む一家族。ある日、彼らは戦時下に家ごとタイムスリップした。主人公が幼いころに親しかった友人とその息子も何故かいっしょで、便利な生活に慣れきった彼らは戦時中に叩き込まれる。せっかく未来を知ってい…

三谷幸喜と深津絵里・『ステキな金縛り』『ベッジ・パードン』(2)

海外公演などの経験はあっても「旅がそんなに好きではない」三谷幸喜にとって単独渡航は挑戦であっただろう。それにしても「気分転換」をしたい折りは過去にもあっただろうに、ロンドン行きが何故この2010年というタイミングだったのか。本人の言う通り取材…

三谷幸喜と深津絵里・『ザ・マジックアワー』『ステキな金縛り』(1)

新作映画『スオミの話をしよう』(2024)の脚本・監督を務める三谷幸喜は「普段は、あの役者にあの役をやらせたら面白いぞ、みたいなところからストーリーを考える」(『三谷幸喜のありふれた生活3 大河な日日』〈朝日新聞出版〉)とジョークまじりで語った…

特攻服を祭り上げるのは誰だ・『3年B組金八先生』(第2シリーズ)

ヒット映画や秀逸なドキュメンタリー番組により改めて特攻隊が注目を集めている。特攻隊というと筆者が思い出すのはテレビ『3年B組金八先生』の第2シリーズ(1980)で、特攻への言及が『金八先生』全体を貫く精神にもよくも悪くもつながっているように感じら…

ほんとうに家族はいいものかしら・『今朝の秋』(2)

『今朝の秋』(1987)は脚本の山田太一にとって愛着のある作品のようでトークイベントでも自薦の1作として挙げて「家族全員の心は通っていない。でも最期だから芝居を、家族団欒の芝居をしようと」「(ラストシーンの)笠さんと杉村さんも、心が通っていない…

ほんとうに家族はいいものかしら・『今朝の秋』(1)

前妻(杉村春子)に男と去って行かれ、蓼科にてひとりで暮らす80代の主人公(笠智衆)。彼のもとへ息子(杉浦直樹)の妻(倍賞美津子)が訪れ、息子ががんで余命わずかだと告げる。息子とその妻は不仲で家庭は冷え切っていた。

山田太一脚本 × 鶴田浩二主演『シャツの店』メイキングを振り返る(2)

『シャツの店』(1986)の主人公はあくまで時代遅れでコミカルで、たしかに『男たちの旅路』シリーズのように作者の意図を越えてヒーロー化してしまう懸念はなさそうではある。しかしそれでも鶴田浩二の目つきやたたずまいにはかっこよさを感じさせるものが…

山田太一脚本 × 鶴田浩二主演『シャツの店』メイキングを振り返る(1)

任侠映画などで存在感を放った名優・鶴田浩二。その鶴田の遺作になったのが山田太一脚本によるテレビ『シャツの店』(1986)である。筆者は幼いころからこの作品をくり返し見ており、その制作過程を改めて振り返ってみたい。

金襴緞子の帯しめながら・佐高信と田原総一朗

もとは盟友関係でやがて非難し合い、いまはまた共著を出したりするようになった佐高信と田原総一朗。ふたりには冠婚葬祭をめぐる共通点がある。

三谷幸喜と西村雅彦(西村まさ彦)・『古畑任三郎』『真田丸』(2)

(承前) 三谷幸喜と西村雅彦(西村まさ彦)との関係が、再度ぎくしゃくしたのがシリーズ第3作『古畑任三郎』(1999)の時期である。西村はレギュラーの今泉慎太郎役を演じていたが、三谷は「今泉のおもしろさが行き着くところまで行った」として退場させて…

三谷幸喜と西村雅彦(西村まさ彦)・『12人の優しい日本人』『ショウ・マスト・ゴー・オン』『古畑任三郎』『ラヂオの時間』(1)

舞台『笑の大学』(1996)の映像をふと見返していて、西村雅彦(西村まさ彦)の好演に改めて感嘆した。この戯曲を手がけた三谷幸喜と西村とは名コンビであったが、やがて袂を分かつような…微妙な形に至っている。

なんとなく、ミサイル・「どことなくなんとなく」「まるで世界」

「白い夜があった……」 1975年に発表された藤子・F・不二雄「どことなくなんとなく」は、同じ会社や同じ家族でも何かが違う…という恐怖短篇である(『箱舟はいっぱい』〈小学館文庫〉所収)。主人公は不思議な「白い夜」の夢を見て以来、日常に違和を覚える…

野沢尚と麻生千晶・『眠れる森』“抗議” 事件(2)

「この数年、地道にやってきた仕事に少しずつ評価がついてくるようになった一方で、鋭くこちらを揺り動かしてくれる放送批評にめぐり逢いたいと切実に思うようになった」(「新潮45」1999年2月号)

野沢尚と麻生千晶・『眠れる森』“抗議” 事件(1)

テレビ『眠れる森』(1998)は全11回かけて謎を解くミステリードラマとして、当時大きな話題を呼んだ。往年の大映ドラマや近い時期の『家なき子2』(1995)など数か月の放送期間を経て結果的に犯人を突きとめるスタイルはあったが、謎解きを前面に謳うのは画…

援交から仮面へ・時代と切り結ぶ庵野秀明の道筋

テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)、映画『シン・ゴジラ』(2016)などによって不動の地位を確保している庵野秀明監督は、天賦の表現力を駆使して世態を描いてきた。

『結婚 陣内・原田御両家篇』(1993)の浦沢義雄脚本と鈴木清順演出とを比較する(5)

71)シナリオでは華子の死は直接的には描かれない。