私の中の見えない炎

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野村宏伸 トークショー レポート・『メイン・テーマ』(1)

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 幼稚園の先生をしていた主人公(薬師丸ひろ子)は園児の父(財津和夫)に惹かれるが、その彼の周囲には別の女性(桃井かおり)がいた。海辺で偶然出会った青年(野村宏伸)とともに、主人公は旅する。

 薬師丸ひろ子主演で大ヒットした角川映画『メイン・テーマ』(1984)。薬師丸の相手役として野村宏伸が2万3000人の中から選ばれた。野村は角川映画10周年記念の『キャバレー』(1986)でも主演している。

 12月に新宿でリバイバル上映があり、野村宏伸氏のトークショーも行われた。聞き手は映画ジャーナリストの金原由佳氏が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

【久々に見直した感想】

野村「37年ぶりにぼくもおっきなスクリーンで見て、当時19歳でいま56歳で何て素敵な映画だろうと。全く判らずにやっていて、森田監督に言われるがままに。この映画が果たして面白いのか。でき上がって不思議な映画で、ラストシーンは呆気にとられる…。いま見るとワンシーンごとに感慨があって、当時は19歳で監督も33~34歳。まだ若いですよね。角川映画というおっきなものを任せられて、プレッシャーを感じながらも遊び心のある映画を遺したのは鬼才ですね。

 ハンバーガーでのやりとりとか面白いですね。ひろ子ちゃんもかわいい。20歳になって大人ぶってるところとか。台詞もおしゃれですね、ひとつひとつのかけ合いが。

 いま見て、役者を経験しちゃうとああいう表情とかリアクションとかはできない。何にも知らないからできるんだなと改めて思って、それはそれでいいなと。役者は芝居を経験しちゃうと計算しながら演技をするんで、それが全くないのはやろうと思ってできるリアクションではないなと思いましたね。目線とかね」

 

【オーディション】

野村「最初、ぼくはひろ子さんのファンではないですというところから始まって。オーディションでも「松田聖子さんのファンです」と答えた覚えがあります(笑)。特に俳優にも興味ないし、サラリーマンになりたいと。ただ賞金が500万だったので応募しましたと森田さんや角川春樹さんの目の前で答えました。他のみなさんは俳優の方も多かったし、ぜひやりたいという中で全然わけの判らない青年が下を向いていましたね」

 

 劇中では運転シーンが多いが、野村氏自ら運転している。

 

野村「高校3年ですぐ免許取りたいとと思ってたんで、車を運転するのがあこがれですぐに教習所通ってたので。このオーディションの第1条件が免許で、たまたま持ってたんで」

 

【共演者について】

野村「薬師丸さんに実際にお会いするとパワーと言うか魅力を感じました。スクリーンで見ているときよりも、素敵だなと思い出して。弟のようにかわいがってもらった覚えがありますね。

 撮影がないときもいっしょにいて、その記憶が残ってますね。もっと生意気でおれみたいなのと口も聞かないのかなと思ってたんで、全然そんなことはなかったです」

 

 野村氏を翻弄するような役どころが桃井かおり

 

野村「あの当時は年上のお姉さんにあこがれるというのはぼくにもあったし、そういうのも(演技に)自然に出てました。

 ジャズのセットのシーンで、日活の撮影所で撮ったんですけど、ぼくの尊敬する松田優作さんがかおりさんとも森田監督ともつき合いがあるから現場を見に来られて。いまでも覚えてますけど、映画やテレビで見ていた松田優作さんが近くにおられたときの感動。そういう俳優さんは、ぼくの中ではいないです。(存在感は)すごかったです、サングラスで(笑)。お話もさせていただいて幸せな時間でしたね」

 

【現場の想い出 (1)】

野村「最初のほうの撮影で、トップシーンの千葉の海でひろ子さんと出会うシーンを撮ったんですけど、ぼくも硬くなっちゃって。一応OKだったんですけど、沖縄のロケを1か月近くやった後にリテイクが決まって。野村自身が慣れてきたのもあって、千葉へ(もう1度)行ってリテイクで撮ったんですよ。それだけ時間もお金もあって、当時の角川映画はぜいたくですね。いまの時代にはない」(つづく