私の中の見えない炎

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酒井和歌子 × 高崎俊夫 トークショー レポート・『仮面の花嫁 暗闇へのワルツ』『死角関係 隣人夫婦男女四人のからみ合い』(2)

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【『死角関係』(2)】

酒井「理屈じゃなくて、自分が動けるか動かないか。頭で理解して動くってタイプの人はダメかもしれません。私はとりあえずやってみて、自分がついていけなければ動けない。頭で考えるより言われたことを先にやるかな。そのへんは感覚が合ってないとやりにくいかもしれません。

 セロテープを手に巻いたり、蓮司(石橋蓮司)さんが警察に行ったって電話しながら部屋をぐるぐる回ったり。監督の意図として、本人の心の動きなんでしょうけど。静の状態の芝居はあまりないですよね。こういう話だからかもしれないですけど」

高崎「レポーターが家に突然家に入ってくるところはすごいですね」

酒井「ありえない。ドラマだからね」

高崎「ドラマでも普通あそこまでやらないですよ(一同笑)」

酒井「それも理屈じゃないですね(笑)。なべを洗ったり、拾っていくと結構ありますね。大きな画面で見ると発見があって面白いですね」

 

【他の作品の想い出】

 『死角関係』(1987)では言わば被害者役だが土曜ワイド劇場『悪女の仮面』(1980)や『仮面の花嫁 暗闇へのワルツ』(1981)などでは悪女役。

 

酒井「『仮面の花嫁』という愛川欽也さんとやった作品で、日活の撮影所でセットがあったんですね。前の作品の撮影が終わるまで待ってて、愛川さんにワンシーンワンカットで行くって監督が(急に)言い出して、愛川さんが「えっ(台詞を)覚えてないよ」って。「大丈夫です、時間がありますから覚えてください」って言ってました(笑)。

 フィルムは結構高いですから1回NG出すと大変なわけですよね。いまのビデオみたいに消せないから。千葉でロケに行ったときも(追加の)フィルムを持ってきてもらうのを待ってたこともありますね」

 

 火曜サスペンス劇場『愛の牢獄』(1984)では、復讐に燃える役どころ。

 

高崎「『愛の牢獄』も田中収さんで、日テレの山口剛さんとのコンビ(プロデューサー)です」

酒井小林薫さんとですね。軽井沢行って、刑事が訪ねてきていろいろ訊かれる。がなっているにもかかわらず(台詞は)ぶつぶつ言ってくれと、スタジオに呼ばれてひとりでアフレコした記憶があります」

高崎小林薫さんがお兄さんの岸部一徳さんを殺害して、その罪を婚約者の酒井さんに着せる。手錠をかけられるシーンがあります」

酒井「血が出たんですが、仕事に没頭してて気にならなかったです」

高崎「岸田理生さんの脚本で、幻想的でモラルも何もなく突きつめていく感じがあります。

酒井「神代監督には、モラルって感覚はないかもしれませんね」

高崎「後半は軽井沢の山荘で飼育する。主人公の女性が裏切られて、逆転していくんですね。単なる復讐じゃなくて、倒錯した愛情の表現です」

酒井「(神代作品では)私はエキセントリックな女性でしたね(笑)。振れ幅が大きい。それで取っ組み合いがあったり、長回しで撮ったりして一日終わると心身ともに疲れるんですよ(笑)。でも心地よかったですね。達成感があって。 

 『愛の牢獄』で1週間くらい軽井沢にいたときも、監督は風貌があんな感じでしょ。台本をポケットに入れて、そのまま来るみたいな。着替えとか洗面具もない(笑)。ただ本質的に優しくて、女性への探求心も多い人だったかもしれないですね。

 神代さんは役者に「なんかない?」「なんかない?」って口癖のように言ってました。私は訊かれたことあったかな(笑)。こうしてああしてって言われて動くんですけど。自分の芝居ができる人は切り開くんですけど、才能のない役者は監督の言われるままに(笑)」

高崎「フィーリングもあったかもしれません」

 

 酒井・神代コンビの最後の作品は『死がお待ちかね』(1990)。

 

高崎「『死がお待ちかね』の市原悦子さんは大ベテランですけど、現場では全然言われなかったと」

酒井「私ができないものだから、監督が私にばっかりつきっきりで、やきもち焼かれたみたいです(笑)。最後のほうのシーンでは函館のロープウェイで、夜中しか借りられなくて2日がかりで撮りました。最初はこっち向いて私を撮って、次は市原さんを長回し。私のほうで時間かかって、市原さんが飽きちゃって申しわけない。途中から市原さん台詞言わなくなって(一同笑)。

 監督は酸素ボンベをつけてましたね。テストが終わると、監督のところへ駆けて行って、訊きました。でも疲れたからこのへんでやめようとかはない。いちばん年齢が上で、いちばん具合悪い人が頑張っているという感覚がありましたね」

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【神代監督の世界】

高崎「『仮面の花嫁』は、フランソワ・トリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』(1969)と同じ原作なんですね。昔読んだ記憶があるんですが。ただ酒井さんと愛川さんがふたりで堕ちていく感じは、原作とは違う気がします」

酒井「監督の世界を持っていらっしゃいますよね」

高崎「ミステリーは口実で、ロマンポルノと同じというか。2時間ドラマの枠を使って、好きなことをやっていらしたと思います」

酒井「映画も難しい時代になってきていましたしね。私もちょうど30のときに出会って10年くらい充実していて、出演させていただけてよかったですね」

高崎「酒井さんもロマンポルノに誘われたそうですが」

酒井「3、4本やったところで、ロマンポルノに出てみない?と。「人生観、変わるよ」って言われたことがありますね(一同笑)。

 映画が斜陽になって私も映画に出なくなったんですが、テレビで記憶に残るというと神代さんですね。東宝時代の監督は親子ほど年齢が違うんで、先生だったんですね。私も大人しくて、人と喋れなくて距離があったんですが、神代さんは監督のほうから寄ってきてくれて喋りやすかったです。仕事の上で恋するというか、この人とやりたいというのがありました。心身ともに疲れても、愉しかったですね。私の財産です」