最近はテレビ『教場』(2020)や『踊る大捜査線』シリーズの番外最新映画『室井慎次 敗れざる者』(2024)と『室井慎次 生き続ける者』(2024)がよくも悪くも話題の君塚良一。その君塚氏が脚本・監督を務めた映画『グッドモーニングショー』(2016)で、その際のインタビューを以下に引用したい。(用字・用語は可能な限り統一した)。
大ヒットシリーズ『踊る大捜査線』を手掛けた君塚良一の監督最新作『グッドモーニングショー』が、10月8日より全国公開。このほど君塚監督にインタビューを行い、朝のワイドショーを舞台に描いたコメディ作品に込められたテーマや、今のテレビが向き合うさまざまな問題、そして、脚本を手掛けた自らが「本(引用者註:脚本)を越えた」と絶賛した中井貴一と濱田岳が繰り広げた「リアルな芝居」について語っていただいた。
本作は、朝のワイドショー「グッドモーニングショー」のメインキャスター澄田真吾(中井貴一)を中心に描いたオリジナルコメディ。澄田が妻・明美(吉田羊)と息子の言い争いに巻き込まれ、職場ではサブキャスターの小川圭子(長澤まさみ)に「身に覚えのない交際」を発表しようと迫られ、プロデューサーの石山聡(時任三郎)からは番組の打ち切りを告げられるなど気分は最悪。さらには、爆弾と銃を持った立てこもり事件に名指しで呼び出され、武装した犯人・西谷颯太(濱田岳)を相手にマイク一つで対峙することに。まさに踏んだり蹴ったりとなった澄田の一日が描かれていく。
――この作品を作り始めたきっかけを教えてください。
君塚:フジテレビの映画部の人と次の作品について話し合っていたんです。そうすると雑談の内容が「どうしてテレビって最近文句を言われるんでしょうとか?」「どうして視聴率が取れないんでしょう?」とかテレビのことになっていく。僕自身も構成作家やドラマの脚本を書いて長いことテレビ業界にいるけど「どう思います?」と聞かれても答えは出ないんですよ。ネットのせいだとも、テレビがつまらなくなったとも思わない。今の時代、もっと複雑なモノをテレビメディアというのは抱えているのかもしれない。そこで真剣に自分に問いかけるという意味を込めて「テレビとはなんぞや?」をちゃんと考えようと思いました。
――どうしてワイドショーを舞台に選ばれたのでしょうか?
君塚:一番テレビ的な番組が何かを考えたら、生放送でやっている朝の情報番組だなと思ったんです。昨日から今日にかけて起きたニュースを扱って、他局も含めて基本的に同じ素材でやっているわけですよ。それを演出して面白くしていく。しかも、一度放送したら再放送やDVD化があるわけでもないから、毎日新しいモノを作っては消えていく。これこそ「theテレビ」の姿だと思いました。取材をはじめてみると、サービス過剰になっている、視聴率のためにはニュースでさえ面白おかしくやらなくてはならない、世界的な問題が起きても芸能ニュースを先にしてしまうなど、それぞれがポリシーを持ちながらも悩みを抱えていて、その上で視聴者の声も気になるなど、いろんな要素があった。それでワイドショーを舞台に人間模様を描いてみようと思いました。
――これまでにワイドショーに携わったことはあるのでしょうか?
君塚:すっかり忘れていたのですが、20代の頃は萩本欽一の元で構成作家をやっていて、朝の情報番組『グッドモーニングジャパン』の構成を3ヶ月だけやったんです。というのも僕がとてつもないことをやらかしちゃったので3ヶ月で終わっちゃったんですけどね(笑)。当時は日テレの『ズームイン!!朝!』が一人勝ちしていたので、その裏で視聴率を取るために何でもチャレンジしていたんです。一部の間では伝説になっているそうなのですが、毎日日替わりのランキングをやっていて、その中で「今週のAVランキング」をやったんですよ。当然、テレビには映せないから顔以外ほとんどモザイクかけて、それでも “ヒィヒィハァハァ” な感じはちょっと見せたりして(笑)。それをやったら当然すごい怒られた。でも、3~4週やってそこだけ視聴率は上がったんです。と言っても、忘れていたくらいだから、その経験がこの作品に生きているかというと、そうではないんですけどね。もしこの経験を本(引用者註:脚本)の中に入れていたら絶対に「AVランキングやります?」「何言ってんだバカ!?」とか書いているはずなんですよ。でも気がつけば映画のタイトルが『グッドモーニングショー』になっていて、人生面白いものですね。
――家庭の事情や過去の出来事、女子アナとの関係、そして犯人と絡み。このストーリーに行き着いたきっかけを教えてください。
君塚:テレビがサービス過剰になっているとか、暴走気味だとか言われて、制作側も視聴者からの声を恐いとか、いじめられている感が漂っていると思うんです。ある人が「たった一つの電話の背後に、何万人もいると錯覚してしまうときがある」と言っていて、そういう言葉に過敏になってしまうと。番組を見ていただけているのに同時に文句も言われている。それで今回、主人公がなぜか周りに責められている、いじめられている感を出していけば、テレビをベースにした物語がフィットしていくなと思いました。
――君塚さん自身もテレビはいじめられ過ぎていると感じることがありますか?
君塚:最近はテレビのど真ん中にいないので、個人的な感覚になってしまいますが、まずは絶対的に言われやすいメディアであることは間違いない。映画や文学は見たいから手に取ったり劇場に足を運んだりして、それを見て完結する。だけど、テレビは番組が終わると、次に始まる番組も自動的に見せられてしまう。本来であれば自分が拒否すべき番組であっても目にしてしまうわけです。見ていない映画に文句言う人は基本的にいないんですよ。だけど、テレビの場合は好む好まざるに関わらず見られていることも事実です。もちろん昔からテレビへの批判はありましたが、現代はその言葉が拡散されて実態より大きくなっている部分もある。さまざまな要因があって言われなき批判も受けているのかなと思います。(つづく)
以上、日刊アメーバニュースより引用。