【選出された作品の解説 (2)】
樽本「遠藤さんに前に借りて感銘を受けたのが、藤井(藤井克彦)監督の『団鬼六 花嫁人形』(1979)。あれもいどあきお脚本でした。ほんとに傑作ですよね。原作は団鬼六ですけど、絶対に書いてないだろうという台詞が」
遠藤「団鬼六はやりたかったんですけど自粛しました」
樽本「その雰囲気が味わえるのは『生贄夫人』(1974)ですので、そこに集約されるんじゃないかな。『生贄』の原作は団鬼六じゃないんですけど。『花と蛇』(1974)を小沼(小沼勝)監督、田中陽造脚本、谷ナオミ主演でやって団先生が激怒したんですね。コミカルな調子だったんで」
遠藤「あれは怒りますよね。最高ですけど」
樽本「降ろされるかと思ったら本気のSM作品ということで『生贄夫人』をつくった。それで絶賛される」
遠藤「『生贄夫人』は正統派ですね」
樽本「小沼監督はSMでがんがん傑作を撮るんですけど」
遠藤「西村昭五郎監督の団鬼六作品も結構好きで、あれを団先生はどう思われてたのか気になります。小沼監督と美意識が違うというか、西村監督は美意識がないんじゃないかってくらい(笑)暴力的で」
樽本「西村昭五郎は謎の監督ですね。いちばん数が多くて80本くらい撮ってますけど。今回の『闇に浮かぶ白い肌』(1972)は、えー西村昭五郎なんだってくらい傑作ですね」
遠藤「スウェーデン・ポルノの『淫獣の宿』(1973)は誰もごらんになってないですが。この作品をたまたま選んだんですけど『白い肌』をいっしょに見るとね。由美子(内藤由美子)支配人がつづけて上映されてるって聞くとさすが(笑)」
樽本「『白い肌』はゴシックホラーの要素が満載で、よくこういうのがきっちりつくれるなと。1972年だから初期で、館のシーンもゴージャスで安っぽくない」
遠藤「今回のセレクターの白川和子さんが『白い肌』を選んでいらっしゃるんです」
樽本「白川さんはたくさんの作品に出ているのに、その中から『白い肌』を選ぶという。あまり名作としては選ばれない作品ですが、思い入れがあるってことですかね。山科ゆりさんもすごい役です」
遠藤「とにかくかっこいい映画」
樽本「『未亡人下宿 初のり』(1978)というのも他で絶対にやらない貴重な上映で見てほしいんですけれども、最初は「こりゃダメだ」と思ったんですけど」
遠藤「私はよかったです(笑)」
樽本「途中で意外な展開になったりとか、だんだん慣れてきて。主演の久保新二さんがひたすら暴れる。久保さんの自伝(『アデュ~ ポルノの帝王久保新二の愛と涙と大爆笑』〈ポット出版〉)も買っちゃいました。この本も面白いです(笑)」
遠藤「未亡人シリーズは初めて見たんですけど他も見てみたい。寮の奥さんが橘ユキコさんで、そこだけでもいい」
樽本「深夜番組というかバラエティみたいな感じですけど。こういうのが3本立ての1本に入っているのは、ロマンポルノが盛り上がってた一因とも聞きます」
遠藤「撮影も素晴らしくて、はっとするシーンがあります」
遠藤「加藤彰監督の『のけぞる女』(1980)で護送中の事故で風間舞子さんが脱獄して、逃げるけどセックスがしたい。男たちを襲ったりする松方弘樹っぽい逃亡劇。映画館でポルノ映画を見るシーンがあって、それは宮下順子さんがぶすっとなる映画で『愛に濡れたわたし』(1973)。今回の特集にも入ってます。この宮下さんも素晴らしくて、風間さんとは全然違うタイプの役者さんですね。今回の特集でその両方をやります」
樽本「両方見てほしい」
遠藤「『少女暴行事件 赤い靴』(1983)は実録物。田舎と東京とを行ったり来たりする女の子の話で、地元にはヤンキーの友だちがいる。東京では孤独で、結局は地元にも居場所がなくなってしまう。少女のひと夏の物語」
樽本「この作品は女の子がふたりで、『バックが大好き!』(1981)は…」
遠藤「『バックが大好き!』は女の子が3人ですね。朝比奈順子さん、今年お亡くなりになりました。面白いコメディです」
樽本「セックス対決ですね」
遠藤「朝比奈さん、ありがとうというか」
遠藤「『犯され志願』(1982)は同僚の女の子ふたりが男をとっかえひっかえするんだけど、都会の孤独を感じて淋しいという」
樽本「『赤い靴』『バックが大好き!』『犯され志願』は青春映画として優れています」
遠藤「『制服肉奴隷』(1985)、『レイプハンター 通り魔』(1986)、『ベッド・パートナー』(1988)は望月真美さん、榊真美さん、広田今日子さんと全部名前を変えられてますけど同じ方です。可憐な方ですね」
樽本「『ベッド・パートナー』では地味な顔つきかと思ったら変貌しますね。同じ年の『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』(1988)を思い出しました。あれもカップルが東京を深夜にうろうろする」
遠藤「『制服肉奴隷』はふわふわの妄想少女です。シンデレラみたいな物語」
樽本「時間ということで、とりとめのない話ですみませんでした(拍手)」