【『GONIN』1作目と『サーガ』(2)】
『GONINサーガ』(2015)の主人公格(東出昌大、桐谷健太、柄本佑)は1作目(『GONIN』〈1995〉)の敵役の息子や事件現場に駆けつけた警官の息子という設定で意外な気がしたのが、そのような理由だったのである。1作目は大傑作と言っていい出来栄えで、ファンも多い。
竹中「ぼくの友達は石井監督や『GONIN』のファンが多くて、興奮したメールや電話がありまして。先ほども加藤雅也くんから電話があって、久しぶりにバイオレンスを見たと。嬉しかったですね」
安藤「初号で遅刻して最初は見てないんで、これから見に行かないと(笑)。
自分は20代前半のころに石井隆の映画を見て、この作品の世界観に入ってみたいと。あれから19年…? いつも話してると、落ちがつかない。安藤、ぐだぐだだって言われる」
竹中「いいよ、落ちなくて(一同笑)」
安藤「次にやる作品のプロデューサーは『GONIN』を14回見て、今回のも2回見て泣いたって。その人は頭おかしい(一同笑)。でもそれくらい影響力があるんですね。
(石井監督が目を閉じてうつむいていて)監督ちょっと! ぼく、がんばって喋ってるのに!」
石井「寝てないよ。静かに聴いてるだけ(一同笑)」
福島「私は他のみなさんと違って、撮影期間が短くて。トレイラーの後で本編を見たら1作目と同じ音楽でワオって。この世界の一部に入れていただいたんだなって」
終盤では前作の “5人” のひとりである根津甚八の見せ場が。ここにも前作とのリンクがある。
石井「前作では白い防弾ベストを永島敏行さんが弾除けに着る。それをなぞっていて(安藤さんの役は)生き残ろうとしている。でも根津さんは白いベストを見て、永島さんだと思って撃つ。
台本では東出さんが主役だけど、前作でもずいぶん早く佐藤浩市氏が死んで、主役なのにこんなに早く死ぬって撮影中にぼやいてたけど。今回もしぶとく安藤くんがいて、最後にアンナちゃんが死ぬ。だからってアンナちゃんが早く出てくるということもない。撮ってみて役者さんも判るんですね」
1作目で竹中直人氏が演じた人物は “はぎわら” だが、『サーガ』では “おぎわら” と呼ばれる。
石井「ぼくがOKって言っちゃって、1作目で鶴見くんが “はぎわら” か “おぎわら” かって言ってるシーンがあるからいいかなって。あの漢字はそうとも読むし。いじけちゃって、その件では夜も眠れなかったんです(一同笑)」
他にも細かいリンクがある。
石井「新宿二丁目のレズバーにおもしろい人形があって、ぼくはレズじゃないけど(一同笑)。カミさんといっしょに行ったときにもらってきて、1作目でビートたけしさんが萩原(竹中)の家に行くときにそれがあって、今回は竹中さんのシーンでそれを引き継いで。『ヌードの夜』の鯨もね(『ヌードの夜』の正続に、共通して鯨の置物が登場)」
ラストには1作目の冒頭と同じテーマ曲(安川午朗)が流れ、同様の空撮映像が。
石井「エンドタイトルは逆回(逆回転)。
「ま、いいか」っていう台詞がぼくの最初につくった映画(『天使のはらわた 赤い眩暈』〈1988〉)のラストと同じで。これが遺作って意味かという人もいるけど、そうなるかな(笑)」
【石井作品の撮影現場(1)】
石井隆作品では、アクションや雨など実にハードそうに見える。
竹中「(石井監督につつかれ)あ、おれ? 私はいつも何も考えてない(笑)。
つらいことはないけど『ヌードの夜』(1993)で余貴美子が海へダイブする場面。下(海中)にダイバーがいて、ぼくが潜って(ダイバーから)酸素を吸ってまた上へあがる。夏で愉しいかなって言ってたら、冷夏で寒くて。そういうときは肉体的に持つかなって思うけど、そのくらい。監督はよくいじけてます(一同笑)。
ぼくは淋しがり屋で、ひとりじゃ厭だなって。(『サーガ』では)どうしてもリラちゃんと共演したい。そこで石井さんがそういう役を書いてくれて。女優さんがそばにいるとやりがいが違いますね(笑)。土屋アンナさんと戦えるってどんなだろうとか、好きな監督と共演者でぜいたくな時間でしたね」
安藤「石井さんは、撮影期間中に連絡すると何時でも返事が返ってきて、セッションしてくれる。愛でつつんでくれます。(石井監督が目を閉じていて)あ、ぼくのときだけ寝る!」
石井「いや、聞いてますよ(一同笑)」
安藤「(『サーガ』の)最後にみんなが死んで、雨が、いやスプリンクラーだった。おれ、映画見てないのかな(一同笑)。あの長回しだけは笑っちゃうくらいものすごくて。うつ伏せでないと」
石井「上向いてた人もいたよ」(つづく)