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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

黒沢清 × 西島秀俊 × 役所広司 トークショー レポート・『クリーピー 偽りの隣人』(1)

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 過去の失踪事件の謎を追う犯罪心理学者(西島秀俊)。その隣人(香川照之)は奇妙で怪しげな男である。隣人を不審がる主人公だが、妻(竹内結子)に魔の手が迫っていた。

 

 6月から公開中の『クリーピー 偽りの隣人』(2016)は、『CURE』(1997)や『叫』(2007)、『岸辺の旅』(2015)などの黒沢清監督の最新作。難解な印象の強い黒沢清作品だが、今回はエンタテインメント性の高いスリラー映画になっている。いつもながら役者さんがよく、黒沢作品経験者の西島秀俊香川照之が好演しており、出番の少ない川口春奈笹野高史も実にうまく、他の作品では頭を抱えたくなる東出昌大ですら魅力的だった。

 新宿にて上映後に黒沢監督と西島秀俊トークショーがあり、『クリーピー』には出演していないが『CURE』や『ドッペルゲンガー』(2003)など黒沢作品常連の役所広司トークに参加した(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

黒沢「大変気味の悪い映画をつくってしまって、すみませんでした。最後まで見ていただけたこと、感謝しています。撮影中はみんな和気藹々とハッピーにやっておりましたので、そこはご安心ください。申しわけなかったな、すみませんでした、ほんとに(一同笑)」

西島「こんなにたくさんの方にあたたかく迎えていただけて、感謝しています。黒沢監督と役所さんのトークが聴けるということで、ぼくは観客の側におります。

 (『クリーピー』は)周りからの反響もあって、公開前に予告編見た友だちからも訊かれて、答えられなくてつらくて(笑)」

役所「『クリーピー』には出してもらえなかったんですけど(一同笑)、一ファン、追っかけとして舞台に立たせてもらってます」

 

【『クリーピー』について (1)】

黒沢「原作(前川裕『クリーピー』〈光文社文庫〉)はとてもユニークで緻密でしたけど、長く複雑で、あのまま映画にするとものすごく長くなる。どこかを省略してどこかをクローズアップしなければならない。過去の因縁は一切省略することにしました。ずいぶん違った印象になったかもしれませんが、ぼくとしては原作のクリーピーな部分を大切にしました。西野(香川照之)がどこから来たのかっていうのは不親切だったかもしれませんけど」

役所「黒沢監督の前で感想を言う、初めてですね、こういうシチュエーション。ぼくにとっては映画の先生。映画って1回で見切れるものではなくて、いい映画は何度見ても発見がある。『クリーピー』も2回見ました。とにかく面白い。サイコパスの犯人が刺して射殺されるという、あの導入部のすごい吸引力。

 黒沢監督の映画には最後まで惹きつけられる。そして緊張状態で終わってしまう。長いワンカットで引っ張っていく。エンタテインメントとしてよくできてますし、見終えた後は監督が解釈の余地を与えてくれる。もう1回見たくなる。

 こういう内容の映画ですけど、俳優さんものびのびお仕事されてる。長いワンカットなので、観客も西島さんといっしょにそこに生きられる。感想になってないかな」

黒沢「感想というか、評論家みたいですね。役所さんに出ていない映画の感想をって全く初めての経験。ただ感動しております。ちゃんと言葉にすることもできるんですね、って言うと失礼ですけど、監督もやられている方ですから、ご自分の作品でない映画も冷静に見ていらっしゃる」

西島「黒沢作品の登場人物はのびのびしてて、悪人も突き抜けた明るさがあって。ぼくの役も抜けてて、ほんとにできる刑事なのかなって。どこか明るさがある。現場でみんな愉しく演技してましたね」

役所「導入部はほんとに、ああかっこいいなって感じます。何でここにぼくが出ていないんだ、出たかったって思いますね」

西島「役所さん出たら、ぼく出られない(一同笑)」

黒沢「こんなことなら役所さんもどこかにワンカットでも出てもらえばよかった」

役所「犬でもいい(一同笑)」

西島「(自分は)ファンですからね、ただのね。役所さんが黒沢さんのに出ると、最初は人間なんだけど、最終的には人間を超えたものになる。それはね、役所さんにしかできないと思うんですよね。ある秩序なり法則なりがあって、みんなが翻弄されて理解しない中で、役所さんひとりがその象徴になる。他の人にはできないなって。(役所主演の)『CURE』と比べられるときがあるんですが、ちょっと勝負にならないです。ぼくはどこまでいっても人間だなって感じが」(つづく)

 

【関連記事】黒沢清 × 篠崎誠監督 トークショー レポート・『蛇の道』『蜘蛛の瞳』(1) 

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