私の中の見えない炎

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高寺成紀 インタビュー “2000年のヒーローに”(2000)・『仮面ライダークウガ』(4)

——ヘリコプターのシーンとか、合成の仕上がりはともかく、やりたいことはよくわかる。しかも、しつこかったじゃないですか。普通は蹴落としたら終わるんだけど、蜘蛛の怪人だから、くるくると戻ってくる。

 

高寺 あのシーンの合成については、技術協力の方たちが残念がっていました。ハイヴィジョンの特性としては奥までピントが合ってないとおかしいんです。だけど、これまでのフィルム撮影の癖で、つい背景をぼかしてしまったんですね。第1話で、まだスタッフの間でのやりとりがうまく機能していなかったんです。

 

——アクションなんですが、敵怪人はともかく、クウガについては、ワイヤーとかトランポリンを使わないで、極力リアルに抑えていますよね。

 

高寺 やはり、物理法則に反する動きは、見ていてすぐバレちゃうと思ってるんですよ。吊っていると思っただけで気持ちがひいちゃう。チビッコだからごまかせるという発想は、とにかくまちがっていると思ってます。なんか変だなと思ったら、チビッコはアッという間に“卒業”しちゃいますよね。小学生が見ていて、これならありだなと思ってくれる番組にしたいですね。

 そういう意味では、『クウガ』のスタッフの取り組みはもうスゴイですよ。1~2話で本気で試行錯誤を始めてしまったら、もうあと戻りがきかない。例えば、バイクや車に乗っているシーンの撮影は、これまでの子供番組だと、時間や予算の制約から、オープン撮影で青空の見えるところに行って、そこがどこか分からないようにアオリのアングルに入って、車の写っていない部分をスタッフが揺らして、走っている感じを出して撮るんです。でもそれだと、ごまかしているのがわかってしまう。今は、車輛はすべて、いわゆる“ひっぱり”や“牽引”というやり方で、ロケ地にそのバイクや車をもって行って、セットアップされた特殊機材で撮影しています。 

EPISODE 1 復活

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  • 発売日: 2015/08/27
  • メディア: Prime Video

——バイクのスタントとか、水に入ったりとか、ぎりぎりまでがんばっているのがわかります。

 

高寺 あれは石田(石田秀範)監督のノリですね。脚本には、あそこまでは書いていないんですけど。水の深さにしても、こっちは昔の仮面ライダーのイメージで、足首までぐらいを考えていたんですが、あそこまで入っちゃうとは。

 石田さんはほんとうに張り切っていて、メ・ギノガ・デの回なんか、キノコ怪人だから湿度を好むという設定なんで、全編雨にしようという案まであったんですが、ふつう監督が嫌がったりするんですよ。製作的にも大変なことになってしまうし。ところが石田さんは「…おもしろいですね」って。こっちが逆に「やめてよー」っていう感じになります。この後、フクロウの怪人(ゴ・ブウロ・グ)が出てくる話があるんですが、「全編夜だったらおもしろいですよね。でも、現場としてはやはり無理ですよね」って言ったら、「…やってみたいですね」って。

 

——見ていてわかりますが、画はどんどん変ってますよね。1~2話と比べると、大きく様変わりしている。それを見るのがまた楽しいです。

 

高寺 脚本の荒川荒川稔久さんや文芸の人たちもそうですが、現場の監督たちも各パートのスタッフも出演者たちも、とにかくウズウズしている感じで、みんなやりたいことがあるんです。現場スタッフの意識を変えてくれたのは、荒川さんの脚本と、石田監督の男気かな…。ちゃんと作らないと、という意識がスタッフ全員に広がって、自分の力量の限界まで出そうとしている。だから今度は逆にこっちも、スタッフにつまらないと思われるような脚本は出せない。そんな感じになっています。

 すごく生意気な言い方ですが、『クウガ』に携わったスタッフは次のステップに移れるようにがんばろうね、と言っているんです。とにかく逞しくて、頼りがいのあるスタッフが多くて、いい本が上がるまで待つよ、と言ってくれる粘りがあるんですよ。みんなもう開き直ってますからね。そんなつもりはなかったんですが、「気がついたら朝だった」なんてセリフがあると、これは俺たちのことか、って。

 

——怪人の造型なのですが、プロデューサーとしてどういったことに留意されていますか。

 

高寺 番組開始まで時間がったものですから、レインボー造型さんにまめに通って、これからの造型についていろいろと相談をしました。そうしたら、知らない間に新素材を仕入れにアメリカまで行ってくれたりしたんですよ。ズ・グムン・バのもみあげ、モヒカンや、ズ・ゴオマ・グの胸毛、メ・バヂス・バの髪とか、毛に関しては、日本の素材ではうまく表現できないことがあったらしくて、それをわざわざ買いに行ってくれたんです。

 造型については、とにかく粗が出ないものにしましょうと。今、いろいろと学習しながらやっているのはシワなんですが、例えば、腕を曲げると、どうしてもそこにシワが出るんですね。このシワをどう逃すか、隠すか。当面、造型的にフォローするのが難しいということになったので、じゃあ、デザインでなんとかうまく処理できないかを検討しています。つづく

以上 “SFオンライン41号”より引用。 

語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】

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