私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

井上敏樹 × 海津亮介 × 若松俊秀 トークショー レポート・『鳥人戦隊ジェットマン』(4)

【『ジェットマン』について (3)】

井上「(鳥人戦隊ジェットマン』〈1991〉)で香は田中弘太郎にふられるじゃない?」

若松田中弘太郎にふられたわけじゃない。天童竜に(一同笑)」

井上「(香を演じる岸田里佳は)「私、実生活でふられたことないので演技の仕方が判りません」って言ってた。あいつらしい(笑)」

若松「彼女はおれと井上さんがしょっちゅう飲んでるのをうらやましがって「私も飲みに行きたい」って来たけど、何も喋らないで帰って行った」

井上「若干、天然入ってる」

若松「だいたい、女優さんは天然です」

井上「お前もな(一同笑)」

海津「若松の天然は、イラッとするんじゃなくて心が穏やかになる」

井上「そうか? おれはときどきイラっとする(一同笑)」

 メイン監督は雨宮慶太氏で戦隊シリーズの演出は初。

 

井上「雨宮は(『ジェットマン』以前に)『未来忍者 慶雲機忍外伝』(1988)を撮ってた」

若松「鈴木(鈴木武幸)さんがこれいいと」

井上「当時は(戦隊シリーズの)視聴率が悪くて、それでおれと雨宮を抜擢した。2パーセントが14まで上がって。おれは15パーセントまで行ったら監督やりたいって鈴木さんに言ってたの。14になったら鈴木さんは「井上くん、あの話はなかったことに」(一同笑)」

若松「バリ島ロケに行こうなんて話もありました」

 

 最終話は若松氏の演じるブラックコンドル/結城凱が刺されて死亡。

 

井上「おれ、ブラックは途中で殺そうと思ってたの。ブラックを何回も代替わりさせようかと思ったわけ。するとこいつがさ、そんなことしたら実家のおばあちゃんが悲しむと」

海津「おばあちゃん連れてくるなよ、そこに」

井上「それが嘘だった(一同笑)」

若松「おばあちゃんは高2のときに亡くなってた」

井上「それで途中で死ぬのは厭だけど、最終回なら死にたいって言い出した(一同笑)。結城凱はいまだに人気があるもんね」

 読売新聞のさ、読者投稿欄によく載ってた」 

若松「毎週載ってた。賛否両論」

井上「恋愛ばっかりでおかしいとか、いやそれがいいんだとか。「帝王トランザの栄光」(第47話)が残酷だとかな」

若松「世界的にも、ヒーローって何だろうってつくり方をしていた時代ですね。最終回で凱が死ぬのは、おれの解釈では結局は人間で、人間が平和をつくるんだぞって意味かな。やり過ぎはやり過ぎで、賛否両論はありますよね」

海津「賛否ってのは両方あったほうがね。誉められてばかりの人はつまらなくて、賛否ある人のほうが刺激的だったりするからね。悪いこと言われても、こういうふうにおれのこと見てるんだなって思えばいい」

若松「『ジェットマン』はいまの時代にはできないね」

井上「昔できたけどってそういうのはいっぱいあるよ。『仮面ライダークウガ』(2000)もいまはできないね。残虐シーン多いから」

若松「結城凱はノーヘルでしたから」

若松「3人で初めて飲んだのが『ジェットマン』のころに吉祥寺で」

海津「『ジェットマン』の終わりぐらいに井上さんから電話もらって。『光戦隊マスクマン』(1987)が終わってからそこまで長く井上さんといっしょに飲んでたんだって、最近びっくりした」

井上「縁だね(一同笑)。

 おれは1年だけで、普通は曽田(曽田博久)さんみたいにずっとやるんだけどね。でもずっとやってなくてよかった。たまにやるから新鮮味があってさ」

若松「白倉さん(白倉伸一郎プロデューサー)は、ジェットマンのときは大学出て3年目ぐらいかな」

井上「初めてついたアシスタントプロデューサーが多分『ジェットマン』。愛想なくてね、変な奴だなと」

若松「3人で飲んだことがあって、吉祥寺のバーで。ひとことも喋らない」

井上「いまはよく喋るよ。長石(長石多可男)さんと大喧嘩もあったね。おれと同じペースで飲んで、同じ時間に呂律が回らなくなる」

 

 終了後に小説版も発表された。

 

井上「小説は小学館から依頼が来たんだよ。頑張って書いた覚えがある。時間かかったな。全く違う話よ」

海津「改めて書いたの」

若松「小説のことをおれに訊かれてもわかんない(笑)」

井上「過去の戦隊が出るやつ(『海賊戦隊ゴーカイジャー』〈2011〉)は何故かレッドじゃなくてお前が出たもんな。おれがやっぱり凱を出そうと。「死んでますよ」って言われたけど何とかなるからって。何とかなったもんな。あれでいいんだよな。神さまナンパしてね(一同笑)」

海津「『ゴーカイジャー』は見てたんだけど、バーで神さまが飲んでた」

井上「いい天国だよね。天国ってバーがあるんだぜ(一同笑)」

井上「『ジェットマン』が終わった後は(戦隊シリーズを)ゲストで何本か書いてた。『超光戦士シャンゼリオン』(1996)があって幻の傑作と言われてる(笑)。なかなかあれを知ってる人はいないんだけどね。興行的には大失敗したんだけど、白倉は『仮面ライダーアギト』(2001)で基本的に同じスタッフ使って復讐した。あいつは個人の能力を信じられる人間。賭けだから怖いじゃない? でもあいつはそれができる。

 何人か恩人はいるね。この人がいなかったらと思うとぞっとする。お前もおれがいなかったらぞっとするだろ?」

若松「おれはぞっとします」

井上「かわいいな、若松は。またおごってやる(一同笑)」(つづく