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寺田農 × 中堀正夫 × 高橋巖 トークショー レポート・『実相寺昭雄の世界 -ウルトラマン創作秘話-』(1)

 テレビ『ウルトラマン』(1966)や『怪奇大作戦』(1968)、映画『D坂の殺人事件』(1998)などで知られる実相寺昭雄監督。樋口真嗣監督の映画『シン・ウルトラマン』(2022)に引用されたこともあって実相寺作品がまた注目を集めており、実相寺昭雄研究会が長年に渡って関係者に取材を重ねて制作したドキュメンタリーの労作『実相寺昭雄の世界 -ウルトラマン創作秘話-』(2022)も公開された。

 5月に川崎にて『実相寺昭雄の世界』の上映後に、実相寺作品の常連・寺田農、撮影の中堀正夫、『世界』の高橋巖監督によるトークが行われた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

【ドキュメンタリーの制作】

高橋「もともと川崎市長と樋口真嗣くんがお酒を飲んだときに、川崎市民ミュージアムに収められている実相寺監督の品を展示してほしいって樋口監督が頼んで、形を変えながらこういうドキュメンタリーになったということです」

 

 寺田農氏はナレーションを務め、進行役として画面にも登場する。低予算であることがドキュメンタリーの中でも言及されている。

 

寺田「大変な低予算ですが(一同笑)日本の映画も世界の映画も十分な予算でできた作品なんてないです。

 実相寺昭雄研究会がずっと前からインタビューを撮ってたの。飯島(飯島敏宏)さんもついこないだ亡くなったけど、池谷(池谷仙克)さんとか随分亡くなった方もいて、でもこれだけのインタビューが撮ってあって。今回新しく収録した部分もあるけど、いままで研究会が撮ってたからドキュメンタリーが可能だったんですね。資料的にもとても大事なことでね」

中堀「こういう機会に実相寺昭雄がどういう人がどういう人だったか、ぼくらがファンのみなさんに伝えていかなきゃいけないと思いますね」

 

 若き日の実相寺監督のメモも紹介されている。

 

高橋実相寺昭雄の若い時代にスポットを当てる作品があまりなかったですから、研究会で監督の遺品の中からさまざまなメモとかを取り出して構成しようと。実相寺昭雄は鬼才ってくくられて終わってしまうんですけど、そう言われるようになる以前、あるいはなった後もそうだったかもしれませんが、新しい表現を見つけようともがいてたということが、ドキュメンタリーをつくりながら再発見できました。そういう眼で作品を見ていただけたら。

 『ウルトラマン』もモダンで、ライトを画面に入れ込む(第23話「故郷は地球」)なんて邪道だって東宝のカメラマンが2本だけやって代わってしまったって話も出てきますけど、どういうふうに新しい映像をつくるのかってことに向き合ってたって再確認できて。多くの人にも知っていただきたいと思ってまして、この作品をつくれたことを誇りに思っています」 

【実相寺監督との出会い (1)】

 寺田氏と実相寺監督との最初はテレビ『でっかく生きろ』(1964)。

 

寺田「その前に東京オリンピックのころに『でっかく生きろ』っていうので実相寺に出会うんですね。のちに実相寺はスポンサークレームで降ろされるんだけど、そのときに本読み、読み合わせがあったの。いまではNHKぐらいでしかやらないけどね。30分番組で寄る7時から稽古やって、2~3時まで読み合わせをする。「いまの声を白色レグホーンのメスで」とか「いまのボリュームでスピードは3分の1で」とかそんなことを延々と。ぼくにはすごく面白いの。新劇の演出家でそんな眼を持ってるのは誰もいない。当時にフジテレビにもいない。いまのテレビ局とおんなじ。明確に自分の演出という眼を持ってたのはあいつぐらいですね。朝の3時までやってたら千石規子さんが私の横で、この人は何だか知らないけどいっつもアメばっかり食べてて「あの若いのがいつまでも稽古したってね、本番じゃ全部変わっちゃうもんね」(一同笑)。実相寺に「お前ね、千石さんがこんなこと言ってたぞ。稽古やったって本番になれば役者が変えちゃうぞ」って言ったら「そうなのよ、だからしつこくやってるの」。本番になれば役者はその通りにやらないだろうって判ってたんだね」

 

 中堀正夫氏は『ウルトラマン』で助手を務めたことにより出会った。

 

高橋「『ウルトラマン』のころは、実相寺監督と話したりはしなかったわけですよね」

中堀「あんまりなかったですね。最初に怪獣に真珠をどうやって食べるか考えてくれって監督が言って(第14話「真珠貝防衛指令」)この人とんでもないこと言うな、と」

 

 寺田氏は「真珠貝防衛司令」に、怪獣ガマクジラに襲われる運転手役でわずかに出演。

 

寺田「どこで依頼されたのかもわかんないけども、夜中に訪ねてきてなんかやってるうちに「こういうのがあるんだけど農ちゃん、来てよ」みたいにね」つづく