【『女教師 汚れた噂』(2)】
樽本「ねずみを体に置くのも、宮井(宮井えりな)さんがよくやったなと。きのう池袋のシネロマンで前から見たかった『信州シコシコ節 温泉芸者vsお座敷ストリッパー』(1975)を見たんですけど、セックスしながらひよこを周りに置く。かわいがりながらセックスする」
遠藤「小沼(小沼勝)監督の『OL官能日記 あァ!私の中で』(1977)にもありましたね」
樽本「あれはドリーミーで幻想的ですね。今回は山谷(山谷初男)さんがいきなりひよこをばっと。『女教師 汚れた噂』(1979)がいま日本映画の新作としてつくられたら、何らかの形で絶賛されてK's cinemaあたりでロングランしそうです。
もうひとりの深沢ゆみさん。小沼さんの作品の小川恵さんみたいな普通の雰囲気の人がカウンターとしている。
おばさん役の吉川遊土さん。『母娘監禁 牝』(1987)でもお母さん役で、この作品でも素晴らしいですね。『母娘監禁』と(『汚れた噂』と)は共通点もありますね。売春してお金をもらうという」
遠藤「『母娘監禁』は自らやるんじゃないですけどね」
樽本「劇画が出てきて深沢さんが描いてるというのもすごい設定ですね。石井隆さんみたいな(一同笑)」
遠藤「上手すぎる(笑)。劇画と宮井さんのイメージがぴったりですね」
樽本「こんな作品がいままでの特集ではやっていなかった」
【選出された作品の解説 (1)】
樽本「今回は2012年のと似た感じのORGASMセレクション。曽根中生の『性愛占星術 SEX味くらべ』(1978)は、ヴェーラ側からもこれはしなくていいんじゃないかと」
遠藤「由美子(内藤由美子)支配人から「やだ!」って言われたのは何本もあります(笑)。こういうのを見ないとっていうか。全然面白くないって言われたらおっしゃる通りなんですけど、見てほしい。何も言えないくらい面白くないんですけど(一同笑)」
樽本「面白くないわけではないです。曽根中生の世界というか、よくこんなものを平気でつくるなと」
遠藤「脚本(山本晋也)も美術もいいんですよ」
樽本「プロデューサーと脚本家と監督が温泉に行って映画をつくる話で、ある種のバックステージ物で面白そうなんですけど、うーん。八城夏子さんはかわいらしい」
遠藤「アイディアをパラレルな空間でそれぞれに鶴岡修さんや岡本麗さん、山科ゆりさんがやるという。占星術でいろんな星座の女性の攻略術を練るみたいな話になるんですけど、結局おとめ座とかに座しか出てこないで終わる。ぐだぐだにもほどがあるっていう(笑)」
樽本「私が唯一この映画でいいと思うのは、たこ八郎と庄司三郎が出るシーン」
遠藤「庄司三郎さんは大好きです」
樽本「日活所属の社員である俳優がひたすら愉しいというのがあります」
遠藤「女優さんも素晴らしいし、男優さんもいい体をなさっている。『汚れた噂』の高橋明さんはただのおじさん役でしたけど(笑)」
樽本「雰囲気、存在感がすごいですね。『汚れた噂』には出ていなかったですけど、高山千草さんが好きでタバコ屋のおばさん役とか。事件があったら外で噂してる」
遠藤「ああ、ばばあでしょ。『汚れた噂』の吉川遊土さんのお兄さん役の水木京一さん。出てくるだけで嬉しい(笑)」
樽本「水木さんは出てないのがあまりないくらいですね。
他の作品で、私が初めて見て感銘を受けたのは『愛欲の日々 エクスタシー』(1984)。吉田喜重みたいな。高崎俊夫さんはアントニオーニのようなって言ってましたけどポルノじゃない感じ」
遠藤「この磯村一路監督は人気があって、ロマンポルノじゃなくてピンク映画のほうがメインですね。北川徹さんってお名前で撮っています。脚本も書かれていて磯村台詞というか、スピリチュアルな世界、アシッド感がお得意な監督です」
樽本「音楽も高級な感じのタンゴ。吉田喜重を最近見直してたので、『エクスタシー』の小川より子さんが岡田茉莉子さんに見えてきて(笑)」
遠藤「エアセックスのシーンはすごいですね」
樽本「あれは昂奮できるものなんですか」
遠藤「(笑)ただかっこいいですね」
樽本「1984年という時代も微妙ですし、そんなに上映はされない作品ですね」
遠藤「池袋シネロマンでかかったことはありますね」
樽本「シネロマンは見るときに緊張感がありますね。なかなか軽く行けないところもある」
遠藤「女性が行くとスタッフの方は優しくて見回りもされていて、安心して見られます。男性は判らないですよ(笑)」
樽本「映画館自体は素晴らしくて、プログラムもすごく工夫されてるので「おっ」というのが。きのう見た白井信明監督の『信州シコシコ節』も。白井監督もあまり上映されないですね。舞台が信州のストリップ劇場で、神代監督『濡れた欲情 特出し21人』(1974)と同じところなんですよ。『特出し』のストリッパーの宝京子さんが出世してました。ストリッパーの集団がいて、高橋明さんと谷本一さんが詐欺師コンビで愉しい映画ですよ。
今回のセレクションで選ばなかったのが藤井克彦、林功、武田一成、白鳥信一監督」
遠藤「林功さんの『透明人間 犯せ!』(1978)はやりたかった。藤井監督も他のところでやってて(笑)」(つづく)