私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

古谷敏 × 桜井浩子 × 稲垣涌三 × 田中敦子 × 小中和哉 トークショー(飯島敏宏追悼上映)レポート(2)

【『ウルトラマン』での飯島監督】

 『ウルトラマン』にて飯島監督は第2・3・5話をまず撮っていて、その3本はシリーズのクランク・インで第1話よりも先に制作された。

 

桜井「『ウルトラマン』になると毒蝮(毒蝮三太夫)さんと小林(小林昭二)キャップはTBSで飯島監督とやっていらしたんだけど、うち(東宝)の黒部(黒部進)先生と二瓶(二瓶正也)ちゃんは初めて。黒部先生に「飯島監督って怖い?」って訊かれて「いや、怖くないですよ」「そ、そう…」。(役者が)何かできないと監督はすっと見るじゃない? あの目が怖いんですよ。きみできないのね、みたいな(笑)」

小中「『ウルトラマン』の撮影で最初に撮られたのは(放送順と違って)飯島監督ですね」

桜井「そうです。3本持ちでした。最初の3日間ぐらいは、イデ隊員は石川進さんでした。第2話(「侵略者を撃て」)の「羊が1匹、羊が2匹」のシーンで二瓶ちゃんが来たんですよ。撮った分はなしにして、飯島さんはご存じだったみたいだけどキャップも私たちも知らなくて、キャップに呼ばれて「お前、イデが代わったって知ってるか」「おれは知らねえ」って。あたしたちは全員知らないで、急でびっくりしちゃって。二瓶ちゃんは私たちが知ってると思ってたみたいで「やあ、おはよう!」って入っちゃって(一同笑)。でもあの人は空気にとまどったりしない。

 最初に飯島監督はイデ隊員の性格づけをしようと思って、時間を結構かけてこうこうこうと。二瓶ちゃんはちゃんとその(指示)通りにやって、カメラを向いて「これ?」って(台詞を言う)。キャップは「カメラ向いてるよ…」。それがイデの人気というか、みんなの心をつかんだんじゃないかな。飯島監督がイデの性格をつくったんだよね」

小中「カメラ目線で視聴者に話しかけて文法を崩すというのも飯島監督らしいですね」

桜井「そうそう。いちばんびっくりしたのはキャップじゃないかな。本番一発でOKで、キャップは「うん、合格」。二瓶ちゃんのお芝居がキャップのお眼鏡にかなったのかな。それから5人が結束して仲良くなった。会うのが愉しくなったね(笑)。

 蝮さんが二瓶ちゃんをからかって「兎に角」を「お前、これ「うさぎにつの」って読むんだよ」って言ったから、二瓶ちゃんは純真な人だからそうだと思っちゃった。蝮さんがいけないの。テストずっとやってたのね。キャップとけらけら笑ってたんだけど、本番になって力が入って「キャップ、うさぎにつのですね!」って二瓶ちゃんが言っちゃったもんだから、飯島監督は怖い顔されてセットから外へ出ちゃった。テストのときにはしゃれだと思ってたんじゃない? あたしたちみんな、だじゃればっかり言って愉しそうにしてたの。それの一環かなと。 本番で監督はびっくりしちゃって出て行っちゃって。助監督は慌てて追いかけて。私は言っちゃったなあと。蝮さん下向いてるし。キャップも「ああ」みたいな顔で。私たち映りはいいんですけど、裏ではね(笑)。事情が判ったら、監督はもう何も言わないで穏やかに」

 記録(スクリプター)の田中敦子氏も登壇。

 

田中「飯島さんは誠実でテーマがしっかりあって。東宝から来た普通の監督さんは撮影の3日目くらいから「きょうはどのくらい回った?」って訊かれて、要するに30分に収まらないほど撮りすぎてないかということなんですが。飯島監督は一切そういう質問はしなかったですね。全部の尺が頭の中できちっと出来上がってから現場に入っていらっしゃったんだと思います。スクリプターの心配がなかったですね。いちばん信頼できる監督さん。逆に実相寺(実相寺昭雄)監督は「撮りすぎですよ」っていくら言っても無視されて前後編ができますってくらい(一同笑)」

 

【特撮現場の飯島監督(1)】

桜井「本編のキャラクターづけを飯島監督にしていただいたけど、ウルトラマンのほうも飯島監督が」

小中「飯島監督の最初の3本は本編特撮1班体制だったんですね。レギュラーのキャラクターづけというのは初回の監督の責任ですが、ウルトラマンも」

稲垣「ぼくはセカンドの助手でフォーカスマン。本編も特撮もやりました。当時としては珍しいですね。鈴木清さんがチーフでした」

小中「古谷さんは着ぐるみをができてから見せられたんですか」

古谷「いや、着ぐるみをつくっている段階からずっといろいろやってましたから、成田亨さんとね。ケムール人を見て「あいつだ」とウルトラマンを決めたらしいんで、成田さんがいけないんですね(一同笑)。当時はぬいぐるみ役者って言われて、着ぐるみなんて言葉はないし、ましてやスーツアクターなんて(笑)。そんな時代でした」

小中「キャスティングされたときはいかがでしたか」

古谷「厭ですよ(一同笑)。俳優としてはね。(ゴジラ役の)中島(中島春雄)さんとは同部屋でしたからね、しょっちゅう「きたないんだ」って話を聞かされて。同じ大部屋に二瓶も新野悟もいて。ぬいぐるみ役者って軽蔑はしてましたね。それがひょんなことから入るようになっちゃって、正解だった。成田先生のおかげですね(一同笑)。いまこの歳になって、スペシウム光線のポーズで世界を回れるのは古谷敏しかいない。それを育ててくれたのは飯島さんや成田亨さんです。嬉しい反面、やった後悔もあります(笑)」(つづく)