私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

長谷川和彦 × 水谷豊 トークショー レポート・『青春の殺人者』(3)

【撮影現場の想い出 (2)】

 『青春の殺人者』(1976)のスナックの場面には暴走族もいて、後半にアクションも撮ったらしい。

 

長谷川「暴走族と戦うシーンは映画では使わなかったんだ。暴走族役の出来が悪くてな(一同笑)」

 

 撮影助手の栗田豊通はその後はロバートアルトマン監督の『クッキー・フォーチュン』(1999)などの撮影を担当。

 

水谷「栗ちゃんはハリウッド行って、カメラマンになって。ハリウッドでばったり会ったんですよ。もう…30年前」

長谷川「そんな昔かよ。当時セカンドだったかな」

 

 劇中に主人公が高校時代に撮ったという設定の映像が流れる。桃井かおりは高校の友人役。

 

長谷川「高校時代のお前が撮った8ミリの映像をつくったんだけど、プロのカメラマンだと上手すぎるから助監督が」

水谷「それで相米相米慎二)ちゃんが(笑)」

長谷川「かおりも映ってるな。栗ちゃんにもやらせたかな。苦労したよ。8ミリでも演出は一応おれがしたんだよな。相米は軟体動物みたいで「お前、助監督はもっとしゃきっとしろ!」(一同笑)」

水谷相米さんはあまり仕事してた印象ないですね(一同笑)。髪の毛がある」

長谷川相米は8ミリ兄ちゃんだったよ。助監督:相米というタイトルはないんだよ。学生運動の仲間が見て日和ったとか言うだろうから厭だってことで源氏名をつくっちゃって。見る度に腹立つ(一同笑)」

 

 海辺の幻想的なシーンでは脚本家・映画監督の中島丈博が陣中見舞いに来たという。

 

長谷川「丈博さんは立派なシナリオライターで、この映画には噛んでないんだが差し入れに来てくれたんだな。パキ(藤田敏八)さんの映画で仕事をしたことはあったんだ。浜辺のシーンだけど、浜辺だけ千葉じゃないんだな。伊豆だよ。何でここへ行ったか覚えてるか」

水谷「車で?」

長谷川「違う(一同笑)。HowじゃなくてWhyだよ。キャメラ鈴木達夫の実家のそばなんだよ。実家に飲み食いの世話になって。海も伊豆で千葉とは違うんだよな。

 イチジクのシーン、何であんなに小さいかというとあれはNG。撮影に使えるようなイチジクの木がなかったんだよ。明らかに刈り取ってきたイチジクの枝を植えてるだけで、突然シュールレアリズムだよな(一同笑)。まあ観客はシュールをやってると思うだろうと」

水谷「(笑)」

長谷川「やけだよ。お前、何笑ってんだ。お前はそこで芝居してるんだぞ(一同笑)」

水谷「全然おかしいと思ってなかったです。そういうものかと」

長谷川「きのう見直してて、よくこんなものOK出したなと(一同笑)。イチジクの木はもうちょっと大きいし、しかもあのシーンで話題の中心なんだから。イチジクの木は達ちゃんのうちの近所になかったんだな。実のなってる枝を適当に切って撮ったんだな。妥協してやらないと」

水谷「心ある人はあえてそうしてるんだろうと」

長谷川「やけでシュールに行こうと」

水谷「それが功を奏した」

長谷川「何言ってんだお前(一同笑)」

 

 主人公は少年時代の自分を幻視する。水谷氏の幼いころを演じたのは…。

 

水谷「有名な人?」

長谷川「おれの息子なんだよ(一同笑)。子役雇ってどうこうも面倒だし息子にやらせたら、こいつが能力なくてな(一同笑)。かたぐるまされて喜ぶシーンだけど喜ばないんだよ。レフ当てるだろ。反射がまぶしくて。最後に奇跡的にやっと芝居できたんだよ。それまではおれも豊の気持ちというか親殺しの側でやってたんだよ。子どもを使うと、殺される側の気分もちょっと判ったんだよ。そうか、こいつに殺されるのかおれは。こいつがおれ自身だとはさすがに思えないからな。作家的にも苦悩する気分になったんだよ。こいつももちろんノーギャラだぞ(一同笑)。いまいくつになった? 52か。まだ殺されてないもんな」

 

 息子さんはミュージシャンで、場内に来られていた。

【『太陽を盗んだ男』】

長谷川「『殺人者』と『タクシードライバー』(1976)は同じ年のベストワンで、その縁でベストワンの監督同士でってことでマーティン・スコセッシと会ったんだ。「プレイボーイ」だったかの企画でアメリカ行ってスコセッシに会うかって。会ったら脚本家のレナード・シュレイダーもいて、半年後にこいつが『太陽を盗んだ男』(1979)のアイディア持って来たんだよ」

 

 この次の『太陽を盗んだ男』も名作で、水谷氏は警官役でわずかに登場。

 

長谷川「『太陽』にお前が特別出演で、ギャラ払ったよな」

水谷「少しもらった気がする(一同笑)。『青春の殺人者』が終わったときに、監督が豊のためならテレビでも撮るぞって言ってくれたんですよ。ぼくも監督の次の作品にはワンシーンでも出ますよって言ったら、ほんとにワンシーンだけ(一同笑)」

長谷川「おれの映画に2本とも出てるのはお前だけだよ。お前3本も監督したらしいな(一同笑)」(つづく

 

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