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実相寺昭雄 トークショーのおもひで・『D坂の殺人事件』『ウルトラマン』

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 テレビ『ウルトラマン』(1966)や映画『無常』(1970)、『哥』(1972)の故・実相寺昭雄監督のトークを2回、生で聴いたことがある。当時はブログもやっておらずメモすらとっていなかったので記憶が曖昧だが、覚えている範囲で書き留めておきたい。

 1回目は1998年5月、江戸川乱歩原作の映画『D坂の殺人事件』の公開時で、新宿での上映後に実相寺監督が登壇。聞き手は金澤誠氏だった。

 『D坂』の脚本は『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズも手がけた薩川昭夫で、まだ『エヴァ』のヒットが記憶に新しい時期である。実相寺監督は『D坂』のエロティックなシーンに関して「脚本の薩川昭夫くんもすけべな男なんで」と口にしていた。

 当時の取材記事で実相寺監督は『屋根裏の散歩者』(1992)と『D坂』に加えてもう1本撮って乱歩3部作にしたいということだったけれども(「キネマ旬報」1998年6月上旬号)その日は「4部作でも5部作でも撮りたい」と言われる。一方で「素人じゃないんで、具体的なこと(企画)がないと考えられないですね」。

 トークの翌週に氏が演出した『ウルトラマンダイナ』(1998)の第38話「怪獣戯曲」が放送予定で「あれはちょっと」と何故か厭な表情。

 最後には「この後どこでお酒飲もうかと考えてる」「もう終わりですか。(ちっとも残念そうな顔でなく)残念ですね」と笑わせていた。

 5年後の2003年8月、テレビ『ウルトラマン』を再編集した映画『ウルトラマン』(1979)などがDVDボックスになった記念に、渋谷のHMVで主演の黒部進桜井浩子両氏と登場。実相寺監督は電車のシャツを着ていた。

 男性ファンで埋まった客席に女性客がひとりいて、黒部氏は「本当? おばちゃん」といきなり冒頭からいじっていた(女性は関係者だったのではないかと思う)。

 ウルトラマンに詳しくない若い女性のMCが、最初の『ウルトラマン』でいちばん気に入っている作品は?と問うと実相寺監督は「『ウルトラマンティガ』(1996)だね」とやる気のない対応。MCは呆気にとられ、桜井氏は「(『ティガ』では)あなた、あんな暗いの撮って」と取り繕っていた。

 どういう文脈だったか忘れたが黒部氏は「マサミってのとつき合ってて」と言い出し、すかさず実相寺監督は「堀内正美?」と突っ込んでいた。黒部氏は「ぼくは実相寺映像のファンで」と水を向けるも、実相寺監督は黒部氏らレギュラー陣について「特にないね」とつめたく放言。悪乗り気味の男性ふたりに困惑したMCは、最後のまとめも桜井氏に頼んでいた。

 3年後の2006年に実相寺監督は逝去。歳月は流れた…。

 

【関連記事】実相寺昭雄の晩年をめぐる証言 2004 − 2006(1)