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渡辺美佐子 × 井上淳一 トークショー レポート・『真田風雲録』(1)

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 戦乱で孤児となった者たちは隕石で超能力を身につけた少年と出会った。成長した彼らは真田十勇士中村錦之助渡辺美佐子ジェリー藤尾ミッキー・カーチス米倉斉加年河原崎長一郎常田富士男、岡村春彦、春日俊二、大前均)となって戦う。

 加藤泰監督『真田風雲録』(1963)は福田善之の戯曲を映画化した、異色の傑作時代劇。壮大な決戦シーンや平原にひとり歩み去る錦之助の映像には目を奪われる。真田幸村千秋実をはじめ佐藤慶、本間千代子なども好演。

 2月にリバイバル上映とむささびのお霧=霧隠才蔵役の渡辺美佐子氏のトークがあった。聞き手は脚本家・監督の井上淳一氏が務める。

 渡辺氏は「今朝3度目のワクチンを打ってきたんです。後遺症も全然何ともないですね」と登場(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 渡辺「阿佐ヶ谷で加藤泰さんの特集に呼んでいただいて見た記憶があります。見たのはそれ以来で15年ぶりですね。ラブシーンになるとはずかしくて(笑)。

 福田善之さんっていう私の敬愛する作家が60年安保の挫折を念頭に置いて、真田隊に一般の人たちがついていかなかったということを安保に重ねて舞台になさったんですね。それまでの新劇は難しくて堅苦しくて、やっていても愉しい感じではなかったんですが、これは音楽が入っていたり忍者隊がツイストを踊ったりしてお客さまも笑ってくださって。あちこちで公演して、京都の公演で錦之助さんが有馬稲子と見に来てくださって、多分有馬さんが「あなたもこういうことやらなきゃだめよ」みたいなことおっしゃったんじゃないかと思うんですけど(笑)。それから映画化の話が始まったわけです」

井上「戯曲は、美佐子さんの霧隠才蔵がトップタイトルですね」

渡辺「舞台は猿飛佐助の方がいちばん小柄で、こう言っては悪いんですけどいちばんイケメンでない方がなさったんですね(一同笑)。で、結局お霧が愛したのはイケメンでない男だったというのがミソなんですけど、映画はその役を錦之助さんがなさってしまったものですからいろいろと狂いました。舞台では戦争の場面も花火や爆音は使ってなくてコンパクトでしたけど、映画はいろいろ使えるので違う話になっちゃった気はしないでもない」

井上「映画は錦之助さんを主役にしなくちゃいけないのでお霧の恋愛話ですが、戯曲では透明人間のままでお霧と交わっています(一同笑)。流産したので後で逆説的にそれが判る」

渡辺「そうですね、舞台ではラブシーンは一切なかったです。(舞台と映画と共通のキャストは)米倉さん、常田さんとか何人かいらっしゃいました。

 私たちは仕事が終わると代々木公園にみんな集まって、国会の周りをぐるぐる回るのが習慣でしたね。時間があれば行って。樺美智子さんが亡くなったとき、すぐそばにいたんです。そのときは判らなかったですが。

 福田さんが書かれて(出演者の)みんなも(テーマを)受け入れて、お客さまも熱く受け取ってくれた記憶がありますね。60年と70年の安保で挫折感みたいなのが覆っていて、芝居でもそういうのが多かったですね。

 舞台の本をいただいて、女らしい場面も戦いの場面もあって何を着よう、かつらはどうしようと悩んでおりましたら、演出の千田是也先生が「これですよ」って渡してくださったのは網タイツとポニーテール。それで映画にもなって、女忍者というとあの格好になりました」

井上「ぼくも『くノ一忍法帖 柳生外伝』(1998)の脚本を書いたことがあるんですが、まさか最初が美佐子さんだったとは」

井上錦之助さんは『宮本武蔵 般若坂の決闘』(1962)と『宮本武蔵 二刀流開眼』(1963)との間です」

渡辺「映画は1か月くらい、短いと20日間ぐらいで撮ってしまうんですけど、これは3か月くらいかかった記憶があります。戦闘の場面で馬がたくさん走るんで、大勢の方が落馬して「あ、折れてる!」と。肋骨とかが折れると顔がほんとに土気色になるんですね。瞬間的にさあっと。それで折れてると判るんです。毎日のように俳優さんが病院に運ばれていって、代わりの俳優さんがいらっしゃいました。

 私も馬から落ちるシーンがありますけど、ほんとは敵の武士をよけて下に落とす約束だったんですね。本番で馬も昂奮しちゃって、私が下になって落っこってしまったんです。網タイツだったんで、ももにぎざぎざができちゃう。動けないでいると監督が「いまの渡辺さんの顔!」って。顔を撮られて「はい、病院へ!」(一同笑)。しばらく網タイツの跡は消えませんでしたね。

 毎日のように馬場に行って馬の稽古をしてたんですけど。ちゃんとした武士が乗る設定じゃないので、鞍もないんですね。鞍とおぼしきものが敷いてあるだけで手綱も縄みたいで、監督は「できるだけ速く突っ走ってください!」。乗ってみると高くてすごく怖くて。仕事だから必死でしがみついて300メートルくらい走って撮ったんですが、映画ができたらそのシーンがないんです(一同笑)」(つづく

 

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