
一度死んだはずの主人公は、自殺を図った中学生・真(声:冨澤風斗)に転生。そこで出会った真の母(声:麻生久美子)や父(声:高橋克実)、兄(声:中尾明慶)、同級生(声:宮崎あおい、南明奈)の思わぬ素顔を知ることになる。
森絵都のベストセラー小説(文春文庫)を映画化した『カラフル』(2010)は、ロボット作品で知られるサンライズが淡々としたアニメに挑戦した意欲作。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002)などの原恵一氏が監督した。2024年1月にリバイバル上映が行われ、原氏のトークもあり、『カラフル』についての他にテレビ『ドラえもん』(1979〜)や『エスパー魔美』(1987)などについても語られた。小黒祐一郎氏が聞き手を務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
【『カラフル』と内田氏】
原氏はシンエイ動画の社員演出家として『クレヨンしんちゃん』シリーズに長年携わっていたが、あたためてきた映画『河童のクゥと夏休み』(2007)を監督するために離脱した。
原「『河童のクゥ』をずっと長いこと企画していて、それをちゃんとやろうということで2004年か2005年に『しんちゃん』から離れた。企画は決まってないのに絵コンテをとにかく描き始めた。プロデューサーがあちこち企画書を持って行っても、なかなか乗ってくれる人もいなかったわけですよ。「何だよ、河童かよ」「お金の匂いがしない」と言われたとか(笑)。そのころに本郷みつる監督からシンエイに電話かかってきた。「久しぶり」って。本郷さんが「サンライズの内田(内田健二)さんが原さんに会いたがってるけど、いきなりはあれだから、つないでほしいって頼まれたんだ」って。
『カラフル』はサンライズ制作。同社の内田氏は『カラフル』の制作中に社長に就任した。
原「すぐに内田さん本人から電話があって「きょう会える?」。田無市の駅ビルにファミレスがあって、そこで何時みたいな。サンライズって自分に縁があるって思ってなかったから、だけどよそのスタジオの人に会いたいって言われると悪い気はしない。どうせロボットの設定を見せられてできませんって話になるのかなと。内田さんがぼくを見つけて名刺渡して、次の瞬間に「これをきみにアニメ映画にしてもらいたいんだ」って『カラフル』の黄色いハードカバーの原作をおれの前に置いた。ええっ、想像と違う方向に。森絵都さんって作家も知らなかったんだけど。まさかサンライズで小説を映画に? 「読ませてもらいますけど、いま自分の企画が動くかどうかわかんなくて」って答えた。持ち帰って小説を読んで、すごくやりたいけど、そのときシンエイを『河童のクゥ』がつくれたらその時点で辞める、つくれなかったら辞めると決めていた。どっちでも辞める(一同笑)。勝手なことで申しわけないけど、その後だったらやりたいと答えた。内田さんは即決で「いいよ」。
『河童のクゥ』をつくれることになって、サンライズと同じ沿線に住んでたんで、帰りがけに内田さんと田無市とかで飲んでて、ただの飲み仲間みたいになってっちゃったんだけど(笑)。ようやく『河童のクゥ』が出来上がって、内田さんは「やろうか」。そうか、この人は飲み仲間じゃなかった。待たせていたんだ(一同笑)。シンエイにはいないタイプのプロデューサー。内田さんはおれがフリーだと思ってたみたいなんだよね。サンライズって演出家になるとフリーランスにさせちゃう。だから「いやぼく社員なんですよ」って言ったら、内田さんは「そうなの! いいや、シンエイといっしょにつくるよ」って。どこまで懐が広いんだ(笑)。でもおれはシンエイって会社を知ってるから、それは絶対不可能だと思った。
『河童のクゥ』が2007年に公開されて、そこから『カラフル』をつくり始めて、約3年かけて完成した。内田さんはおれには言わなかったんだけど、終わってから「原作を押さえてるの(映像化権の維持)が大変だった」と。出版社と原作の森さんから「いつつくるの?」「ほんとにつくる気あるの?」って言われてた。だけど内田さんは、そのことをひとこともおれには言わなかった。内容に関しても言わなかった。任せてくれたね」
【『カラフル』の描写】
原「(原作には)中学生の女の子の売春とか男の子の自殺とかお母さんの不倫とか、際どい描写が出てくる。そういうことをアニメで描くのも『カラフル』の魅力かなと思ったんで、やったんだね。初号の少し前に東宝から「映倫に引っかかるかもしれない」って話が出て。それはまずい。脚本を映倫の人が見たら「このままやったらPG12です」と。だけど取材で中学校に行って図書室を見たら、結構『カラフル』が置いてあった。プロデューサーは「これ、中学校の図書室に置いてある本ですよ」って映倫に言ったら、文学と映像とは違うって。引っかかったのが、ひろかがお金で体を売ってるという描写。脚本や絵コンテの段階では「真くんなら2万でいい」って具体的な金額を言って個人的に売春をしようとするのがダメだと。だから台詞で言わないで指で示そうと。おれ、何て悪賢いんだろう(一同笑)。こっちのほうがなんか生々しい。初号に映倫の人がいて、どういう判定が出るかと聞きに行ったら、苦々しい顔で「いい」って。生々しくなったんで外圧も意外と大事かもしれない。
もう14年前で、当時ひろかみたいな女の子はいたかもしれないけど、それでもここまでの子は実在しないんじゃないかみたいな感じだった。いまは全然、当たり前になってるおそろしさ。原作者の森さんも際どい表現のつもりで書いたと思うんだけど、それが現実になっていく。
相当ストイックに、絵づくりもお芝居もアニメっぽくならないように。クライマックスが食事シーンという異例のアニメ映画。現場でスタッフが絵を描いてて、不安になることはすごくあった。何でみんな食事ばっかり描いてんだ、映画だぞ(笑)。でもこらえてよかったと思う。ファンタジーの要素を(無理に)入れたら、ものすごく平凡になってたと思う」(つづく)


