私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

塩田明彦 × 中森明夫 トークショー レポート・『麻希のいる世界』(2)

f:id:namerukarada:20220326043509j:plain

【アイドルのいる世界 (1)】

中森「監督は、アイドルはどうなんですか」

塩田「ぼくは知識がないんですよ。中森明菜で止まってる(笑)」

中森「BABYMETALの中元すず香さんが推しだというのはいろんなところに出てますが、これはどういうことなんですか!?(一同笑)」

塩田「グループアイドルを全然知らなくて、ハロプロももクロもAKBも知らないまま」

中森「知らないままと言っても、次から次に固有名詞が(一同笑)」

塩田「存在は知ってますけど判ってなかった。あるとき、BABYMETALのニュースにGIF動画が貼ってあって、アイドルとメタルというのが面白い。見世物としてよくできていると直感が働いて、アイドルに詳しい友だちに訊いたんです。その人はハロプロが好きでBABYMETALにあまり興味はなかったんですが、チケットとってくれてそれがイギリスに進出するときのライブビューイング。見に行って、めちゃくちゃ面白いと思ったんです。ぼくはもっぱら中元すず香が圧倒的だと。小学生のときにブルース・リーに出会って以来香港映画が好きでなんです。80~90年代に活躍したブリジッド・リンという女優で有名な役が東方不敗という役で男が秘伝をマスターして女性化したという。「はっ!」とやっただけで相手は吹っ飛ぶという、その人のキレに似てた。日本でブリジッド・リンならこの人だ!

 中元すず香は可憐ガールズというのをやっていて、さくら学院に入ってということを友人に聴いたわけですね。さくら学院のDVDを大人買いして、でも上手く受け取れなかったです。ぼく、言葉に熱が入ってます?」

中森「相当入ってますよ(一同笑)」

f:id:namerukarada:20220326043456j:plain

塩田「最初は判らなかったけど。でも磯野莉音という人は絶対泣かない設定だけど本当だろうかと言ったら、友人がまた2015年度の卒業のライブビューイングのチケットを取ってくれて、見たら磯野莉音さんがぼろ泣きしてたんですね。面白いんだ、この世界は。それでDVDを買ったりしました。いや磯野さんが泣いてたのは卒業ではなく、ドキュメンタリーだったかな」

中森「熱い語りでした(一同笑)。友人というのはイマジナリーフレンドじゃないかと一瞬よぎったんですが。クリエイター業界はハロープロジェクトのファンはたくさんいても、BABYMETALはあんまり聞かない」

塩田「あまり公表しないだけでいると思うんですよ」

中森「ぼくは銭湯めぐってその周囲の安い居酒屋行くのが趣味でね、中野の串カツ屋へ行くと店長が暑苦しくて太ってて。「今度うちの娘がテレビ出るんで見てくださいよ!」て。トイレ入ったらBABYMETALのポスターが貼ってあって、娘って呼んでるのかと。その人以来ですね、こんなに熱く…(一同笑)」

塩田「グループアイドルを全く知らなくて、あるとき判ったのは、自分の思い込んでいた女性の趣味と全く違う人を推したくなるんだと。衝撃でした。パワーバランスじゃないけど、たまたま自分が見た映像でその人が面白いことをやってたとかすごく些細なことで興味を持ちますよね。一度興味を持つと、自分の選択を正当化する方向で意識が動く。これがグループアイドルの面白さだと思ったんですが、かといって他のグループを追うということもなく」

中森「たださくら学院は不思議なグループですよね。アミューズという会社が不思議で、Perfumeがいる。

 ゼロ年代の半ばにPerfumeAKB48が出てきて、いまのアイドルブームになっていくんですけど、その前のモー娘。失速後に歌のアイドル冬の時代がありました。それがゼロ年代の前半から中盤くらいで、ぼくは少女映画と呼んでたんですけど新垣結衣とか石原さとみが出てきた。そういうのを取り上げる連載を「sabra」(小学館)でやってたんですね。ゼロ年代の歌のアイドル冬の時代に女優さんがアイドル的な立ち位置で、その中で『害虫』(2002)は異様な傑作でした。その前年の青山真治監督の『EUREKA』(2001)が海外で賞を取った。同じ年に岩井俊二監督で蒼井優の『リリィ・シュシュのすべて』(2001)があって、ダブルあおいでゼロ年代の少女映画が始まって、その翌年に『害虫』で両者が共演してるんですね」つづく