宮下順子 × 石橋蓮司 トークショー レポート･『赫い髪の女』(1)

　重機の運転手・光造（石橋蓮司）は赤い髪の女（宮下順子）と出会い、アパートに引き入れる。女の過去は謎につつまれていて、ふたりは諍いを繰り返しながら身体を重ね合う。　

　中上健次「赫髪」（『水の女』〈講談社文芸文庫〉所収）を映画化した『赫い髪の女』（1979）は、にっかつロマンポルノのプロパー作品で日本映画史に残る名作と称えられる。

　『映画監督 神代辰巳』（国書刊行会）の発売を記念して2019年10月に渋谷で神代辰巳監督の特集があり、本作のリバイバル上映と宮下・石橋両氏のトークショーが行われた。前夜に関東地方を台風が襲っていたが、無事開催の運びとなり、場内は満員。聞き手は朝日新聞の石飛徳樹氏が務める（以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください）。 

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【準備・企画段階】

宮下「「次の作品はこれだよ」って初めに台本（脚本：荒井晴彦）をプロデューサーにいただいたときに、断ったんですよ。ねちねち濡れ場ばっかりで、ずっと。30歳になった年で肉体的な衰えも感じてましたし、辞めたいと思ってた時期なんですね。やる気なしに始めたというのが正直なところです」

石橋「きょうはここに紗幕を下ろしてもらえないと語れない（笑）。帽子も取れない」

宮下「久しぶりに会うと、いつも髪の毛をチェックする（笑）」

石橋「やかましい。神代監督との出会いが、ゴールデン街。いまのでなくて昔のゴールデン街です。よく同じ飲み屋で会って。何本か見ていて、いつかいっしょにできたらいいですねって話をしていて、その後に東映で『地獄』（1979）という映画があったんです。東映のスタッフばかりで撮るんで、誰か知り合いをということで自分がキャスティングされました。1か月くらい京都に行っておりまして、また神代さんとよく飲んだんですね。今度中上健次の「赫髪」という原作で撮ろうと思っているんだがお前やらないか、というように言われて。中上健次さんの原作に出てくる男性像は筋骨隆々で、木漏れ日が似合うような無口な男。おれはシティボーイだから無理だと（一同笑）断ったんだけど、いやお前のスケベさがいいと言われまして（笑）」

水の女 (講談社文芸文庫)

石橋「神代さんの女性観は、何かあるんでしょうね。飲んで話してると、何言ってるか判らないんだけど。

　順子とは、いや宮下さんとは以前に田中登監督の『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』（1976）でごいっしょしてたんですが、もう順子はにっかつの大スター。素敵な存在感を持った人だと思っていたんですが、そして『赫い髪の女』でべったり、からみの日々を過ごすということで（笑）。

　にっかつは3～4日で撮ってしまう作品が圧倒的に多いんですけど、1週間くらいかかったので大作ですね。カメラマンの米造（前田米造）さんのポジションの決め方も素敵だなと思っていて、出来上がるのが愉しみでした。脚本は荒井晴彦ですけど、映像化されると独特で、それでいて中上さんの怨念や烈しさが伝わってきてよかったなと思っています」 

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【現場でのエピソード (1)】

宮下「（髪を）染めるのは、まあお仕事ですから。1回染めて監督に見てもらってもっと染めなきゃダメだと。1回脱色してもう1回染めました。画面で見るより赤かったんで、40年前ってあれで街歩くと人から見られちゃう時代でしたね。いま考えるともっと赤くすればよかったって。　

　撮影の前に、原作読んだほうがいいですかって、私珍しく監督に訊いたんです。そしたら“難しいから読まなくていいよ”って言われて、私も素直なんで、はいわかりましたって読まなかったです（一同笑）」

石橋「『屋根裏』のときはあまり親しく話すということもなかったんですけど『赫い髪』ではべったりからむんで、話したり飲みに行ったりしてコミュニケーションをとりまして、酒乱であることが判りました（一同笑）。この場面はこうしたいけどどうだ、とか話したり。順子はこれでもう引退すると言ってたんで、じゃあ記念になる作品にしようって。任せてくれたんで、指導させていただきました（笑）。受け方はものすごくうまいですよ」（つづく） 

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映画監督 神代辰巳