批評・感想
『3番テーブルの客』(1996)のスペシャル版「3番テーブルのもう1人の客」は、台本の遅れによって舞台が初日を迎えられずにパニックに陥っているところから始まる。
かつて歌手だった男は、いまは劇場の前に位置するカフェで働いている。ある日、別れた妻が偶然カフェに現れ、男はいまも歌っていてきょうは劇場で著名なビビ萩原と共演するんだと懸命に見栄を張った。だがその元妻の正体こそが…。
評論家の唐沢俊一には、偶然なのかあまり影響を受けていない。当方の無知ゆえに唐沢の訃報に接しても感慨が湧くこともさほどないのだが、SNSによって死が発覚したと知ると何だか複雑な心境にはなる。
都心に通う生活者が暮らすようなベッドタウンに住む一家族。ある日、彼らは戦時下に家ごとタイムスリップした。主人公が幼いころに親しかった友人とその息子も何故かいっしょで、便利な生活に慣れきった彼らは戦時中に叩き込まれる。せっかく未来を知ってい…
海外公演などの経験はあっても「旅がそんなに好きではない」三谷幸喜にとって単独渡航は挑戦であっただろう。それにしても「気分転換」をしたい折りは過去にもあっただろうに、ロンドン行きが何故この2010年というタイミングだったのか。本人の言う通り取材…
新作映画『スオミの話をしよう』(2024)の脚本・監督を務める三谷幸喜は「普段は、あの役者にあの役をやらせたら面白いぞ、みたいなところからストーリーを考える」(『三谷幸喜のありふれた生活3 大河な日日』〈朝日新聞出版〉)とジョークまじりで語った…
ヒット映画や秀逸なドキュメンタリー番組により改めて特攻隊が注目を集めている。特攻隊というと筆者が思い出すのはテレビ『3年B組金八先生』の第2シリーズ(1980)で、特攻への言及が『金八先生』全体を貫く精神にもよくも悪くもつながっているように感じら…
『今朝の秋』(1987)は脚本の山田太一にとって愛着のある作品のようでトークイベントでも自薦の1作として挙げて「家族全員の心は通っていない。でも最期だから芝居を、家族団欒の芝居をしようと」「(ラストシーンの)笠さんと杉村さんも、心が通っていない…
前妻(杉村春子)に男と去って行かれ、蓼科にてひとりで暮らす80代の主人公(笠智衆)。彼のもとへ息子(杉浦直樹)の妻(倍賞美津子)が訪れ、息子ががんで余命わずかだと告げる。息子とその妻は不仲で家庭は冷え切っていた。
『シャツの店』(1986)の主人公はあくまで時代遅れでコミカルで、たしかに『男たちの旅路』シリーズのように作者の意図を越えてヒーロー化してしまう懸念はなさそうではある。しかしそれでも鶴田浩二の目つきやたたずまいにはかっこよさを感じさせるものが…
任侠映画などで存在感を放った名優・鶴田浩二。その鶴田の遺作になったのが山田太一脚本によるテレビ『シャツの店』(1986)である。筆者は幼いころからこの作品をくり返し見ており、その制作過程を改めて振り返ってみたい。
もとは盟友関係でやがて非難し合い、いまはまた共著を出したりするようになった佐高信と田原総一朗。ふたりには冠婚葬祭をめぐる共通点がある。
(承前)三谷幸喜と西村雅彦(西村まさ彦)との関係が、再度ぎくしゃくしたのがシリーズ第3作『古畑任三郎』(1999)の時期である。西村はレギュラーの今泉慎太郎役を演じていたが、三谷は「今泉のおもしろさが行き着くところまで行った」として退場させて、…
舞台『笑の大学』(1996)の映像をふと見返していて、西村雅彦(西村まさ彦)の好演に改めて感嘆した。この戯曲を手がけた三谷幸喜と西村とは名コンビであったが、やがて袂を分かつような…微妙な形に至っている。
「白い夜があった……」 1975年に発表された藤子・F・不二雄「どことなくなんとなく」は、同じ会社や同じ家族でも何かが違う…という恐怖短篇である(『箱舟はいっぱい』〈小学館文庫〉所収)。主人公は不思議な「白い夜」の夢を見て以来、日常に違和を覚える…
「この数年、地道にやってきた仕事に少しずつ評価がついてくるようになった一方で、鋭くこちらを揺り動かしてくれる放送批評にめぐり逢いたいと切実に思うようになった」(「新潮45」1999年2月号)
テレビ『眠れる森』(1998)は全11回かけて謎を解くミステリードラマとして、当時大きな話題を呼んだ。かつての大映ドラマや近い時期の『家なき子2』(1995)など数か月の放送期間を経て犯人を突きとめるスタイルはあったが、謎解きを前面に謳うのは画期的だ…
テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)、映画『シン・ゴジラ』(2016)などによって不動の地位を確保している庵野秀明監督は、天賦の表現力を駆使して世態を描いてきた。
71)シナリオでは華子の死は直接的には描かれない。
26)横浜の舞の技工室に披露宴の招待状があった。日取りは「平成四年十二月二十四日」。
20)テレビ局の前のシーンは書き割り。
11)華子の控室に尚也が豆腐のプレゼントを持参する。
セシールの提供により制作されたオムニバス映画『結婚』(1993)。鈴木清順・恩地日出夫・長尾啓司の三監督がそれぞれ45分程度の中編を撮った。
『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003)での監視システムのシーンが物議を醸したせいか、公開後の本広克行監督のコメントはニュアンスがやや変わっている。
テレビ『踊る大捜査線』(1997)の映画版『踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003)が大ヒットしたとき、かまびすしい議論を呼んだのが劇中に登場する監視カメラであった。
ガイド本『NHK大河ドラマストーリー 花の乱』(NHK出版)には『花の乱』(1994)の出演俳優のインタビューが多数掲載されている。三田佳子など主演級は自身の役柄について所見を述べているけれども、あまりなじみのない室町時代が舞台ということもあってドラ…
1994年に放送されたNHK大河ドラマ『花の乱』(1994)。室町時代を舞台に応仁の乱を描いた異色作で、幼い筆者はこの作品を面白く見ていたのだが、放送直前に出演者の島田陽子が降板するアクシデントがあった。四半世紀を経たいま、改めてこの問題に触れてみた…
何年も前のことだが首相経験者の遊説を見かけたことがある。さすがに知名度があるので人だかりもできていたけれども、アンチの多い御仁であるせいか、強面のSPが周囲を厳重に警護している……ように見えた。筆者は特にじっくり拝聴したいとも思わなかったので…
「休刊6ヶ月前から開始した休刊宣言のカウントダウンで、「噂の真相」編集部は創刊以来、最高に忙しい日々を送る事態になり、休刊して以降も筆者自身の単行本の執筆やテレビでのレギュラーの仕事が続いていたので、この本の企画が潰れたことすらもすっかり忘…
『A』(角川文庫)や『職業欄はエスパー』(同)、佐村河内守を描いた映画『FAKE』(2016)などで知られる森達也。その森が佐高信・岡留安則編著『100人のバカ』(七つ森書館)をかつて書評で取り上げた。編者の佐高は「『噂の真相』に連載された「7人のバカ…