私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

輿水泰弘 × 井土紀州 × 金子修介 トークショー レポート・『あなた買います』(3)

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【『相棒』シリーズ】

 輿水泰弘先生がメインライターを務める『相棒』シリーズは、2000年に「土曜ワイド劇場」の枠内でスタート。2002年以降は連続ドラマ化され、現代まで継続している。

 

輿水「もともとはコメディが好きで、映画だったら『ローマの休日』(1954)や『或る夜の出来事』(1934)とか。もう少し新しいのだと『恋人たちの予感』(1989)が大好きで。デビューしてからもコメディばかり書いてたんですが、たまたまそれを見た松本(松本基弘)プロデューサーがサスペンス書きませんかと。それで『相棒』を20年やってるんで、すっかり事件物の作家に」

井土「『相棒』はサザエさんレベルで日本の大衆の無意識に浸透しているでしょうけど」

輿水「つづきましたね。びっくりしています。松本さんが、さんま(明石家さんま)さん主演でやった『恋のバカンス』(1997)を見て、その会話が面白かったから、こういう人にサスペンスを書かせるとどうなるかなと声かけてきた。監督は和泉聖治さんで、怖そうなんですよ。堅気じゃないって思ったんですが(一同笑)、その和泉さんが準備稿見て“面白かったよ”って肩の荷が降りたというか。

 ただ「土曜ワイド劇場」は老舗で2時間ドラマ発祥みたいなもので、最初は男性向けだったのが、ぼくらのときは主婦向けになってました。培ったノウハウもあって、ぼくの脚本はそこから外れてると。『刑事コロンボ』(1968〜2003)が好きだったんで、犯人を先に見せて丁々発止をやりたかったんですけど、できる限り犯人を判らないようにしてくれと。でもキャスティングで判りますやん(一同笑)。誰も知らない中にひとりだけ知ってる顔が出てきたら、判っちゃうじゃないですか。ただかなりの間、倒叙は認められなかったです。犯人を隠してくれと。視聴者がザッピングしちゃうから。何十年ものノウハウがあるから、それとの対決。Season 3(2004)くらいから、犯人をいつ明かしても平気になりましたね」

井土「ぼくも子どものときにおふくろと『悪魔の手毬唄』(1977)を見に行ったんですよ。映画館で、最初のクレジットでおふくろも“あ、今回の犯人、岸恵子だ”(一同笑)。その時代から、うちのおふくろレベルでも判る」

輿水「判らなくするには同レベルを揃えないと。最近やったアガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』(2017)みたいにスターが揃ってれば誰が犯人だって思うけど、明らかにグレードの違う人がひとりいたら犯人です!(一同笑)。

 (主人公・杉下右京は)シャーロック・ホームズコロンボ。ねちねち追いつめる感じはコロンボです。コンビの形はホームズとワトソンですよ。

 男のコンビ物も首傾げられたんですよ。2時間ドラマは主婦が見る。男たちの組織とか政治とかは数字がとれないと。1作目ができて社内試写をやったら“面白いけど数字とれないよね”と、プロデューサーは捨て台詞のように言われたらしい。当時は視聴率が17を越えると続編がつくれて15を越えると要検討という不文律があった。1作目は予想に反して17越えたんですよ。

 それで2本目がつくれることになってシリアルキラーやりたいって言ったら“ちょっとそれは…”と(一同笑)。でも生瀬(生瀬勝久)さんにやってもらって、快楽犯じゃなくて動機は一応あるようにして。そのオンエアが大雪の日で、天候が味方して20越えたんですよ。「土曜ワイド」では何十年ぶりの数字だったらしいです。局にも認知されて、幸運な出発ができました。ぼくの手柄じゃなくて天候とか。その後20を越えたことも何度かあるんですが、でも『ドクターX』(2012〜)みたいにのべつ20は越えないです。最近は20を越えるのが、夢のまた夢みたいになっちゃいましたね。

 いま最初のころのを見ると、水谷豊さんが『ロボコップ』(1987)みたいですね。にこりともしないって書いてたんですよ。豊さんが演じてくれて、亀山薫寺脇康文)という偉大なる凡人がサポートする」

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井土「都市伝説で『相棒』が終わるとき退職刑事でショーケン萩原健一)が来るというのがあったんですが、いまとなっては不可能ですけど。最後の相棒はショーケンだと決まってるって(笑)」

輿水フェイクニュースですね(一同笑)。こないだの成宮(成宮寛貴)くん復帰と同じレベル。ただ豊さんとショーケンで食事はしたらしいですよ。ご本人たちの中にあったかもしれないですが、制作的には全くない」

井土「残念だけどすっきりしました(笑)」

 

 この後で“映画を見るプロ”と称する老人が乱入するという、笑うに笑えぬ一幕もあった。