彼女(原田美枝子)との交際を両親(内田良平、市原悦子)に反対された青年(水谷豊)は、ふたりを殺してしまう。死体を遺棄して、主人公は彷徨をつづけるのだった。
長谷川和彦の監督デビュー作『青春の殺人者』(1976)は実際の事件に取材した伝説的な傑作。7月に渋谷にて長谷川作品の特集上映 “長谷川和彦 革命的映画術” が行われ、長谷川監督と水谷豊のトークもあった。水谷氏主演『相棒』(2002〜)の新シリーズでは初代相棒・寺脇康文が復帰するので話題になっている。聞き手は映画評論家・イラストレーターの三留まゆみ氏が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
長谷川「豊とは何年ぶりだ?」
水谷「さっき考えてたんですけどね。最後は何でした?」
長谷川「『相棒』(2002〜)が始まるときに、どうせこんなもの半年か1年で終わりって言ってたんだ(一同笑)。こいつとテニスやったんだ。やったこともないのに」
水谷「ひどいもんですよ。ぼくはやったこともないのに、監督の知り合いの方とチーム戦なんですよ。みんな上手いんですよ。それなのにやらされた」
長谷川「きょうはテニスの話じゃないんだ。半年で終わるって言った番組が何で20年もつづくんだ?」
水谷「そんなこと言いましたか」
長谷川「半年か1年で終わりますからまたテニス教えてくださいって言ってたんだ(一同笑)」
水谷「あれからテニスはやってない(笑)」
長谷川「ゴルフはやったっけ」
水谷「監督と1回いっしょにやりましたよ。監督と永島敏行さんと3人で。千葉ですね」
長谷川「そうだったか。ゴルフはテニスより上手いのか」
水谷「上手いですね」
長谷川「おれは90切れれば嬉しいほうだったよ」
水谷「同じ感じですね」
長谷川「15年やってねえな」
水谷「このままゴルフの話しますか(一同笑)」
長谷川「20年ぶりだからな。さっきハグしたんですよ。思わずやっちゃうもんだな(一同笑)。おれが30で、豊が24だったから。いまこいつが70」
水谷「きのう(誕生日)です」
長谷川「計算は合ってるけど気持ちが合わねえ。しみじみしてごめんね(一同笑)」
【ふたりの初顔合わせ】
長谷川氏は監督デビュー前に萩原健一や桃井かおりの出演する『青春の蹉跌』(1974)や沢田研二主演のテレビ『悪魔のようなあいつ』(1976)などの脚本を手がけていた。
水谷「仕事する前から監督は有名だったんですよ。「ユッタッカはさあ」。桃井かおりさん(ものまね)ね(一同笑)。「ゴジと仕事したことある?」「すっごい奴がいるのよ。ゴジ、すっごいの」。そうやって若い俳優の間では当時やたら噂になってたの。ゴジはとにかくすごいんだよって。どうすごいかは会えば判るかなと思ったら、すごい人でしたよ」
長谷川「そうそう、どうやって口説いたか覚えてるか」
水谷「覚えてます。「日本のジェームズ・ディーンやるか」」
長谷川「簡単に落ちました(一同笑)」
水谷「内容を何にも聞いてないのに」
長谷川「それまで会ったことなかったんだよな」
水谷「当時、NHKの『男たちの旅路』(1976)という鶴田浩二さんのドラマで桃井かおりちゃんも出てて。そのチーフディレクターが東大で長谷川監督の同級生だったんです。中村克史さん」
長谷川「東大出のNHK局員だよな」
水谷「同級生だってことで監督が訪ねてきたんです。ぼくは長谷川監督も東大だって聞いて「ほんとですか」(一同笑)。でも話をやたら聞いていたから初めて会った気がしなかった。かおりちゃんもショーケンさんも」
長谷川「かおりとは同い年?」
水谷「かおりちゃんは早生まれで1学年上ですね。『青春の蹉跌』も見てましたね」
長谷川「ショーケンとは『傷だらけの天使』(1975)をやってたもんな。言ったのは「『傷だらけの天使』はなかなかよかったが、この映画で「兄貴」だけはやめろ」と(一同笑)。ふた言目には「兄貴」って言いそうな雰囲気なんだよな。それが最初の演出だな。むっとしただろう」
水谷「むっとしてないですよ。もう逆らわないほうがいいと(一同笑)」
長谷川「豊とおれは完全にギャラがゼロ」
水谷「そう、監督とぼくはね」
長谷川「準備の半年以上、ずっとノーギャラ。豊の出演料をまともに払ったら、とてもこの映画はできない。総予算が1000万とちょっとしかない。とったらいちばんとれる主役と監督をゼロにすればみんな我慢するだろうということで」
長谷川「「蛇淫」、おれきのう読み直そうと思ったら見つからなかったよ(一同笑)。デジタルで読めるかと思ったらないんだよな。「蛇淫」をおれに教えてくれたのが田村孟さんなんだ。アイディアの相談をいろいろしてたから。電話くれて「きみ、今月の「文学界」に載ってる中上健次の「蛇淫」を読みたまえ」とか言われて。短いし、すぐ読んで」(つづく)
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