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寺田農 トークショー レポート・『ラブホテル』(1)

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 にっかつロマンポルノ後期の傑作として知られる、相米慎二監督『ラブホテル』(1985)。

 主人公の男女(速水典子、寺田農)の出会いと再会を独特の長回しで描いた作品で、ファンも多い。2月に川崎市にて、リバイバル上映と寺田農トークショーが行われた。寺田氏は、相米作品13本のうち11本に関わっている常連俳優(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。 

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【『ラブホテル』の想い出 (1)】

 最後の『風花』(2001)まで、何らかの形では関わってます。日数は『ラブホテル』が多い。セーラー服も結構あったかな。

 健(高倉健)さんの『夜叉』(1985)をやってるときに(チーフ助監督の)榎戸(榎戸耕史)が来て、撮影所の食堂で飯食いながら“おれがこの村木やる”。次の日に相米から電話来て“いいんじゃない、やれよ”。そのときはNHKの朝ドラをやってて、沢口靖子の『澪つくし』(1985)。沢口靖子の母親が加賀まりこで、おれはそのお兄さんで沢口靖子の叔父さん。NHKはスケジュールが早くて、2月だったか3月だったかが空いてる。そこでちょうど『ラブホテル』を。

 『ラブホテル』は予算的なこともあって、大変な撮影になることはわかってた。12日間だけど、毎日おはようございます、お疲れさまっていうんじゃないんだね。始まったら12日間ずーっとつづいた(一同笑)。ロマンポルノだし、時間はないしね。相米に限らず、映画って現場以外でリハーサルはあんまりしない。でもこれに関しては撮影の時間がないから(事前に)リハーサルをしようと。にっかつ芸能学院っていうのがまだあって、13時開始で1週間ぐらいリハーサル。(登場人物の)履歴書をつくるということで、村木の経歴をおれも喋って、速水さんもつくる。あの(妻役の)志水季里子と何で結婚したのかとか。そういうのがリハーサルなんだけど、ただ結局そういうのは意味がない(一同笑)。助監督に酒買ってこいということになって、いま考えると冨樫森だね。芸能学院の教室で酒盛りになって、夕方になると新宿に飲みに行って、それで1週間。速水はものすごく酒が強いんだ。最後の日に相米に“お前なんか判ったことあんのか? こんなに毎日酒ばかり飲んで”って言ったら、判ったことがひとつあると。“名美は大股で歩く!”と。それだけかと思ったけど(一同笑)ばかばかしいけどこれが真髄だね。途中にたったったと歩くシーンも綺麗だったし、それが判っただけでも。

 すべてのことが自由で、芝居はこうやらなきゃいけないことなんかない。撮影も自由で、各パートが愉しんで新しいことをやりたがる。おれに言わせれば変態映画(笑)。

 夜の埠頭の(出会いの)シーンもワンカットでやる。1000フィートで13分くらいかな。5回NG出すと5000フィート使っちゃうから、現場で助手が生フィルムを切っていくんだけど、大変な思いをした。その時代の現場は、もう意地でもワンカットみたいになっていって。おれが運転して速水を乗っけて、横にカメラの篠田(篠田昇)がいる。車を止めたら助監督がドアを外して、篠田は出て、横移動で速水を映してクレーンに乗ったりして。それで助監督はドア持って乗り込んで、おれは車出すけど、速水が飛び込むんじゃないかとまた来る。これは大変よ。昼過ぎからリハーサルだね。相米は見ながら固めていく。事前に決まってることはあんまりなかったね。

 走行中の外から撮るから、トラックの上にタクシーを載せて、クレーン車も載せて撮る。撮影許可は出ないからゲリラでね。よく見ると、トラックの上に載せてるから対向車と高さが違うんだけど、高低差はあんまり気にならない。

 シーン数は52くらいだけど、カット数は48しかない(一同笑)。ワンカットで、ものすごく時間かかる。割れば割るほど、時間が短く済む。ワンカットならライティングも大変だし、動きもね。のちには『夏の庭』(1994)とか『あ、春』(1998)とかになると切り返しのカットバックも撮るようになるけども。

 相米作品はほとんどカメラマンが違うわけね。長沼(長沼六男)さん、篠田、仙元(仙元誠三)さんとかいろんな方がいたんだけど、照明はいつも熊谷(熊谷秀夫)さん。熊谷さんは相米にとっての師匠だね。ロケハンでも現場でも、熊谷さんがいろいろ決めてたね。いかに熊谷さんの力が大きかったか。ゴジ(長谷川和彦)の『太陽が盗んだ男』(1979)とかも熊谷さんだよね。カメラは作品に合ったカメラマンだね。篠田は『ラブホテル』がデビューなんだけど、何で篠田かというと“あいつすけべだから”(一同笑)。

 季里子がやられておれが死んじゃおうかみたいなところで、蚊に気をとられるところとかはホンにない。おれがやりたいって言ったところで、人間って切羽つまってても、蚊だとかつまんないことで人生変わっちゃう。自分のやりたかったことで相米も乗って。あそこのシーンもロケで、あのビルもまだあるよ。甲州街道のところで、南口の新宿バスタの反対側で、大塚家具のちょっと手前のごみごみしたところの小さいビル。速水が長い電話をするマンションもまだある。これも甲州街道沿いだね。(つづく  

 

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