ピンク映画のカメラマン(西田敏行)の妻の主演女優(大楠道代)が自殺未遂。撮影は中断したが、たまたま出会った連れ込み宿の女中(美保純)を代役にすることに。しかし今度は監督(加藤武)が倒れ、主人公が現場を仕切る羽目になった。女中の秘められた過去が明らかになるにつれ、ピンク映画は心中物に変わっていく。
森崎東監督『ロケーション』(1984)はコメディタッチのバックステージドラマとして始まるが、やがてサスペンスやホラー調?にねじれていく異色作。
今年7月に亡くなった森崎監督の特集が渋谷で行われており、『ロケーション』のリバイバル上映と柄本明・山根貞男両氏のトークショーがあった(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
【『ロケーション』について(1)】
山根「柄本さんとはときどき会いますね。この2階かなんかで、森崎さんの特集があったときに、見て出てきたら柄本さんがいらっしゃいましたね。その後も何度か会ってます。
ぼくは柄本さんの森崎演出の最初はテレビドラマかなと思っていたら、違うんですね」
柄本「『ロケーション』が最初ですね。映画は見てましたけど、会ったら素敵な監督でね。人間力というか、頑固さがあって。好きな言葉じゃないですけどインテリでいらっしゃるし。スタッフもキャストも、森崎さんが好きになっちゃう。いい意味で、現場が壊れていきますね(笑)」
山根「現場には何度も行ってるけど、スタッフも俳優さんも尊敬ではなく好きというか」
柄本「尊敬ではないですね。今村昌平監督なんか現場で怖い感じがしましたけど、森崎さんも“用意、スタート”かけた後は見られてるという怖さがありましたね。いろんな怖さがありますけど。“用意、スタート”の後は見られてる、これが監督ですよ」
『ロケーション』での柄本氏は脚本家役。
山根「この作品は、題名通りピンク映画のロケーション隊がうろうろする」
柄本「内幕物ですね。(自分の役の)モデルは近藤(脚本の近藤昭二)さんじゃないですか」
山根「『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(1985)の次に撮られたんですね。封切は逆になってます。『党宣言』で近藤昭二さんという脚本家と組んで、そのつづきで『ロケーション』も。近藤昭二さんを監督も近ちゃんと言ってて、ぼくも会うと近ちゃんと呼んでしまうんですが。柄本さんの役も(劇中で)こんちゃんと」
柄本「モデルなのは何となく判ってた気がしますね。近藤さんに会ったとき、少しは気にしたりしましたかね。
柄本「映画を撮っていて、撮られてるほうも(劇中で)映画を撮ってるわけです。どっちのロケ隊なのか、混在してくるんですよ。話もシナリオから変わってきちゃったりして、何がロケなのか。(スタッフ役の)出演者が本物のスタッフと代わっても違和感ないような、ごちゃごちゃで。大変な撮影でした。みんなわけわからなくなっちゃう。夜遅くまで撮影して、汚れちゃって、着替えもせずに寝て、朝起こされて。出演者なのかスタッフなのか」
山根「それを初めから仕組んでたんでしょうね」
柄本「どうなんだろう。極端な話、ご自分でも判らなくなってたような(一同笑)。ぼくは、他の森崎さんの映画を見てても壊れてく感じがしますね。大きいマグマが来て、みんなそこで困ってるみたいな」
山根「一昨日に息子さんの柄本佑さんが来て『喜劇 特出しヒモ天国』(1975)の上映の後で話をされたんですね。出ていないのに(一同笑)。三宅唱監督も来て、助監督についていたわけでもないのに。このふたりがトークをなさったんですが、ファーストカットがこうなってと掛け合いで言っていく。そのうちにだんだん判らなくなる。見たばっかりなのに、どうなってたっけ? ぼくは客席で聴いてて、森崎映画ってそうだなと」
柄本「理屈にはならない、理屈が嫌いなのか。バカなんじゃないか(一同笑)」
柄本「西田さんは映画初主演ですね」
山根「森崎さんとも初めてですね。大楠道代さんと森崎さんとはまだ2本目です。中心になってる3人は、いつもの森崎映画でない新鮮な感じがあります」
柄本「ちょっと年代が若返ってますね」
山根「竹中直人さんも初めてです。森崎映画の流れが、ここでちょっと切れてる。
柄本さんと西田さん、大楠さんは学生時代から親しい。冒頭で三角関係が始まるけど、回想シーンで3人とも学生服(笑)」
柄本「あれ、はずかしいですね(笑)」
山根「別の人でやってもかまわないのに。新宿騒乱かなんかのぶつかり合いのシーンといっしょに出てきます」
柄本「団塊の世代ですね」
山根「共演者はどういう感じなんですか」
柄本「覚えてないですけど、別に何の感じも。普通です(笑)」(つづく)