シネマヴェーラ渋谷にて神代辰巳監督映画の特集上映が行われており、『恋人たちは濡れた』(1973)、『女地獄 森は濡れた』(1973)に出演した中川梨絵氏のトークショーが行われた。
中川氏は日活ロマンポルノ作品の主演で知られ、『恋人たちは濡れた』では長身で洒脱な美しさに感嘆させられる。『女地獄 森は濡れた』では、無気味で奇矯な夫人役。『女地獄』のシナリオは事前に読んでいたのだが、思ったよりコミカルな雰囲気になっていた。トークの聞き手は映画評論家・編集者の高崎俊夫氏。「神代監督は怖かったですか」という高崎氏の問いかけで、始まった(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
本数としては(ロマンポルノに)10本くらいしか出てないんですよ。3年で10本です。
私、いま武蔵小山でお店をやっておりまして。その前は四谷にいて、主人とふたりでやっていたんですけど、うちの母が認知症になって私の実家に移って、それから4、5年です。
こないだね、店にフランス人のディミトリニ・イアニさんという方がいらして。宮下順子と白鳥あかねさんがこちらに出られて、その後、白鳥さんからお電話があって、ディミトリニさんがそちらに行きますよって。私、フランス語はできないんですけど、英語のNOVAにお金をいっぱい使っていまして、四谷のスクールは私が行かなくなったらつぶれた(一同笑)。だから英語は大丈夫。あの人は、高崎さんより私のことよく知ってますよ。知ってたら “神代さん、怖かったですか” なんて訊かない(笑)。
私は小さいころから女優になるって決めていた人間です。成瀬巳喜男さんの『乱れ雲』(1967)に、東宝のニューフェースで2万人の中から選ばれて出たんですよ。その後、『フレッシュマン若大将』(1969)に出て、私は18で、加山雄三さんはもう29か30。若大将には無理があったかな(笑)。「青大将なんか大っ嫌い」って言う、かわいい役(笑)。須川栄三さんのにも出て、東宝でも10本くらい出ました。でも最後のころは、誰だったかな…藤岡琢也さんにおしりを触られる秘書の役。もう21、2で、これで私はおしまいだなって。
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その後2年くらい歌の勉強とかしていて、日活がロマンポルノをやるって新聞で見て。最初は面接で、藤井克彦さんと当時助監督だった田中登さんで、この人たちなら信じられるなって。真摯な情熱が伝わってきた。
1本目は、藤井さんが監督の『OL日記 牝猫の情事』(1972)。2本目が田中登さんの監督デビュー作の『花弁のしずく』(1972)で、フランス文学のポルノ版とか何とか言ってました。3本目が加藤彰さんの『恍惚の朝』(1972)。ここまではまあ普通かなって。映画の画面は綺麗で、でもなんか普通。おっすごいぞって初めてビビッときたのが『牝猫たちの夜』(1972)。田中さんの2作目で、私は出ていないけど、ラッシュ見てすごいなって。傘が天から降ってくるとか(笑)、素晴らしかったです。ワオって伝わってきて、これはすごい現場なのかもしれない。そこからギアがチェンジした。
神代辰巳さんの『一条さゆり 濡れた欲情』(1972)、私は当時加藤彰さんと仲よしだったんで、いっしょに新宿のオリオン座に見に行って驚きました。主演の伊佐山ひろ子さん、この人何者なんだろ。キネマ旬報主演女優賞を取って、ロマンポルノで主演女優賞って私の席だと思ってたのに(一同笑)。くやしいなーって、田中さんと新宿で飲んで、トイレに入って鏡見てポーズとりました(笑)。
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加藤さんは映画青年で小綺麗。田中登さんは真ん中かな。気難しくて、難解な言葉が芸術だと思ってる(笑)。神代さんはダンボール持っててもいいかもしれない。トレンチコート着て寝て、起きて。私もかまわないほうだけど、神代さんには負ける。あ、藤田敏八さんはおしゃれで、ビンテージのジーンズとかはいてて。(つづく)