【石井作品の撮影現場 (2)】
福島「監督はお会いする前と後で、イメージにギャップがありました。私は演技を初めてからまだ長くないので、質問すると監督が答えてくれて。いつも静かな方で。(石井監督が目を閉じていて)ちょっと、えっ!?」
石井「聞いてますよ(一同笑)」
福島「映画にはないんですが、(殺されて倒れていると)竹中さんが入ってきて、ビンタされる。動いちゃいそうで、大変でした」
竹中「あれは、監督がカットかけないから(笑)」
福島「私も新宿のバッティングセンター(『GONIN』1作目〈1995〉に出てくる)へ行って、声出してました(笑)。
土屋アンナさんと対峙するシーンでは、同じようなバックグラウンドを持つ女性ですけど、彼女のことがうらやましかったのかなとか、いろいろ悩んでいたら、監督が自由にやってみてって言ってくださって。ありがとうございました」
安藤「(台本の当日の改訂は)ちょっと優しめになりました」
石井「安藤くんはゾンビだから(一同笑)」
『GONINサーガ』(2015)の5人のひとり・柄本佑氏は石井監督の『フィギュアなあなた』(2013)にて主演し、竹中直人氏とも共演している。
石井「佑くんは、台詞のひとことひとこと台本通りで間違えない。ものすごく映画を見ていて、『フィギュアなあなた』ではぼくと戦うのに疲れると、朝、「紅い花」を聴いてくるって」
主人公(東出昌大)の母役の井上晴美氏は、『フリーズ・ミー』(2000)、『ヌードの夜 惜しみなく愛は奪う』(2010)につづく石井作品の参加。
石井「井上さんは自殺に見せかけて殺されたんです。海底の雰囲気で、照明を海の底のようにして、わざわざ熱帯魚も並べて。それが東出くんの気持ちの反映で、映画はそういう気持ちを反映させることができる、稀有な媒体です」
【その他の発言】
石井「(『ヌードの夜』〈1993〉というタイトルもあるが)ぼくの場合、いかがわしいヌードという意味ではなく、女性が主役の映画ということです。男と女の出会いと別れ、これがぼくにとっては判らない。女性って何だろう、引き合う感情って何だろう。出会いと別れに興味があって、撮っていてこの歳になってしまいました。
ぼくの世代(が見ていたもの)は、久世光彦さんのドラマとか家族物が多くて、山田太一先生の作品とか。ぼくはそれより女と男の出会いと別れ、どうして女性に惹かれていくのかなって。それを絵で描いてみても判らず、生身の女優さんでやってみても判らず。でも『ヌードの夜 惜しみなく愛は奪う』では竹中さんが女性と初めて食事するシーンでは、家族だねって言われました」
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1作目は竹中氏が、狂気のサラリーマン・萩原役を演じるかたわら、キャスティングなどのプロデューサー的役割を果たした(クレジットは特になし)。
石井「竹中さんのおかげで『GONIN』の1作目は成立して、だからいちばんやりたい役を言ってくださいって手書きの台本を見せたら、竹中さんは“どうせおれ、これでしょ”っていじけて(一同笑)」
竹中「監督にそんなこと言われる筋合いはない(一同笑)」
石井「佐藤浩市さんがやった役とか、他の役でもいいですよって言ったけど、本人はどうせおれはこれだ、と。でも今回、小説を書いたら、萩原の心理状態は難しい。全部狂ってて、登場のときから妻子を殺してて、でも電話してる。そういうのが、竹中さんは(台本を)読んでて、他のすました役より愉しかったのかなって。竹中さんは、深いな」
竹中「(笑)WOWOWの『同期』(2011)で栗山千明さんといっしょで、“はじめまして”って言ったら、“初めてじゃなくて、『GONIN』の娘役でした”って(笑)」

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石井監督は香港版『GONIN』や少女版『GONIN』のシナリオも執筆していたという。
石井「香港版は、黒服ややくざの親分の息子、香港から来た留学生が、香港に進出していくときに向こうとぶつかるという。村木と名美の物語になっていて、あちらの役者も交えてやりたいなって。
少女版は、今回と同じようにダンスパーティーに殴り込んでいく。×××っていうアイドルから注文が来て、書いて、そしたらブレイクして知らんぷりされちゃった。そういう業界です(一同笑)」
最後に石井監督からメッセージ。
石井「何回目ですって言われると、チケット買って何度も見ていただいているわけで、何度も見なきゃ判らない映画をつくってしまってごめんなさい(一同笑)。
今回、記録的な不入りということで、きょうここにいるんですが、みなさんとお会いできてよかったなと」
最後に竹中氏が写メを石井監督たちと撮っていて、客席の筆者も強引に写り込んでしまった(笑)。
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