劇団の研究生である主人公(薬師丸ひろ子)は舞台「Wの悲劇」の端役とプロンプターに甘んじていた。あるとき「Wの悲劇」に出演中の大女優(三田佳子)の部屋で愛人(仲谷昇)が腹上死してしまい、主人公はそのスキャンダルを引き受けることによって大役に抜擢される。
映画『Wの悲劇』(1984)は、夏樹静子の同名原作小説を劇中劇に設定するというアイディアに感嘆させられるバックステージドラマの傑作。ただ着想がユニークなだけでなく、主人公と彼女に好意を寄せる青年(世良公則)との件りや大女優の強烈な人物像など濃厚な人間模様が堪能できる。
今年は角川映画40周年で “角川映画祭” が開催され、『Wの悲劇』のリバイバル上映と宣伝を担当した遠藤茂行・東映顧問のトークショーがあった。トークの相手役は映画ジャーナリストの植草信和氏が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
- 発売日: 2013/11/26
- メディア: Amazonビデオ
- この商品を含むブログを見る
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Blu-ray
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
【薬師丸作品の想い出 (1)】
遠藤「(所属は)洋画配給部という名前で、ジャッキー・チェンとかブルース・リーなどの洋画系に邦画を配給するセクション。経理から異動しました。経理のころは定時に終わって映画を見まくって、東京中の名画座に行ってましたね」
遠藤氏は、薬師丸ひろ子の出演作品を多数担当している。
遠藤「薬師丸さんの作品を担当したのは『セーラー服と機関銃』(1981)ですが、その前に『戦国自衛隊』(1979)がありました。(『自衛隊』の)台本では “少年のような武士” とあって、それから薬師丸作品の仕事が始まりました」
『戦国自衛隊』の薬師丸は重要な役割だが、出番はごく短い。『翔んだカップル』(1980)を経て主演した『セーラー服』が大ヒット。
遠藤「『セーラー服』では、相米(相米慎二)監督のアイディアで「主題歌もお前が唄ったほうがいいよ」と。キティレコードの多賀英典さんも角川(角川春樹)さんもそれに賛成して、唄ったことが大ブレイクのきっかけになっていきました」
主題歌のヒットによって、薬師丸は映画ファンだけでなく広く一般に認知されることになった。
遠藤「新宿アルタのバルコニーがあって、そこで薬師丸さんに唄ってもらおうと。無謀なことをやったなと。駅前なので入場制限もなし。警察発表では2万5千人集まって、上から見ると波のように…。マスコミ用に、バルコニーに出て手を振ってもらったら、波がバーッと押し寄せて。いま思うと事故がなくてよかったなと。当時は会社で誉められた、いまだったらバカヤローです。始末書を書いて、警察には叱られた(笑)」
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Blu-ray
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
「年間2本、春休みと夏休みの撮影で、一切学校を休まないでやって」いたという薬師丸ひろ子だが、『セーラー服』から『探偵物語』(1983)までは大学進学のためのブランクがあった。
遠藤「『探偵物語』では1年半スクリーンから遠ざかってましたので、そこで野球場で “ヒロコーズ” ってチームつくって、ご本人は「8940」の背番号。そこで真田(真田広之)さん、志穂美悦子さんなどジャパンアクションクラブ(現:ジャパンアクションエンタープライズ)の人たちとチームをつくりました。大阪では吉本のチーム、名古屋ではラジオのパーソナリティのチーム、福岡では稲尾(稲尾和久)さんや東尾(東尾修)さんとのOBチームと対戦。東尾理子さんもまだちっちゃくて。7箇所でイベントやって、本人が唄って。ミニコンサートつきのイベントで彼女の元気な姿を見てもらおうと。イベントやるだけで宣伝費吹っ飛んじゃうんで、タイアップですね。
『里見八犬伝』(1983)でもイベントできないかなとお酒飲みながら考えました。競馬場でやろうということになって、最初は断られたけど、会長がお孫さんと話したら薬師丸さんは人気があるのにそれを断るなんて何やってんだと。それで、断りましたけどぜひやってくださいと。その後、阪神競馬場でもやってくれと。(メインキャストの)八剣士(のスケジュール)が合うのは1日だけで、午前中は阪神でやって、ジェット機に乗って名古屋で給油して東京へ。八剣士は衣装のままで、私は私服でした」(つづく)
【関連記事】田中陽造 トークショー レポート・『セーラー服と機関銃』(1)
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Blu-ray
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る