私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

古谷敏 × 佐藤利明 × 切通理作 トークショー “本物がここにいる!” レポート・『ウルトラQ』『ウルトラマン』(2)

東宝での青年期 (2)】

佐藤「敏さんは『怪獣大戦争』(1965)でのひと際、背の高いX星人をやっていますね。同時上映の『エレキの若大将』(1965)では学生運動をしてすき焼きを食べています。同時公開でぜいたくですよ(一同笑)」

古谷「いまのテレビみたいに裏番組に出ちゃだめよというのはないんですね(笑)。ちゃんとしたすき焼きで、スーパーの安い肉じゃないんですよ。いちばんいい肉を消えものとして小道具さんが買ってくる。板前さんもいて本番で、これはおいしいですよ(笑)」

佐藤「本当においしそうな顔で映ってますね(一同笑)」

古谷東宝はそういう意味では、いいところだったですね。それからテレビが始まって新しい時代に突入していくんですが」

佐藤「同期の新野悟さんによって、敏さんに白羽の矢が立つんですね」

古谷「新野さんは知っている方の推薦で入社しましたから、普通の人とは違う。テストも何もなくて、おれたちはこんな苦しい思いをして受かったのにって」

佐藤「その同期の方が東宝でデスクワークになって円谷プロに出向したことが、運命のターニングポイントですね。われわれはウルトラゾーンに入って行きます(一同笑)」

【『ウルトラQ』の想い出】

 『ウルトラQ』(1966)での古谷氏はでケムール人(第19話「2020年の挑戦」)やラゴン(第20話「海底原人ラゴン」)のスーツアクターを務めたほかに、顔出しでも出演している。

 

切通「『ウルトラQ』(1966)の制作第1話「マンモスフラワー」でも古谷さんは出演されていましたね。クランク・インは東京オリンピックの直前、1964年の9月です」

佐藤「『三大怪獣地球最大の決戦』(1964)の黒部ダムの探検隊になる直前です」

切通「(劇中で)桜井浩子さんがマンモスフラワーを目撃する前からずっとお堀端にいますね」

古谷「名チーフ助監督の梶田(梶田興治)さんにかわいがられて「おいでおいで」って目立つところに置いていただいたり。その梶田さんが東宝では監督になれなかったんです。チーフ助監督で終わってしまった。東宝には大監督がいっぱいいてなかなか死なないから、席が空かないんですよ(一同笑)。岡本(岡本喜八)組の野長瀬(野長瀬三摩地)さんもそうですね。福田(福田純)組の長野卓さんもで、この3人にかわいがっていただきました。

 (『ウルトラQ』では)梶田さんが初めて監督をやるということで、そのときは円谷のことはあまり知らなかったですね。満田(満田かずほ)さんが助監督で、お堀で、バケツで(水しぶきのための)水をかけてました。その後がケムール人」

佐藤「制作の話数で言うと「マンモスフラワー」とケムール人とは間隔があいてますね」

古谷東宝撮影所で仕事がなくなってきてたんですね。本数が減って、B2は顔を出すけど暇。ケムール人は撮影所で暇で背が高くて痩せてる、その三条件に当てはまったのがぼくですね(笑)。最初は顔を出さないというのは…とお断りしたんですけど。ただ時代の流れで映画はもうだめかなと。

 ケムール人はローラースケートに乗らなきゃいけなかったんですよ。あの歩き方はジェリー・ルイスさんからいただいたものです。タップダンスも歌も演技も上手いエンターテイナーの俳優さん。足も長いし背も高くて、それで真似しました。欽ちゃん走り(萩本欽一)もあれ(を意識したもの)ですね。ローラースケートはちっちゃいころから乗ってましたからできるんですが、8キロの頭をかぶって走るのは怖くて。頭にモーターが入っていて重いんですよ。飯島さん(飯島敏宏監督)に言って、ただ走るだけになりました」

切通「悠然と走ってるのに車より速いみたいなのがいいですね」

【『ウルトラマン』のエピソード (1)】

 『ウルトラQ』の次は『ウルトラマン』(1966)のスーツアクター

 

切通「つづいて『ウルトラマン』のバルタン星人、グリーンモンスネロンガの回ですね」

古谷「飯島組の3本ですね。ウルトラマンは宇宙人ですから、人間としてのハヤタさんの気持ちを考えてはいませんでした。金城(金城哲夫)さんや成田(成田亨)さんにも人間的な動きをしちゃダメだと言われましたね。どういう動きをしようかと悩みました」

切通「『ウルトラマン』の全39話の戦うシーンだけを、きょうは改めて見てきました。古谷さんのウルトラマンは、まず古谷さんが怪獣に突っ込んでく。失敗したりして苦戦してという段取りが多いですけど、最初に飛び込んでいく勢いに、プロレスラーのがっと行くみたいな感じがあります」

古谷「プロレスの王さまの力道山がイメージの中にありました。すごいヒーローでしたよ」

切通「ぼくらは、力道山は昔の記録映像で追体験したんですけど、ウルトラマンを通してまざまざと見た気がします。怪獣に覆いかぶされそうになったときにすっと飛びのく。ああいうのに身体性を感じます」

佐藤「窮地から反撃する敏さんにチャンバラスターの戦い方を感じます。以前に、ウルトラマンの前傾姿勢は『理由なき反抗』(1955)のジェームズ・ディーンだと伺いました」

古谷「子どものころから見ていていた映画などの蓄積をウルトラマンにぼくは込めたんですね」

佐藤「殺陣師や振付師、コレオグラファーもいなかったですよね」

切通「後のウルトラマンは編集されている感じが多いんですね。だけど最初の古谷さんのウルトラマンだけは怪獣に押しつぶされそうなのをするりと逃げて、体勢を整えるというのが多い。よけられるという前提でよけてるのか、それとも本当のプロレスみたいなところもあったんですか」

古谷「いや、あまりリハーサルはしてなかったですね」

切通「ああ、段取りはなくてしばらくは格闘を…ということなんですね」(つづく