私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

森本レオ × 山賀博之 × 渡辺繁 トークショー レポート・『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(3)

【アフレコの想い出 (2)】

山賀「森本さんは当時から有名な方ですから、やっていただけるならこういう感じだろうなって想像通り。アフレコ初日に音響監督の田代(田代敦巳)さんがぼくの横に来て「森本さんの台本見た? 読み込んでるよ。あれを見たら声優連中は緊張するよ」って耳打ちして来ました」

森本「全く記憶にない…(一同笑)」

山賀「役者さんが台本を読み込むのと声優さんが台本を読むのとでは違うんですね。あの当時はビデオもまだそんなにない時代で、読み込まない声優さんが多かった」

森本「ぼくらは相手役の気持ちとか立場を書き込むんですよ。自分のことはあまり書かないんですね。相手とどう離れてるかを微調整する」

山賀「生意気ですけど声優さんで固まってた世界に新風を吹き込みたいというか。不安定にしたかったんですね。悪口みたいになっちゃうといけないけど、声優さんは芝居で場をまとめるんですよ。この空間はこうだと。どんなめちゃくちゃな画でもその場がぐっとまとまるのが声優さんのすごさなんだけど、森本さんを入れることによって不安定になるわけです。リアルな世界は不安定じゃないですか。誰が何を言い出すか判らない。そういう感じがちょっとでも出ないかなっていう」

森本「正直に言っちゃいますと昼休みにお茶飲んでたら、向こうのほうでおじさんたちが4~5人固まってて「素人が混ざってるとやりにくくてしょうがねえな」って聞こえるように(一同笑)」

山賀「あの人たちは言いそう(笑)」

渡辺「〇〇〇〇〇〇〇の方が多かったですね(一同笑)」

山賀「当時の声優さんは「あいつは顔出しの仕事が多くなってきたから偉そうにしやがって」とか言うんですね」

森本「(完成作品を見て)もうちょい声優っぽくやってもよかったかなって(一同笑)。自分でも右往左往している感じがあるんですね。ちょっと苦い思いがありました。いまでも判らないですね。お姉ちゃん(弥生みつき氏)が上手にバランスとってくれて、いっしょにやってるとすごくよかったです」

山賀「あの方は面白いですね。声優経験はあまりないのに、声優寄りのような役者寄りのような」

森本「ぼくはうろたえながらやってましたね。大河に流されて、たどり着くのかよ!みたいな。厭だなと思いながらやってるのに、どんどん昂奮してくんですよ。帰りたいよりもっと行きたい。何してんだろうと思いながら」

渡辺「劇中で「♪はーりぼーて はりぼーて」って森本さんが歌われますけど、あそこは森本さん作曲なんですよ」

森本「途中からどんどんわがままになってました(一同笑)」

山賀「最後の収録が終わって森本さんが出てこられたときの第一声が「ああ、もう1回行きたい気がする」。こちらも嬉しかったですね」

森本「どんどん愉しくなっていったんですね」

 

【その他の発言】

森本「実はぼく、戦争が終わったころ3歳で、ずっと倉庫の炭俵の上で屑屋さんにもらった本を読みつづけて。そしたら母がある日「そんなに字ばっかり読んでたらいかんよ。字ばっかり読んでると頭が固くなるで。字を読んだ分、マンガ見たり映画見たりしなさい」って言ってくれて。それから10円のナイトショーを夜10時に見に行って、ジョン・ウェインとかヨーロッパ映画とかを見て。歌舞伎も見て。気が小っちゃかったのに、気がついたらこんな場所に立たせていただいて。この映画は母がぼくに贈ってくれた宝物だと思います。見てやってください。ありがとうございます」

渡辺「ここまで来られたのはいろんな人の力があったからで、ぼくは媒介者で立ってただけですね。4Kに関してもきめの細かい作業があって。みなさんの手に渡って、作品が本物になるんですね。

 熱いバカみたいなエネルギーが世の中を変えていったという前例というか。挑戦させる立場にある年配の方は、若い人にどんどんトライをさせていっていただきたいと思います」

 

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