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黒沢清 × 篠崎誠監督 トークショー レポート・『蛇の道』『蜘蛛の瞳』(1)

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 10月公開の最新作『岸辺の旅』(2015)により、カンヌ映画祭の「ある視点」部門の監督賞を受賞した黒沢清監督。黒沢監督は『CURE』(1997)や『カリスマ』(2000)、『叫』(2007)などホラータッチの作品で知られる巨匠で、特に『CURE』の底知れない無気味さは見ていて奈落に突き落とされるような感がある。黒沢監督は1990年代にはVシネマも多数撮っているが、哀川翔主演の『蛇の道』(1998)、『蜘蛛の瞳』(1998)の二部作(特に前者)はVシネマの皮を被ったサイコホラーで、トラウマを観客に刻印する。

 渋谷にて黒沢監督の特集上映が行われ、初日の『蛇の道』『蜘蛛の瞳』の後に黒沢監督が登場。トークの相手役は、『おかえり』(1996)や『東京島』(2010)、『あれから』(2013)などを監督し、黒沢監督との対談本『恐怖の映画史』(青土社)もある篠崎誠氏が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

黒沢清の恐怖の映画史

黒沢清の恐怖の映画史

 

【『蛇の道』】

 『蛇の道』は、娘を殺された男(香川照之)の復讐に手を貸す数学教師(哀川翔)の物語。謎めいた数学教師の素性?はラストで明らかになる。

 

黒沢「どうもありがとうございました。(『蛇の道』の後で)ほんとに厭なものを見たなという、厭な雰囲気になっていると思いますので、申しわけありません(一同笑)。脚本がありますので、それを忠実に撮ったら、ああなってしまいました(一同笑)」

篠崎トークショーの日の作品のチョイスは黒沢さんですよね?」

黒沢「何がいいですかって訊かれて、『蛇の道』の後でって。ぼくは哀川翔さん主演のVシネマをたくさん撮っていまして、実験的なことをやってみたり、いろいろ修行させてもらった記憶があって、哀川さんの作品の後でトークがしたいと」

篠崎「1995年から『勝手にしやがれ』シリーズ(1996〜1997)の撮影が始まって、次に『復讐 運命の訪問者』(1997)と『復讐 消えない傷痕』(1997)があって、そのパート3、4ということで(『蛇の道』『蜘蛛の瞳』の)企画が進んでいたんですね」

黒沢「会社の都合で、(『蛇の道』『蜘蛛の瞳』は)製作がKSSから大映に代わって、それで時間があった。それならばと『CURE』を撮って、その後が『蛇の道』です。

 ひと月、4週間で2本を撮った。前半2週で1本、後半で1本です」

 

 『蛇の道』の脚本は『インフェルノ 蹂躙』(1997)や『リング』(1998)などで知られる高橋洋。『蜘蛛の瞳』は西山洋市と黒沢監督の共同脚本である。

 

篠崎「『蛇の道』と『蜘蛛の瞳』とは、主人公の名前は同じですけど、シナリオは別々。プロットはあって、(2本同時進行で)書いていたんですね。黒沢さんは、高橋さんのシナリオを見ないで、『蜘蛛の瞳』を書いたんですよね」

黒沢「1作目のシナリオがなかなかできないので、続から先に書きました。『復讐』の1作目は奥さんが殺されて、2作目ではその裏に陰謀があった(という設定)。

 『蜘蛛の瞳』は、西山くんに先に書いてもらったんですけど、どの部分だったかな? 覚えているのは、西山くんが全く喋らない。打ち合わせが無言で過ぎていく。ぼくだけ喋って、どうですかって訊いても、はいもいいえも何の反応もない。おかしくってね。ぼくのひとりごとみたいな打ち合わせ(一同笑)」

 

篠崎「当時始めたばかりの映画美学校の素材撮りに、『蛇の道』の現場へ行きました。哀川さんと香川さんが同じ家へ2度行く場面があって、立ち会わせていただきました」

黒沢「ああ、来てた?」

篠崎「『蛇の道』では、哀川さんが何かを感じて振り向くと、夜の街があるという場面がありますね」

黒沢「脚本にないところで、彼は孤独だっていう表現です。塾の生徒に慕われているように見えて、彼を最後まで見送る人は誰もいない。少女だけが幽霊みたいで、心が通っているように見えなくもない。そういう主人公の過酷さを表現したかった。脚本には、こういうのはなくて、主人公はほんとにひどいやつ。最後に香川さんを幽閉して、外に出たところを車にはねられて死ぬ。やめてくださいよ、続編のシナリオ書いてるんだから(一同笑)。ぼくは、そこまでひどいことはできない」

篠崎「黒沢作品の子どもはちょっと怖いですね」

 

 数学塾の女の子だけは、主人公をちょっと見守っているように描かれている。

 

黒沢「最後に香川照之が見るビデオの画面を入れたのはぼくで、脚本には書いてなかった。高橋くんが、あれ何ですか、あんなひどい映像を客に見せていいんですかって。こっちは、何も映ってないよ、あなた何を見たんですか(一同笑)」

篠崎「高橋さんの頭の中だけで(笑)」

黒沢「見せてはいけないものを見せたと思ってしまった。

 ラストの香川さんは“発狂する”とシナリオにあった。ほんとはどう発狂するか判らないけど、それは俳優の演技の見せ場ですからね。お願いします、と」

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【『蜘蛛の瞳』(1)】

 『蜘蛛の瞳』では、世界観がつながっていないような微妙な雰囲気。主人公の自宅のシーンは陰鬱で怖い。

 

篠崎「『蜘蛛の瞳』ではホラー的な描写がありますね。1997年撮影というと…」

黒沢「『リング』(1998)の前ですね。あのころは、隙あらば幽霊表現をしたくてしょうがなかった。鶴田法男さんや小中千昭さんがやってましたけど、ジャパニーズホラーは全く認知されてない。高橋くんとかと盛り上がって、そんなタイプの映画じゃないのに、ドアの向こうに死んだ娘がいることにしようよって(笑)。まあ鶴田さんの真似ですけど」

篠崎「『トウキョウソナタ』(1998)では子どもが生き残っていますね」

黒沢「『まれ』(2015)の人(土屋太鳳)ですね。あまり見てないんだけど。『トウキョウソナタ』では、家族は全滅するけど生き残る」

 

 復讐譚としてよくまとまっている前作に比して、『蜘蛛の瞳』は奇妙な会社で主人公が働く件りなど、笑ってしまう場面も多い。(つづく)

 

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