にっかつロマンポルノ50周年の特集 “私たちの好きなロマンポルノ” がシネマヴェーラ渋谷で開催中。38作品が上映されるが、そのセレクトもユニークである。11月に加藤彰監督『女教師 汚れた噂』（1979）が上映され、編集者の遠藤倫子・樽本周馬両氏のトークショーも行われた。
遠藤氏はミニコミ誌「ORGASM」の発行人で、特集のラインアップにも参画。
樽本氏は『映画監督 神代辰巳』（国書刊行会）、白鳥あかね『スクリプターはストリッパーではありません』（同）、『笠原和夫傑作選』（同）などの編集を手がけた（以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください）。
【ロマンポルノ特集について】
樽本「今回の特集はにっかつロマンポルノ50周年ということで、いろんな人が選んだ名作とORGASMセレクションです」
遠藤「内藤由美子支配人からお話を伺ったんですけど、選ばれる方がいままでのような大御所や批評家の方とは違うという。映画関係の方やミュージシャンの方、新しく活躍なさってる方々にアンケートをとりたいと。それでわれわれにも枠をくださるということで」
樽本「ロマンポルノの特集でいちばん大きかったのは2012年に日活100年で山根貞男さん、山田宏一さん、蓮實重彦さんが選ぶというのがあって。きちんとした名作が選ばれて（笑）ほぼ10年後です。
今回は、メインのほうには名作が揃ってますね。神代、田中登、曽根中生、小沼（小沼勝）ですね。ORGASMセレクションはどういうこと？というセレクトです。聞いたことがないものとかがほとんどですね。普通だとこういう特集にラインアップされない。ただ全部見たわけじゃないですが、傑作で名画座にはかからないものがほとんどです。忙しいとは思うんですけど、名作は50年後もずっとやるでしょうから、いまだけのORGASMセレクションを優先的に見てほしいんですが。ヴェーラの内藤さんに聞いたんですけど、上映が難しいのもあったんですよね」
遠藤「もっとどっさりあったんですよ。有名な監督さんのあまり見られない作品ですとか。素材がないとか事情もありまして。成人館ではやっていても、日活さんの関係ではできないとか。いろんなことがあるというのも知りました。自分が見るときは何だこれは入ってないのかよっていうことがあったんですけど、事情がある（笑）。見るほうには関係ないんですけど」
樽本「映画館ではフィルムでしか見たくないって人もいますよね。国立映画アーカイブでロマンポルノの特集をやるかっていうと今後50年は無理でしょう。国が税金でポルノなんてって話に絶対になるので。いま見られるうちに見てほしいということですね。
2012年のときにも変わったものが選ばれてて『艶説 お富与三郎』（1972）とか『山の手夫人 性愛の日々』（1980）とか普段だったら名作32本に入らないようなものでそういうのは山田宏一さんが選んでて。『艶説』は続圭子が好きって。小沼監督の『箱の中の女 処女いけにえ』（1985）も。日活の人も1度見たら2度と見たくないというめちゃくちゃな映画」
遠藤「刺激が強すぎる」
樽本「今回入ってなくてよかった（一同笑）。1回だけでいいです」
遠藤「「ORGASM」は3人で書いていて、その中では私がいちばん詳しくないくらいですけど。われわれみんな小沼監督が大好きで、でもフィルムがなかったりして」
樽本「2012年にフィルムがない作品は他のものでってなったらしいんですけど、山根貞男さんが「おれたち3人が選ぶって企画なんだから絶対揃えろ」って恫喝して（笑）。山根さんは怖いんですね。それで珍しいものもニュープリントになって。『箱の中の女』はニュープリントにしなくていいと思いましたけど（一同笑）」
【『女教師 汚れた噂』(1)】
樽本「『女教師 汚れた噂』は私も初めて見て、本当に傑作だなと思うんですね。でもこんな傑作があるって言う人は誰もいなかった」
遠藤「ずっと成人館に通って詳しい方もいっぱいいらっしゃるので、その方々はご存じでしょうけど（笑）。ベテランの方にとっては普通かもしれません」
樽本「宮井えりなさんが美しい」
遠藤「かっこいいですね」
樽本「加藤彰監督の演出は繊細ですね。脚本がいどあきおさんでしょう。『（秘）色情めす市場』（1974）で有名ですけど。名台詞もいっぱいあって」
遠藤「宮井さんが言うとさらっとライトになる（笑）」
樽本「「好きだからセックスするなんてきたないわ」とか。山谷（山谷初男）さんの「あなたは汚れたがってる」」
遠藤「コーヒー、全然おいしくなさそうでしたね（一同笑）」（つづく）
