私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

金子修介 × 港岳彦 × 花澄 トークショー レポート・『ゴールド・ボーイ』(2)

【原作と脚色 (2)】

金子「(『ゴールド・ボーイ』〈2024〉)原作では貧富の差があって、上流階級と下流の階級が出てくるわけですけど。中流の中の上流下流っていうか、中流でもついこないだまで下流だったのが事業に成功して大富豪になった層があって、一方で離婚なんかしちゃっていきなり貧しくなったとか。それは日本だと難しくて、沖縄の雰囲気に合うかな」

「貧困の問題は沖縄にあるし、軍用地の問題もある。ただぼくは政治的な主張をする気はないんですが、仕上がったのを見ると戦闘機が飛びまくっていますね。戦争の影を映像表現と音響で出してるのが金子修介だなって思いました」

金子「(笑)やってるうちに子どもと大人の戦争だっていう認識を持つようになって、それで戦争に近いと。最後まで戦うぞって。港くんの脚本をほぼ直さず」

「脚本は2時間半以上の量があるんですよ。ぼくの計算だと2時間35~40分。2時間でまとめられるのかって思って、打ち合わせで金子さんは「ぼくの感じだと2時間ですよ」って言われて、ぼくは知らねえと(一同笑)」

金子「そうだったんですか」

「絶対2時間で収まるわけない。でも出来上がったら2時間9分になってて、すげえと思いました」

金子「ぼくにとってはプレッシャー。ただ2時間って言っとかないと。プロデューサーは必ず、シナリオは長いって言いますからね。短く収めるのが現場では大変だったわけですけど。

 ほぼ脚本通りなんだけど、切った台詞って判ります?」

「多少は。でもあんまりわかんないですね」

金子「岡田(岡田将生)くんと江口(江口洋介)さんのシーンで、岡田くんの台詞を切ったんですよ」

「なんかあった気がしますね」

金子「ネットで叩かれてるって台詞」

「ああ、気づかなかった」

金子「日本だったらクライムサスペンスだとマスコミが必ず出てきて被疑者にマイク向けたりして、そこが日本映画のつまんないところ(笑)。それはなくていいと。ただエクスキューズとしてぼくネットで叩かれてるって台詞があって、撮って編集してると、その台詞があると客観性が出てその後で(観客が)埋没できなくなる感じがして」

【花澄氏の役どころ】

 花澄氏の演じる打越遥は、冒頭では恨みを持った母親として登場し、やがて悲劇的な運命をたどる。

 

金子「花澄さんは前の作品の『百合の雨音』(2022)で主演なさってます」

花澄「金子さんの作品は3作目になります。全部の登場人物の中で遥って人はいちばん悲惨でかわいそうな役だなとまず思って。そこをゴールにしてしまうとやりづらいので、最後にお墓のシーンで日常の後悔みたいなことを語るんですね。最初出てきたときは狂人っぽいんですけど、それは壊れてしまっていただけで、喧嘩したまま別れてしまったとかを自分の中で思っている。朝陽たちにはださいよねって言われてますけど、下品な人ではないなと思って、そういうキャラクターにしようと思いました」

「墓場のシーンではこの人も気の毒になる。普通のお母さんなんだなと」

花澄「なのにすぐ殺すんですね(一同笑)。やっと吐露できたのに殺されてしまう」

「普通のお母さんだと判ってから殺されたほうが、人を殺すことの重みが伝わるかなと」

花澄「街で私を見た人に「ああ元気なんだ」って本当に言われて(笑)」

金子「花澄さんには母性があるかなと思って、この役がいいかなとお願いしたんですけど。最初の2時間半バージョンの脚本ではお母さんが沖縄のユタのお告げで犯人は朝陽だって言われるシーンがある」

「そうでしたっけ。ちなみに最初の脚本は2時間半じゃなくて3時間でしたね(一同笑)」

 最後に『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)や『デスノート』(2006)の監督としても知られる金子氏からのメッセージ。

 

金子「定番の挨拶で、監督を40年やっておりまして、今回は怪獣も死神も出ませんと(一同笑)。コロナ禍と戦争と中国のSF小説の『三体』(ハヤカワ文庫SF)、その3つの精神的なインパクトで自分のつくる映画がそれ以前と比べると随分変わったという気がしてるんですね。日本映画にはあまりない発想を中国の原作に教わって、それで日本映画として海外で勝負できるものをつくろうっていうのがプロデューサーの考えでもあったんで。2時間にしろってプレッシャーと戦いながらつくりました」