私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

荒川稔久 インタビュー “癒し系なヒーローを”(2000)・『仮面ライダークウガ』(2)

シリーズ構成の仕事

——シリーズ構成のお仕事というのはどういうことをするのか、読者のために詳しく教えていただけますか?

 

荒川 基本的にはまずプロデューサーの高寺高寺成紀さん、文芸の大石大石真司さん、村山(村山桂)さんと4人で話し合って流れを決めていきます。その中で僕としては雄介を含む人間側のドラマをどのように置いていくかというのを提案して、みんなでまとめる材料にしていくのが主な仕事ですね。そして、それを受けて、毎回毎回の脚本を詰めて、各人物のセリフを生み出します。あとは、役者さんに「このセリフはどういうニュアンスですか」とか質問されたときに答えるというのもありますね。

 

——すると、全体の構成をして、各話の脚本も書いて、読み合わせにも出るということですね。現場にも顔を出されたりするんですか?

 

荒川 現場はほとんどないですね。「ちょっと見学させてください」ということはありますけど、ほんとにお客さんとして見に行く感じです。

 

——「宇宙船」のインタビューだったと記憶してるんですが、代表作を聞かれて「『クウガ』になるといい」とお答えになってましたよね。やはりそれくらい特別なものということですか?

 

荒川 何と言っても「仮面ライダー」シリーズの一本ですからね。ヒーローものと言えばやっぱり「仮面ライダー」と「ウルトラマン」は双璧でしょう? 高寺さんの方にも「エポック・メイキングなものにしたい」という思いがあったんで、それに何とか貢献できればと考えて作品に臨んだんです。

 

——今のところ着々と順調に進んでいるようですが。

 

荒川 視聴率もおかげさまで良いみたいですしね。 

クウガ美子は平田昭彦の奥さん

——書いてて一番楽しいのは誰のセリフだったりしますか?

 

荒川 さあ、どうでしょうねえ。一番好き勝手やらせてもらってるのはおやっさん(きたろう)のセリフですね(笑)。

 

——ちなみにあのおやっさんのセリフはどこからがアドリブなんですか?

 

荒川 ちょっと前のエピソードで言うと「江波杏子、こわいな」とかはきたろうさんのアドリブですね。

 

——(爆笑)

 

荒川 きたろうさんがふくらましてるというのは多々ありますね。

 

——じゃあ「クウガ(久我)美子」というのは?

 

荒川 あれは「クウガ美子」というのも「平田昭彦の奥さん」というのも脚本にあるんですが、そのあいだの「ここにおおきなほくろがある」というのはアドリブですね(笑)。でもそもそも「クウガ美子」からしてOKになるセリフじゃないですよね、普通は。そのへんが『クウガ』の懐の深いところというか…(笑)。 

リアルっぽさのバランス

——マニア的には、最近の荒川さんの脚本というと、けっこうけれん味の強いマニアックなお笑いの入ったものが印象的なんですけど、『クウガ』ではがっちりシリアスでしかもリアルっぽさを追求しているということで、ずいぶん違うと思うんですが、書いていてそのへんはどうなんですか?

 

荒川 それはそれ、これはこれっていうか(笑)。確かに僕はあんまり日常的なもの、例えば『クレヨンしんちゃん』みたいなものはやったことがないんですけど、最近だとサンライズでやった『センチメンタル・ジャーニー』というのが、けっこう普通の世界観のものでして。アレをやってて、インターネットで調べものをするのがクセになっちゃったっていうか、意外に面白くてね。『センチメンタル・ジャーニー』の中で、お寺の住職に相談に行く女の子の話っていうのがあって、禅寺っていう設定だったんで、禅に関することをいろいろネットで調べながら書いたら、意外に変なものができて「こりゃ面白いな」と。あるいは、電車に乗って旅をする女の子の話のときは、ちょっとマニアックな電車のページを探したら、とんでもないものがゴロゴロあって「世の中にはこんな人たちがいるんだ」というか…

 

——(爆笑)

 

荒川 まあ、そういう面白さもあって、あちこち調べながら書くのが楽しくなっちゃって。

 

——では『クウガ』もけっこう調べつつ書いておられるんですか?

 

荒川 そうですね。ちょこちょこネットなんかで調べつつ。あとから「しまった」っていうこともいろいろあるんですけど。

 

——そのあたりがリアルな描写、たとえば警察なんかの描き方に反映されてるんでしょうか?

 

荒川 ええ。でも、書いててやりすぎちゃうときもけっこうあるんですよね。警察無線のやりとりとかリアルに再現してると、セリフがどんどん長くなっちゃって。そのへんは「このへん(のセリフ)詰めてください」とか指摘を受けながら、適当に選びつつやってます。「ウソになりすぎない」程度でなおかつ「リアルっぽくて面白い」という範囲に留まるように狙ってるつもりなんですが。つづく

 

以上 “SFオンライン41号”より引用。