私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

志水季里子 × 中堀正夫 × 後藤勝彦 × 油谷岩夫 トークショー レポート・『東京幻夢』(2)

【『東京幻夢』(2)】

志水「(『東京幻夢』〈1986〉では)ハイビジョンでということで私の顔に立体的なほくろをつけてみたり。それが映るだろうかと。

 きょう見直してたら、縛られてましたね。全然覚えてなかった(笑)。そういえば縛る人が(現場に)来てたのが、ちょっと甦ってきた」

油谷「早川さんかな」

 

 写真館で家族連れと裸の志水氏とが平然と並んでいるシーンは驚かされる。

 

志水「エキストラの方が来たシーンで私は裸じゃないですか。恥ずかしかったですね(笑)」

油谷「志水さんがヌードの写真館のシーンはスタッフが並んでました(笑)。上手は佐藤秀山さんっていうTBSの音響効果の巨匠。内トラなんですね」

志水「知らなかった。エキストラさんだとばっかり」

油谷「後列左の女性はテレビマンユニオンに行った方で、コダイ報の編集。右のスーツのメガネの人は桜庭邦明さんといって渡辺企画にいて、その後で実相寺監督と『上海にジャズが流れた日』(1984)っていう番組をつくります。ぼくも改めて見て、ああいう人を入れてたのかと気づいた」

 

  電話ボックスのシーンでは照明の牛場賢二氏が登場。

 

志水「ああ、誰か見たような人だと思った。中でチラシ貼ってる男ね。名照明マンですね」

油谷「時代的に電話ボックスにピンクチラシがべたべた貼られていたころですけど、監督は一時期それを収集してまして、スタッフも動員して。スクラップブックが何冊あったかな」

志水「収集(笑)」

中堀「全国から送ってもらって」

油谷「いまみたいにネットもない時代ですから」

志水「作品のためですよね」

油谷「そういうわけではなく収集したいの(笑)」

中堀「段ボールに7箱ぐらい」

志水「家は大変ですね」

油谷「赤坂の事務所にはあったのに、どっか行っちゃったね。数えるのも面倒で数えませんでしたけど、すごい分量が」

志水「亡くなられた後、香典返しに『星の林に月の舟』(筑摩書房)をいただいたんですけど、読んだら『東京幻夢』はご自分のカラーがいちばん出ている、非公開で残念だって書いてありましたね」

油谷「(『東京幻夢』を依頼した)NVS研究会はNHKとかいろんな会社が寄り集まって、ハイビジョンはどういう表現ができるか研究する団体です。そこから来た仕事で、限られた人が見るわけで最初から一般公開の予定はなかったですね(DVD『青い沼の女』に収録)」

中堀「撮影前にNHKの技術のほうから、ズームレンズの絞りが2.8から始まってるんですけど4.5以下は撮らないでくれと指示が来たんですよ。監督は「何言ってんだ。2.8ぐらいでしかおれは撮らないから、遠慮しないでどんどん撮れ」。外は絞ってるけど、夜は解放状態で撮っても誰も文句言ってこなかったですけど。向こうはハイビジョンのデータを取ろうとしていたのかな」

【その後の作品】

油谷「監督が「名古屋にはうまい飯がないよな」って言って、志水さんが「ある」って。ふたりで「ない」「ある」って言い合ってた」

志水「それ覚えてない(笑)。名古屋おいしいとこいっぱいあるんですけど。魚もおいしいしね。『ラブホテル』(1985)のときは相米相米慎二)監督に「名古屋弁でやってみろ」って言われてずっと名古屋弁で台詞言ってたら「やっぱりきたねえや」って戻されました(笑)。すみません、他の監督の話をして」

ラブホテル

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  • 速水典子
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 志水氏はこの後にテレビ『青い沼の女』(1986)、大作映画『帝都物語』(1988)、オリジナルビデオ『実相寺昭雄の不思議館/受胎告知』(1990)などに出演。

 

志水「「受胎告知」? ああ、覚えてない(笑)。私、テレビの『青い沼の女』も出てるんですね。看護師の役。

 『帝都物語』はこんなにアップで撮られてたんですね」

油谷「(『帝都物語』は)昭和記念公園ができる前の野っ原にセットを建ててました」

志水「電車とかすごかったですね」

 

 『帝都』ではカメラが移動して外から2階の窓を通って室内に入っていく、凝ったシーンも。

 

中堀「電車のレールを利用して、クレーンでカメラが窓から中へ入るように仕掛けてある。L字型に移動して、カメラが上がるときにおれは手を離して、窓の横にチーフが待ってて、カメラが来たら中に入っていく。軽業師みたいだね(笑)」

 志水氏は実相寺監督の率いるコダイ・グループに在籍したこともあった。

 

志水「私は日活時代もフリーだったんですね。『ラブホテル』や『マルサの女』(1987)に出たときもそうです。実相寺監督は優しい方で、コダイの電話を使わせてやれって言ってくださって、私の籍を置いていただいて。よく赤坂の事務所に行きました。一時期でしたけど。劇団民藝のマネージャーさんがいらっしゃいましたね。ご迷惑だと思って離れましたけど」

油谷「いやいや、こちらがご迷惑を(笑)」

志水「実相寺監督はシャイな方で、私もシャイですけど(笑)。1対1でお茶を飲んだりお酒を飲んだりしたことは一切ないんですね。打ち上げとかはあるけど、個人的にお話しした記憶はないです。プロデューサーの大木淳吉(大木淳)さんに「志水の面倒見ろ」って任せたみたいで、大木さんには歌舞伎町とかに飲みに連れてっていただいたり、おいしい食事をごちそうになったりしました」

油谷「危険な目にも遭わなかったんですね」

志水「好みじゃなかったのかな」

油谷「私の口からは何とも(笑)」

志水「監督はスマートで痩せている人が好きなんですね。円谷プロのパーティに呼んでいただいて、結婚して妊娠7か月ぐらいだったんですけど、つわりもないもんですから10キロくらい太っちゃって。マタニティドレスで行ったら、監督はげんなりしたと思います(笑)。それ以来、お話はないですもんね。旦那(廣瀬昌亮氏)は使っていただきましたけど」(つづく