私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

滝田洋二郎 × 竹村祐佳 × 螢雪次朗 × 池島ゆたか トークショー レポート・『痴漢電車 ちんちん発車』

 故郷のしきたりのために結婚しなければならない主人公(竹村祐佳)は電車の中で出会った男(久保新二)に偽装結婚を依頼した。主人公のために雪の舞う新宿にマタギの許嫁(池島ゆたか)がトラクターで現れる。主人公の上司である探偵事務所の所長(螢雪次朗)は遺産相続をめぐる調査に没頭していたが、やがて殺人事件に巻き込まれる。

 滝田洋二郎監督(高木功脚本)『痴漢電車 ちんちん発車』(1984)はロス疑惑をねたにしたミステリータッチのピンク映画。時事ねたもふんだんに盛り込まれて笑わせる快作である。2022年12月に阿佐ヶ谷にてリバイバル上映が行われて滝田監督と出演の竹村祐佳、螢雪次朗、池島ゆたかの各氏のトークが行われた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 上映終了後すぐに竹村氏が「所長!所長!」と劇中の台詞そのままで登場し、こちらはびっくりした。

竹村「ファンの方にこんなこと(舞台挨拶)はもう一生に一回だよということで肩を叩いていただきました。老けちゃってごめんなさい(笑)」

ピカソに青の時代があったように螢にピンクの時代がございました(一同笑)」

滝田「この映画は38年前に撮ったんですけども。新宿も電車も自分の庭みたいなもので、いろんなことをやりました。フィルムってすごいなと思ったのは、綺麗なプリントで全然色あせてない。綺麗なおしりも…(笑)。38年経ってもみなでここに立てたというのは嬉しいですよね。若いころにバカなことをやった人は長生きするかもしれないってことで、みなさんもバカなことをやってください。クランク・インしたら酒やめようとか思いましたね」

竹村「え、飲んでたんじゃないですか(笑)」

滝田「おれはいいよ。螢さん池島さんあっての、そして女優さんあってのピンクだし。生かすも殺すも男優さん次第で、男優さんが下手だと女優さんは自分だけかぶりつく。そういう意味で池島さんたちは上手な方々ですから」

竹村「私いまはおばさんですけど、2冊ほど写真集を出させていただいて、その中で監督と座談会をしたんですね。監督がおっしゃっていたのは、助監督のときは遅刻の滝田と呼ばれていたけど自分の監督作では遅刻しないと」

滝田「監督だからね(笑)」

「きょう久しぶりに見て、シリーズの最後に相応しいようなホンを高木が書いて。ラブシーンは毎回あったけど、今回でやっと真の愛が芽生える。ぼくは、2~3シーンは毎回ラブシーンがあったのに、今回はない。高木と監督がとっておきのラストというふうにつくってくれたんだろうなと。最後のシーンはどこで撮ったんでしょう。新宿ですか」

滝田「新宿ですね、全部。自分で出てて覚えてないの?」

竹村「センチュリーハイアットの吹き抜けのところで。明け方ですね。ほんとに撮影のラストで寝てなくて機嫌も悪いし(笑)」

「徹夜だからね(笑)。明け方だと人もいないし。街の中はずっと無許可で撮ってんですね。シナリオを見せても許可がとれない」

竹村「とれるわけないですよね(笑)」

「思い出した。祐佳が毛皮着てたカット」

竹村「寒くて雪が降ってるんで、テストの間は毛皮を羽織ってやらせていただいたたんですよ。ワンカット、毛皮を着たまま撮っちゃった」

「池ちゃんが登場したトラックのシーン、迎えるカットで祐佳が毛皮を羽織ってるんですよ。そのワンカットだけ(笑)。誰も現場で気づかなかった」

滝田「本人も気がつかなかった(一同笑)。スティーブ・マックイーンの『ブリット』もそういうのがあるね。よく見てる人は判ると思う」

池島「私は滝田組のデビュー作でございまして」

「きょうは珍しく大人しいですね」

池島「午後4時から飲んでて酔っぱらっちゃって、大人しくしてます(笑)」

滝田「この人アフレコ下手なんですよ。だから電話かけるシーンも、全然口と合ってないでしょ。もうやり直したいよ。きみのせいでこんな映画になったんだよ!(一同笑)」

池島「このころ舞台をよくやってまして、台詞を言いながら花道を歩いてたんですね。そしたら滝田監督がそのへんにすわってて、ぼくが歩いてきたら「池やん、舞台でも口が合ってねえぞ」って(一同笑)。

 この映画はピンクに出て4年目ですよ。やっと使っていただきまして。デビューするとき、滝田監督のいた事務所の獅子プロにあいさつに行ったんですね。そのころ監督に助監督に15~16人ぐらいいて。みなさん忙しいときに行っちゃって、滝田監督が面接官だったんですね。脇の小部屋につれて行ってもらって「履歴書出して。忙しいんだ、早く早く」とか言われて。ふっと見て「池島くんね。舞台をやってたんだね。じゃあいいんじゃない? 頑張って」って2~3分。いちばん偉い人かと思ったら、そのときまだ助監督だったんだね。それでこの作品がきっかけになって、もうね、この年から34年つづけて年間50本出ました。快挙ですね、みなさん。いまはピンク映画って年間12本ぐらいしか新作ないですけど、そのころは年間270~280本はピンク映画があって、その中の50本に毎年出るってね。おかげさまで、滝田監督ありがとうございました(一同笑)」

竹村「なんか厭味っぽいですけど」

滝田「映画関係者の方いらっしゃいましたら、マタギの役で使ってやってください(一同笑)」

「新宿のあの場所にトラクターで登場するって素晴らしいですね。ピンク映画であんなシーンをよくぞつくったよね」

池島「鉄砲かついでね」

滝田「30年ぶりに見ていてただただはずかしい(笑)。また一生懸命、映画をつくります」

竹村「ぼけている者もおりますが、こうしてみなさまの前に立てることを光栄に思います」