私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

対談 澤井信一郎 × 金子修介 “アイドル映画の撮り方”(2003)(3)

地雷映画? 監督の仕事の受け方

高原「アイドル映画というか、商業作品の発注を受けるときはどういう基準で受けるんですか?」

金子「映画の話貰ってこれはヤバイなっていうのは確かにあるよね。まあそれを地雷映画って自分で名付けてるんだけど(笑)。地雷を踏んだらまずいなって。一瞬地雷踏みに行ったのかなって思ったんだけど。そういうヤバイなっていうのは依頼があったときにちょっとありますよね」

澤井「僕は一切やらない」

金子「やらないんですか? イヤな予感があったりとか?」

澤井「脚本を作るところから始めるじゃない? 意見が違ったりね」

金子「あの発注っていう意味でいうと、なんかその発注する側も今この監督が旬だなとか、この女優が旬だからこの監督でとか、あまり監督の個性とか考えずに発注するっていうのはあると思うんですよ」

澤井「いや、僕なんかもさ、デビューした後はやたら来たよ。5年なのか10年なのかはともかくとしてある一時期いろんな仕事がきてさ、まあ大概断るわけだけど。できないっていうのは内容的にもスケジュール的にも。でも、そうやって世間が旬扱いする時期ってあるわけ」

金子「年に1本とか2本とかさらに毎年撮ってると、ジャーナリズムの人たちが「何でそんなに順調なんですか」って聞くんですよ。それがよく解らない。こっちは別に大して順調だと思ってないし、来た仕事もやりつつ自分の仕事もやりつつ、そういった揺れ動いた気持ちの中でやってたりするじゃないですか。大森一樹さんなんか皮肉で言われて「お前はもう終わったんや」「もう話来ないよ」とか言われたりしてて(笑)。確かに去年『恋に唄えば』を受けてからばったり話しが来なくなってですね」

高原「『恋に唄えば』ってどうだったんですか。地雷映画?(笑)」

金子「こけたからさ(笑)。味方もいないし」

高原「おもしろかったですけど」

金子「そうやって、公開1年くらい経つとそういう風に言ってくる人がいる。そのときは言わないで。あれおもしろかったですねとか、言ってくるのはだいぶ経ってから。そのときに言えよっていう(笑)」

澤井「まあ確かに金子くんの映画にしては評判は芳しくなかったよな」

金子「よくなかったですね。あの、例えば2本立ての1本ならおもしろかったっていう風になるだろうけど、それが1本だったから、待ち構えていたかのようにやられたっていう感じがあって」

澤井「役者が果たして何もできない女の子でどうだったりするのかなっていうのが、俺の感想ではあったりするけどね、君の出来がいいとか悪いっていう以上にあの企画をやりましょうって受け入れたことが失敗なんじゃないのかな」

金子「そこは言われる通りかもしれませんが、奢りがあったのかなっていう、自分がやればこの俳優もよくなるだろう、とか、そういうちょっと奢りが」

澤井「奢るもんなんだよ。うん。そういうの早く気付かないとね」

金子「(笑)」

澤井「僕なんか早くから気付いてるからさ。思った時期があったかどうかは解らないけども。あの、1本か2本ね、評判がよかったり、客が入ったりすると大概奢るよね」

金子「それはしょうがないですよね?」

澤井「そこは耐えるか耐えないかだな」

金子「いつの間にか自分が奢っているっていうのは後にならないとわからないという(笑)。滝田洋二郎さんともね、意見が合ったのはお笑い映画でこけるとやばいっていう、コメディ映画でこけるとやばいんじゃないかって。アクションとか文芸作品でこけてもそれほど傷つかないけど、ギャグコメディでこけた場合結構打撃が残って、滝田さんも『熱帯楽園倶楽部』で3年撮れなかったって言ってたんですよ(スピルバーグも『1941』の後ヤバかったし、ルーカスも『ハワード・ザ・ダック』の後......)」

澤井「こけるって言うのは、観客が入らなかったっていうことと作品がおもしろくなかったっていうのとダブルでくると痛いよね」

金子「そうですね。味方がいないと(笑)」

澤井「どんなにつまんなくてもさ、興行収入が100億とかくるとさ、そんなおもしろいとかつまらないとかっていう風な話じゃないんだけどね」

金子「与えられた条件の中で全力を尽くして、何か悪いことしたのかなっていう(笑)」

澤井「悪いことはしてないんだけど、その与えられた条件を断らなかったっていうことだね」

金子「そうか(笑)」

澤井「そこは奢らないで、人がつけた付加価値を充実した作品を作る為に利用するのか、「あー俺がやる。何でもできる」って行っちゃうかで人生分かれるんじゃないかなあ」

アイドル映画の定義

金子「アイドルに対しての、恋愛とまではいかない、そういう感情っていうのはどうですかね? 僕は自分でいうとアイドルに対して、触れたいけど触れないようにするっていうか、でも心がときめいてるっていうときにいい結果になる気が経験からするんですけど」

澤井「仕事でこっちも信頼してね、この子いいなと、まあ期間限定で惚れ込んだりするじゃない? それは向こうもこちらに、恋とまではいわなくても、まあ、信頼ってことなのかなあ。それは伝わるよね」

高原「澤井さんは自分の演出の姿勢できちんとやるっていう感じがして、金子さんはどっかでちゃんとアイドルを好きでいられたらいいなって感じがするんですよね(笑)」

澤井「アイドル演出で僕が心にとめているのは、とにかくスタイルにはめるってことでさ。アイドル映画といわれても、自分にとっては映画は映画でしかないんだよ」

金子「アイドル映画はかわいく撮ろうと、みんながかわいいと思うようにって、やっぱり本気でかわいいと思わないとかわいく撮れないなっていう感じがしてますけどね(笑)」

 以上、日本映画監督協会のサイトより引用。