私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

古谷敏 × 桜井浩子 × 稲垣涌三 × 田中敦子 × 小中和哉 トークショー(飯島敏宏追悼上映)レポート(4)

【『ウルトラマン』の想い出 (1)】

古谷「俳優になったらやりたいポーズのひとつで、ジェームス・ディーンの『理由なき反抗』(1955)のときの構えるポーズ。東宝の俳優になっていつかはやりたいと。ウルトラマン役でできた(笑)。(飯島監督にそのことは)話してないけど、OKが出た。ジェームス・ディーンはもっと上体を起こしてたんだけど、高野さん(高野宏一)が「見切れるからもっと低くしなさい」と。もっと低くもっと低くと言われてだんだん猫背みたいに(笑)。『理由なき反抗』のロサンゼルスのロケ地には桜井さんとデートで行ったんですよ」

桜井「ふたりで行ったわけじゃないですよ(一同笑)。6年ぐらい前」

古谷「黒部(黒部進)さんと3人で行ったときに、行かせてもらいました」

理由なき反抗 (字幕版)

理由なき反抗

  • ジェームス・ディーン
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古谷「(『ウルトラマン』〈1966〉では)金城(金城哲夫)さんの脚本を読んで金城さんに訊いたけど、あの人は忙しいんですよ。プロデューサーもやって円谷全般をやってたんで。訊きに行ったら、ウルトラマンは攻撃をしちゃだめだと。攻撃されたらしょうがない、という一歩引いたウルトラマンがいいと。

 真似するものはなかったですね。中島春雄さんのゴジラを真似するわけにはいかないし、スーパーマンも。ぼくは何を真似しようか考えて、当時ブームを起こした力道山がいて。力道山の空手チョップはグーじゃない。東宝撮影所に空手の練習場があって、そこで結構やってました。その空手チョップがスペシウム光線につながりました。中野(中野稔)さんは手のどこから光線を出そうか悩んで、縦(手の縦の部分)だろうと。高野さんは「ダメだよ。敏ちゃん(見)切れちゃう、切れちゃう」って。それでかがむことになって。

 飛ぶシーンはイントレの台をさがして来て、それに載ってぼくを持ち上げるんだけど何回も落ちて。4人で四隅を持ってせーので上げるんですけど、ひとりが失敗すると落っこっちゃう。ドラマでは最先端の科学特捜隊が映ってるのに何でこんなに原始的なことやってるんだろうと(笑)」

桜井「科特隊本部もアナログでしたよ。自動ドアは(実は)手動開閉でドアの左右に助監督さんと小道具さんがいて、蝮(毒蝮三太夫)さんが「出る」って言ってもふたりの息が合わなくて外に出られなくてNG(笑)」

小中「平成のウルトラマンでは自動ドアが手動なんですけど、片方が開けばもう片方も開くっていうワイヤーの仕掛けがありました。イントレで飛び上がるのは平成ウルトラマンでもやりました。誰が考えたんだろうと」

古谷「あ、やったの。あれを考えたのは高野さんですよ。ぼく言ったんですよ。これ同じなんだから形いいのを1回撮って、あとはバンクカット(同じ映像を繰り返し使う)にすればいいじゃないですかって。そしたら「古谷ちゃん、そうじゃない。これを最後にやるからいい作品になるんだ。チームワークもできるんだし、必要なんだ」と。ぼくは何回もやらなきゃいけないんだけど。落っこったら痛いんだけど毎回やりましたよ。でも同じだよね(一同笑)」

稲垣「特撮にずっとつき合う監督は唯一、飯島監督ですね。実相寺(実相寺昭雄)さんは意見を随分おっしゃりましたけど、ずっとはつき合わない。現場には来ないし」

桜井「来ないでジャミラのプレートだけ持って帰った(笑)。「ぼくが持ってるよ」って。オブジェクスのときに円谷プロで出す本だからってことで、実相寺さんのところにいた勝賀瀬(勝賀瀬重憲)くんが風呂敷につつんで持ってきて、撮影が30分くらいで終わったらさささと持って帰っちゃった。「お茶飲んでかない?」って言っても実相寺さんが怒るからって」

 

 田中氏は『ウルトラQ』(1966)から参加していた。

 

田中円谷プロが立ち上がったときからですね。町場のプロダクションで、民放がどんどん番組をつくり始めるときに短い間でしたけど見習いでついて、そのときに指導してくださったのが宍倉(宍倉徳子)さん」

古谷「宍倉さんはこうちゃん(鈴木俊継監督)の元嫁さん。宍倉さんは元気?」

田中「とりあえずは元気(笑)。一本立ちして、お礼奉公みたいに育ててくれたプロダクションでちょっと仕事をして、それからフリーに。先ほどのお話にもあったけれども最初のころは特撮班と本編班とがそんなに分かれてなかったんですね。特撮にスクリプターが来たのはたまたま宍倉さんで『ウルトラQ』の「東京氷河期」から宍倉さんが。ウルトラマンが怪獣と戦うところはものすごく危険でドンパチで。制作の熊谷(熊谷健)さんに本番のときには入らないようにってスクリプターも言われて。午前中からテストはやってるけど、火がつくから1回しか撮れませんよね。しくじることができないから本当に何度もテストをやりました。本番で(カメラが)回るのが夜になってから。美センの建物はスレートでその隙間から火や煙が出て来て、そのぐらいすごくて。中で焼け死んでないかな(一同笑)」

古谷「おれらは中にいたんだよ(一同笑)。稲垣さんはペスターの回(「オイルSOS」)で二重にいて、頭が焼けてちりちりに。ドラム缶の蓋は飛ぶわ、すごい火だった。「カット」ってなったときに髪の毛がパーマになっちゃった」

稲垣「そんなことはありません(一同笑)。危険だからヘルメットとゴーグルが支給されたんですよ。つけないと保険が下りないと。でもつけた人は見たことない(一同笑)。面倒でね。それが普通でそういうもんだと思ってた」

田中「『ウルトラマン』からはオンエアが間に合わなくて本編にも特撮にもB班ができたり、スクリプターも増えたり。本編と特撮とをたらいまわしみたいになりました」(つづく)