私の中の見えない炎

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古谷敏 × 岡本祥子 トークショー レポート・『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』(2)

実相寺昭雄監督について (2)】

古谷「外交官になって、末は外務大臣とかね。あの性格だと大臣は無理かな(一同笑)。フランスでロケに行くと、通訳は実相寺監督がやったって。親しい人に「敏さん、実相寺は上っ面じゃないよ」って言われてね」

岡本「外交官よりもご自分の表現を、ということでしょうか」

古谷「あのころの映画はあこがれの職業だったと思いますよ。実相寺監督じゃなくて他の人が撮ってたら、こんなに55年も経ってみなさんが見てくれてはいなかったかな。

 口下手な感じだったらしいですけどね。自分からこうだああだとはなかった。プライベートの話もしなかったですね。『ウルトラセブン』(1967)でも演技はやりたいようにやれよっていうふうで。だから『ウルトラマン』(1966)のときよりも『ウルトラセブン』での蝮(毒蝮三太夫)さんはいい加減です(一同笑)。あ、でもアマギ隊員はしっかりやりましたよ(一同笑)。

 ファンの方も実相寺さんが好き、飯島(飯島敏宏)さんが好き、みっちゃん(満田かずほ監督)が好きといろいろいますね。監督によっていろんなのができたからよかったんですね。演じるほうは大変ですけど」

岡本「古谷さんはそれぞれの作品に合わせてすべて演じられたわけですからね」

【現場の想い出】

古谷「(アクションは)自己流です。力道山の空手チョップとか、ジェームズ・ディーンの形とか。『ウルトラマン』のジラースの回(「謎の恐竜基地」)をブルース・リーさんが見て、映画の中でそれをやったと聞きました。

 ウルトラマンを全39回とプラスワン。…プラスワンはゾフィー役です」

岡本「あ、最終回の」

古谷ゾフィーはぼくが入ってるんですね」

岡本「その日に言われたんですか」

古谷「そうです。ウルトラマンがどういうふうに消えていくのか、台本では明かされてなかった。ゾフィーウルトラマンのスーツにいろいろつけてあって、結局は入る人がいないんですね。会社の関係者は最初からぼくだって言ってました。別に葛藤はないけど、難しかったですね。ウルトラマンは死んで寝ていて、そこにゾフィーはどういう形で…。(スーツの)目も空いてなくて厳しい面もありました。ただ他の人がやるんじゃなくて、ぼくがやってよかったと思います。

 ただにせウルトラマンは(ウルトラマンとの格闘があるので)できなかった(一同笑)。人の姿を見て、おれのほうがいいかなとか(笑)。

 ジャミラに入ってるスーツアクターの荒垣(荒垣輝雄)さんは、スタントマンをやっていらした方で、東宝だけじゃなくていろんなところにいた方です。俳優としての表現があまりできなかったらしいんだけどジャミラに入って「敏さん、よかったよ。あれはぼくの一生の宝ですよ」って言ったことがありました。一世一代の演技でしたね。ジャミラは、もとは人間ですから。あの回はジャミラが主役ですね。ウルトラマンは脇役なんです。荒垣さんの演技をぼくは仮面の中で見ていて涙しました。彼は戦友ですね。火のシーンや水のシーン、いっぱいやりました。荒垣さんのことはいつも言うんですが、子どもさんから「こんなに言ってくれて」と電話がありましたね」

アメリカ旅行】

岡本「きょうは小さいお子さんもいらっしゃって、次の世代にもつながって途切れないというところが、ウルトラマンの神髄かもしれませんね」

古谷「世界にウルトラマンのファンはいっぱいいらっしゃる。誇れることじゃないかと思います」

岡本「先月、コロナ禍でもアメリカのフロリダにいらっしゃったということでどうでしたか」

古谷「フロリダではコロナなんて言葉は全然聞かなくて、マスクもしてると「何でしてるの?」って言われる。でもテキサス州のダラスではみんなマスクしてました。マスクをちょっとでもずらすと「Hey,you」ってジェスチャーをされる。ダラスで乗り換えてテキサスからフロリダに行くと、誰もマスクをしてません。前の大統領、トランプちゃんがいたところですからね。入口に消毒液のある店なんて全然ないし、温度計も一切ない。握手もハグも自由。3日間で会場に5万人くらい来たんですよ。『帰ってきたウルトラマン』(1971)のきくち英一さんも隣にいたんだけど、日本から来た4人にはコロナはうつりませんでした。平気で食べて飲んで、平気で握手してハグして。前と同じように歓待してくれて嬉しかったですね。

 日本に帰ってきたら1週間隔離でした。これはつらかったです。隔離の後で地震でした」

 

【近況】

岡本「M78星雲に行かれる方も増えてきて、でも古谷さんがこういうお話をすることでみなさんの心にも刻まれていきますね。全国各地に巡礼の旅に出られて」

古谷「今年は1月から関西地区に行って、寒い京都でお話しました(笑)。愛してくれるみなさんのおかげでぼくは元気でいられますね」

 

 以下は会場のみの情報ということだったが、映画『シン・ウルトラマン』(2022)の公開が始まったので加筆する。

 

古谷「(『シン・ウルトラマン』に)ぼくも関わってます。まだ発表しちゃいけないと言われてるんですが。『シンウルトラ』は壮大な計画で、かれこれ7、8年前にぼくの体が採用されました」

 

 『シン・ウルトラマン』では古谷氏はモーションアクターを担当されている。

 

古谷「敏ビールをつくりたいと思っています。イープロショップでお酒の販売許可の免許も取りました(拍手)。ケムール人ワインが既にいまできています」

 最後に古谷氏がスペシウム光線のポーズ。この数日前に宝田明氏が亡くなられていたので、古谷氏は喪章をつけて出席されていた。