26)横浜の舞の技工室に披露宴の招待状があった。日取りは「平成四年十二月二十四日」。
27)舞が新幹線に乗っていると尚也が取材陣から逃れて来る。尚也は舞の隣に座ってかくまってもらう。瞬間、寝る尚也に舞がキスしようとするが、尚也は目ざめる。また取材陣が通る。映画で取材陣のひとりが怪しむ動作は、シナリオにない。
28)車内で華子が暴れ出し、車が次々と横転。
●車内
華子が眠っている。
突然、
華子「(目覚め)葉唐辛子のお握り食べたい!」
叫んだ。
運転手「(吃驚)?!」
華子「(憑かれたように)葉唐辛子のお握り! お握りお握りお握りお握りお握り葉唐辛子!」
運転手の首を締めた。
運転手「(苦しがり)~~~~~」
ハンドルから手を離した。
ほぼシナリオ通りで、映画では雪が降る(シナリオでは雪は終盤だが、映画はこの時点で降らせている)。このシーンはモノクロっぽい処理でトーンが異なる。食べものに執着するのは浦沢義雄脚本ではよく見られる。
29)旧家ではテレビ中継も行われる予定だが、華子が到着していない。尚也は菅原にドレスを着せようとする。
尚也「社長が花村華子に化けてリハーサルするんだ、そのうち本物の花嫁が来る」
菅原「(呆れて)俺に花村華子の代わりが務まる訳ないだろ」
尚也「務まる!」
菅原「どうして?」
尚也「花村華子の素顔、社長みたいなもん(原文ママ)」
菅原「はっ?」
尚也「このリハーサル用のドレスを着るんだ」
映画では、ふたりが言い合う部屋の壁は緑。華子の素顔は社長みたいだと言われたとき、菅原はタラコ口になっている。その横で舞が、飾ってあるウエディングドレスを見つめていた。
66)大広間でディレクターがいら立っていると、尚也がウェディングドレスを着た舞を連れてきた。広間の壁は真っ赤。
ディレクターが「じゃ最後に花婿が花嫁にキスなんかして盛り上りましょう!」と指示。すると舞は涙を流して尚也を平手打ち。舞はウェディングドレスの飾ってあった居間に戻り、花輪を投げ捨てる。ディレクターは「花村華子の事ならなんでも判ってるから聞いて」と軽薄で、怒った尚也はディレクターを殴る。
居間で舞が花輪を棄てるシーンのみ、シナリオになく映画に足されている。
67)雪の舞う事故現場。シナリオでは「激突した後の車から仲人の義川夫妻がようやく這い出して来た」。そして「横転した自動車の中に血塗れで倒れている華子を発見した。」とあるが、映画では車の横転はなく、華子は血を流して目を見開いているのみで簡略化されている。
義川は農家で「馬を貸して下さい」。義川夫妻は耕運機に乗っていく。映画では義川が謡曲「高砂」を唄うが、シナリオでは唄うのは終盤のみで前倒しされている。
68)舞が居間でウェディングドレスを脱ごうとすると、尚也は真剣に「お前の子供を妊娠したい!」と告白。シナリオでは尚也が舞を抱きしめるが、映画では舞が涙を流すのみ。するとウェディングドレスの菅原が現れ「何が何でも花村華子と結婚してもらう」と迫る。
69)ディレクターが「花嫁と花婿が挙式を前にナーバスになっています。花嫁と花婿とかかわりになって刺激しないように。(原文ママ)食事して下さい」と注意して弁当を食べていると、尚也と舞、菅原の3人が屏風や杉戸を倒して争い、ディレクターは下敷きに。映画はシナリオ通りだが、杉戸の向こうは緑色になっている。
70)やがて奥の仏間へ。
仏間では諸仏がUFOキャッチのまわりに集まり位牌キャッチをしていた。尚也も舞もまじり込んでいる。
映画では博徒と芸者、西洋人が仏に化けている。キャッチされた位牌には「花村華子之霊位」。
菅原、一人一人の仏の顔をのぞき込む。
その時、義川の耕運機が仏間に入って来、諸仏を蹴散らし居間にでんと居すわる。
義川「花村華子が交通事故を起こした!」
尚也・舞「……」
菅原「……?!」
スタッフ、弁当を食べ続けている。
ディレクター「弁当を食べてる時か! 生中継はどうなるんだ、生中継は!!」
と菅原につかみかかる。
菅原たじたじとなるがディレクターの首をしめ、
菅原「弁当ぐらい食わせろ」
ディレクター「俺だって食ってないんだ」
義川「ナーバス、ナーバス」
菅原、ディレクター、尚首をしめ合い、お互い失神する。
義川「(スタッフに)何か別の適当な番組を流すよう局に連絡しろ」
映画では大幅に変更され、菅原が「花村華子が死んだぞ」と位牌を持ってきて、ディレクターとつかみ合いになる。義川が耕運機で乱入するくだりはすべてカット。(つづく)