【『怪猫トルコ風呂』について(2)】
『怪猫トルコ風呂』(1975)の主演は日活ロマンポルノで知られた谷ナオミ。トルコ風呂の主人の娘で「ピアノを弾いてる女の子」は、谷ナオミと共演の多かった東てる美が演じている。
掛札「(最初から)谷さんが出るということになってました」
佐伯「谷さん主演の『生贄夫人』(1974)で東てる美がデビューしてます。これの前年で、谷さんは東映ではこれ1本でしょうか」
掛札「室田日出男の主演映画もこれだけでしょ」
佐伯「ぼくが東映に入ったのは1972年で室田さんは子分Aくらいで、小林稔侍が子分C。助監督になった73年から代貸しで五六番手くらいです。室ちゃんは怪演で張り切ってますね」
掛札「悪役がすごくないとダメ」
佐伯「トルコ風呂のマネージャーで大映の悪役の藤山浩二さん。彼は途中でどっか行っちゃった。殺されもせず。
入江たか子さんとかのでは大名屋敷とか広い空間に出る。トルコ風呂って狭いから、どうやって出したらいいのか(笑)。難しかったですね。湿気が多いけど、猫はそういうとこ好きなのかなとか(一同笑)。
入江さんは美形で冷たい感じだから怖いけど、谷さんは色気のある化け猫で難しさがある」
佐伯「日本の場合は黒髪が怖くて、台本にも“黒髪が”って書いてある。何で(映画では化け猫が)白髪なんですか。現場(の判断)ですかね」
掛札「それは山口さん(山口和彦監督)に訊かないと」
佐伯「あまり怖くない」
掛札「昔の映画が怖かったのは白黒ってこともありますね。新東宝の怪談も白黒が多かった。怪猫がなくなったのはカラーになったのも」
佐伯「山口さんは、ぼくもお世話になったんですがアクション映画の人ですね、これも最後はアクションになっちゃう」
掛札「山口さんとは『女必殺拳』(1974)とかもやりました」
佐伯「悪口ではないですが、山口さんの資質として石井さんの残虐性と違うので、演出に粘りがない気も」
掛札「空手映画はうまいよね。
この作品はやってて愉しかったですよ。40年近く映画館でやられなくて、でもまた(上映)できるようになったのは嬉しいことだと思います」
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【初期作品の想い出(1)】
掛札氏は、当初は助監督だった。
掛札「助監督としては結構やりましたね。休みは一切なかった。第二東映ができたとき。助監督のときからシナリオ書いてたから。鈴木則文さんと勝手に撮影所の近くの旅館で書いて、自己陶酔に浸ったり(笑)。亡くなった志村(志村正浩)くんとかとね。プロデューサーに持って行ったりしたけど(宿泊費は)自前。鈴木さんと組んだことはないですけど話が合って、雑誌出そうってことになったり。(助監督より)書くほうが面白かったです。
京都(東映京都撮影所)では、監督は2、3本でダメになっちゃうんですね。残ったのは中島貞夫さん、鈴木(鈴木則文)さんとか」
佐伯「デビュー作が鈴木尚之さんと(共作)の『沓掛時次郎 遊侠一匹』(1966)ですね」
掛札「本社にいるとき鈴木さんが来てくれて、話が合うんでやろうってことになって。時代劇は苦手なんですよ。出だしの渥美清のくだりを主にやりましたね。
八木保太郎さんという先生がいまして、『大奥(秘)物語』(1967)を手伝えって言われて、八木さんのうちにずっといたことがあるんですよ。それで大奥を調べてくれって言われて、日比谷図書館でいろんな本を調べまくって。逆に調べすぎて、どうやってシナリオにするか判らなくなる。調べるもの程度がありますね。疲れちゃって先へ行かない」
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佐伯「1969年、ライターになられて3年目で『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』。石井輝男さん、天尾完次さんですね」
掛札「(プロデューサーの)天尾さんに、向いてるって呼ばれたんですね。見世物精神が。最初の打ち合わせが旅館で、行ったら三笠れい子って女の子が裸で刺青掘ってる。そのそばで打ち合わせ(笑)。京都も変わったな。
石井さんは従来の文法を重視しない。面白いからって人で東映に全くいなかったタイプです。いままでの東映は積み上げていくという笠原(笠原和夫)さんの方法と随分違いますね」
佐伯「見せ場をつくって、ストーリーをくっつけていくという。『元禄』はオムニバスですね」
掛札「そのほうがやりやすいですね」(つづく)

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