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荒川稔久 インタビュー “癒し系なヒーローを”(2000)・『仮面ライダークウガ』(1)

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 テレビ『仮面ライダークウガ』(2000)のメインライターを務めた脚本家・荒川稔久氏。氏は『五星戦隊ダイレンジャー』(1993)、『特捜戦隊デカレンジャー』(2004)、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)、『非公認戦隊アキバレンジャー』(2012)、現在放送中の『魔進戦隊キラメイジャー』(2020)など多数の特撮・アニメ作品を発表している。

 その荒川先生が『クウガ』制作の真っ只中で受けたインタビューを、以下に引用したい(用字・用語は可能な限り統一し、明らかな誤字は訂正した)。文中の太字はもとのサイトにあった語で、細字は引用者によるものである。

 

ライダー、書かない?

——まずは、『クウガ』に参加された経緯を教えてください。

 

荒川 高寺高寺成紀プロデューサーから「仮面ライダーやるんだけど、書かない?」と電話がありまして、最初「ちょっと考えさせてください」と言ったんですけど…

 

——躊躇された理由は何ですか。

 

荒川 やはり「仮面ライダー」という看板はすごく大きいですし、今まで伊上伊上勝さんや上原上原正三さんみたいな(ベテランの)方がやられてきただけに、とてつもなくすごいというイメージもあって。僕自身は戦隊ものから『燃えろ!ロボコン』までやってきてみて、割と普通のヒーローものに馴染んでない感じが自分でもしていたので。

 

——東映の実写特撮ものはいつ頃から書くようになられたんですか?

 

荒川 『鳥人戦隊ジェットマン』からです。正確には『仮面ライダーBLACK』もちょっとやってまして、それは山田隆司さんの紹介で一応共作という形になってるんですけど、打ち合わせにも出ないで全部山田さんにやっていただいて。実は風疹にかかっちゃって、打ち合わせにも行けなくなっちゃったんです。それからしばらく間があいて、井上敏樹さんに呼ばれて『ジェットマン』に入ってから、戦隊ものを書くようになりました。

 

——そういえば、今回はその井上さんが各話ライターとして参加しておられて、荒川さんがシリーズ構成をしておられるわけですが、各話脚本と違うシリーズ構成の苦労というものはありますか?

 

荒川 そうですね。ある意味、主人公の雄介のセリフなんかも理屈じゃなく自分の感覚で書いちゃってて、「雄介はこういうときはこう言う」っていうことがうまく理屈づけて指定できないんですよ。だから最終的にセリフとかを僕の方で全部チェックさせていただくというのを(井上さんに)了承していただいてます。 

「体育会系」のヒーローにはしたくない

——そのキャラクターなんですが、今回の主人公の性格づけは、やはり荒川さんの考え方が色濃く反映されてるんでしょうか?

 

荒川 そうですね。他のところでも言ったような気がするんですけど、いわゆる「体育会系」のヒーローにはしたくないなあというのがなんとなくあって。自分が体育会系じゃないから余計に思うのかもしれないんですけど、今どき「熱い」だけで来られても「暑苦しいだけ」かなあ、と。それに、めげてるときに「がんばれ」とだけ言われても、がんばれないことってあるじゃないですか。そういうことを考えて、いわゆる「癒し系」な感じでいければなあ、というのが一番に考えたところですね。

 

——(主人公の雄介は)前向きなところもあるんだけど、全体にとても普通の人っぽいですよね。

 

荒川 ええ、そこ(の普通っぽいところ)から外れちゃうと、ハイビジョンの映像と馴染まなくなってしまうんですよ。いわゆるヒーローっぽくすると絵づら的にウソになり過ぎちゃって「こいつ変だよ」ってことになりかねないんで、余計に意識しましたね。

 

——より日常的なヒーローということですね。

 

荒川 そうですね。ヒーローになってなきゃ普通のおにいちゃんということですよね。

 

——これは高寺さんにもお聞きしたんですけど、今までのヒーローものと違って、主人公のまわりに普通の人のレギュラーやセミレギュラーがあんなにいっぱいいるというのも、意識的にそうされたんですか?

 

荒川 そうですね。今までだと、例えばヒーローのバイクに追跡装置があって敵の位置がわかったりとか、たまたま事件が起こってるところに通りかかったりとか、普通に考えると「そりゃないだろ」っていうことを番組の進行のための約束事として成立させてたんですけど、それが見る人に割り切りを要求してしまって「子供番組」っぽくしてるのかなと。で、「じゃあどうしよう」ということになったときに、例えばまず警察の人間としての一条がいないと話が成立しないんですよ。さらに、いくらヒーローと言ってもその人が万能すぎるとウソくさいんで、あちこちにそれぞれの専門家を配置していった結果が今の形です。「普通の人が主人公でヒーロー」というのをやり始めたら、どんどんこうなっていったということですね。(つづく)

 以上 “SFオンライン41号”より引用。 

 

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