【ウルトラシリーズの想い出 (2)】
小中「ぼくがやらせていただいた平成ウルトラも同じでしたよ。演出部(助監督)の人が「バリバリッ」と」
桜井「監督が言うときもあるのよ。満田(満田かずほ)さんとか自分で言っちゃう」
小中「激しさを表現するために必要以上に大きな声で」
桜井「驚いちゃうのよ」
小中「それを狙ってるんですよね」
桜井「大きなお世話だよね、こっちは芝居できるのに(笑)」
小中「演出する側はでかい声が演技の助けになると思うわけですが」
桜井「(『ウルトラQ』〈1966〉では)満田さんの声にみんな驚いちゃって、佐原(佐原健二)さんは「失礼だなあ。おれたち芝居できるのに」。だけど満田さんは多分、私に向かってやったんだと思うんだよね。佐原さんと西條(西條康彦)さんはちゃんとできる人だから、私が足りなかったんじゃないかな(笑)」
小中「昔のお話を聞いたときに、16ミリの特撮のラッシュを見ていてサイレントで音がないと。ビルが壊れるとか爆発とか音がないから、特撮の助監督たちは「ババーン」とか口で言ってたと」
桜井「やってましたよ」
小中「無音だと迫力がない」
桜井「迫力よりも気が乗らないんじゃないかな。巨大フジのとき(『ウルトラマン』〈1966〉の第33話「禁じられた言葉」)は佐川和夫さんが声出してましたね。アフレコだから(撮影中に)「ここでガーッと行くんだよ」「そこ右、ガーンと来るぞ。壊して壊して」。本編でも「ここで水バシャーン」とかね。おかしくて」
小中「普通のドラマではまずないきっかけ出しですね」
桜井「助監督は東條(東條昭平)さんで、東條さんの「バリバリッ」って声がいちばん響いたね」
小中「その声でみんなを乗せようと」
桜井「東條さんはそういうのないと思うよ。ただ「バリバリッ」って言っただけ(笑)
「1/8計画」(『ウルトラQ』第17話)では「さようなら」って由利子が書いて、台本ではそこで終わりなのに(円谷一)監督が「もっと書け」って。何書いていいの? 監督は何でもいいって言うから、その後で由利子って名前を書いた」
小中「平成ウルトラをやるようになったときに、これ8ミリでやってたことと同じだなみたいなことは多かったし」
桜井「あのころはね。いまはまた違うみたいだけど」
小中「平成ウルトラはまだフィルムで撮ってた時代でしたね。もう同録でしたけど」
桜井「私たちのころはオールアフレコだったからね。だから撮影中もきっかけ出しの声がよくあって、人間って声のほうを見ちゃうじゃない? 監督のほうを見ちゃったりするけど、でもそっちを見ちゃいけない。特撮って養成所のお芝居は何にも通用しないわけよ。だから逆に面白かったね。
それで次の『ウルトラマン』にも出ちゃったけど、そっちはまだやりやすかったかな。『ウルトラQ』は手さぐりでいろいろすごかったけど、『ウルトラマン』はスタッフも私も慣れてきてスムーズに行った。『ウルトラQ』は全部驚きでよく覚えてるんですよ。スムーズなことは覚えてない」
桜井「『ウルトラマン』は蝮(毒蝮三太夫)さんとかいてにぎやかで愉しかったからあんまり覚えてない(笑)。ただ時間はなくて数えるくらいしか飲みには行かなかった。カラオケも行ってないし、特に終わりは差し迫ってきちゃって。『ウルトラセブン』(1967)の人たちは結構飲みに行ったらしいけど。特撮のほうが追われてたんじゃないかな。
「さらばウルトラマン」(最終話)ってホンが来て。キャップ(小林昭二)が飛んで来て「お前知ってるか?」「何をですか?」「さらばって書いてあるぞ」。キャップが知らなければ、私なんか知ってる由もない。え、さらばって終わるの?」
桜井「後で満田さんに訊くと、特撮がもう間に合わないからって言ったらしい。でも特撮だけじゃなくて、後半は私たちのほうもうちに帰って寝てすぐ出てくるみたいな生活だったから。青春時代どころじゃない。『Single 8』(2023)みたいじゃないですよ(一同笑)。あちらはすごくいい感じじゃない?」
小中「授業中に寝てますからね(笑)」
小中「飯島(飯島敏宏)監督と怪獣映画のワークショップをやらせてもらって、子どもたちが映画をつくるんですが、飯島監督は講義していてこの話で何を言いたかったのかと。人類、文明とかテーマを語る。そうやってテーマを決めて××怪獣という話をつくる。何をやるべきか」
桜井「でも円谷英二監督もドラマがあって特撮がある、という考え方。「ドンパチやるな!」「特撮ばっかり撮るな」って川上景司さんに怒ってた。ドラマが主体で、そこから流れて特撮があるんだから「お前たち特撮ばかり前に出すな」って。円谷一さんもそうですしね。実相寺(実相寺昭雄)さんは部外者で破壊者だからね(笑)」
小中「実相寺さんは特撮に期待したけど思った通りでなくて、その後で特撮がない方向に」
桜井「実相寺さんはみんなに敵わないと思ったんじゃないかな。一さんも飯島さんも、東宝の梶田(梶田興治)さんや野長瀬(野長瀬三摩地)さんもきちっと撮るじゃないですか。中川(中川晴之助)さんだけ自分のファンタジーに走って。実相寺さんはどの路線に行こうかって考えたんじゃない? そしたらああなっちゃった。「空の贈り物」(『ウルトラマン』第34話)でも(スプーンで変身しようとするシーンで)つながってなくて、訊いたら「知らないね、おれは」って言ってた(笑)。野長瀬さんは怒って「フラッシュビームの代わりにスプーンなんか出しやがって」って。やられたと思ったのかもしれないね。野長瀬さんは東宝で黒澤組の助監督だった人なので、実相寺さんみたいな人がいるって知らなかったんじゃない? 東宝って正攻法だから。けしからんって」
小中「番組の放送中にパロディをやるのは衝撃だったでしょうね」
桜井「実相寺さんの中であれが理に叶ってるんでしょ。黒部(黒部進)さんはいまでもスプーン出してきますよ。ねたにしてる。スプーンにサインしてあげたり、あの人も意味わかんないね(笑)」