私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

切通理作 トークショー レポート・『ウルトラファイト』『仮面ライダー対ショッカー』『ウルトラQ』『ウルトラマン80』

 11月に行われた第22回TAMA映画祭では映画『仮面ライダー対ショッカー』(1972)、テレビ『ウルトラQ』(1966)の「カネゴンの繭」、『ウルトラマン80』(1980)の「まぼろしの街」そして『ウルトラファイト』(1970〜1971)が上映され、批評家の切通理作、多摩市文化振興財団の橋場万里子、たまロケーションサービスの鳥居俊平太の各氏のトークもあった。

 橋場・鳥居両氏のトークは大変面白いものであったが画像がないと内容が伝わらないので、切通氏の発言に絞ってレポしたい(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

 きょうの上映作品で唯一、劇場作品なのが『仮面ライダー対ショッカー』でデジタル化されたバージョンなのかすごく綺麗ですよね。公開したとき小学2年生で、中野駅前の東映の封切り館に見に行ったんですけど。いまの子どもたちは行儀がいいんですけど、当時は映画館で主題歌に唱和したり。丘の上に怪人たちが揃うシーンでは子どもたちもいっしょに名乗るんですよ。感極まった子どもがステージ上で変身ポーズとったりして、さすがにぼくは自分も子どもでしたけどやりすぎだと思いましたが、それぐらいフィーバーしてました。

 『ウルトラQ』は35mmで撮ってるだけあって、画面が鮮明ですね。「カネゴンの繭」は中川晴之助監督が撮ってるんですけど、撮影には1か月以上かかったらしくてその間に造成地の形が変わっていったって言われていますね。70年代以降の作品よりも子どもの捉え方がドライで、時代を超えた面白さがあるように思います。

 『ウルトラマン80』は脚本が山浦弘靖さんで、当時の「TVガイド」で自分のこの作品のことを「シュールやな」って言ってたのをぼくは覚えているんですけど。前半の雰囲気もミステリアスでいいし、驚いたのは飛ぶ人形(ウルトラマンの飛ぶシーンのための人形)ですね。当時はCG技術で飛ぶというのまでは至っていなくて、飛行人形はだいたい小さいんですが、今回はスーツアクターの等身大くらいまであるんですね。メカギラスの周りを飛ぶのがワンカットで、ぼくは高校生でしたけど感銘を受けました。大画面で見られるとは思わなかったです。円谷プロの特撮は(テレビドラマでも)映画として撮ってるところもあるし、初期作品はともかく後のほうのをスクリーンで見る機会はなかなかないので貴重ですね。

 そして『ウルトラファイト』を劇場というかこういうふうに見る機会があるとは、夢にも思っていませんでした。ぼく『ウルトラファイト』が大好きで(全話を)何周も見ました。はまっている人には面白いんですけど、大画面だとみなさんがだんだん引いてくるんじゃないか(一同笑)。そういう不安があって、以前に人といっしょに見ていてもだんだん周りが萎えてきてぼくだけがハイになって。お子さん連れの方が退室されるのを見て…(一同笑)。

 はまればはまるほど『ウルトラファイト』は奥深い。造成地の何もない荒野で怪獣が戦ってるという。当時スタジオで撮ることがなくなってきて、天気に左右されるロケーション主体になっていく。ウルトラシリーズもお金がかけられなくなって、野ざらしでスーツで戦うようになる。座頭市の真似をしたり仁義を切ったり、切ってる間に「とっとと戦え」みたいに戦いが始まったり。時代劇も最初は大映の撮影所でつくってたけど、だんだん勝プロとか独立プロ制作になっていって、江戸城とかでなく素浪人が荒野を旅していて戦うというニューシネマっぽくなっていく。それと同時代です。最初は『ウルトラマン』(1966)や『ウルトラセブン』(1967)の対決シーンを抜き焼きしてる番組だったんですけど、足りなくなってきて新撮するようになった。ただ新撮も最初は1対1で戦っているだけだったんですけど、だんだん寸劇めいてきて、『ウルトラマン』では悲しいキャラクターだったウーやシーボーズが喧嘩屋で仁義を切り合って戦うという。オリジナルからの性格を引きずっているのはアギラだけ。ウルトラセブンに変身できないときに戦うアギラは『ウルトラファイト』でもセブンの子分です。喧嘩屋が戦っているのがだんだんシュールな展開になってきて、最後のほうは夢と現実ともつかなくなる。同様に『座頭市』や『子連れ狼』も撮影所でつくっていたときは比較的、勧善懲悪だったんだけれどもニューシネマっぽくなると敵も味方もなくて、主人公は斬り殺して空しく海を見つめるという。「三里の浜」も制作の最後ですから、まさに『ウルトラファイト』の最終局面だったのではないかと。

 事情でもう1本つくられたのが「怪獣墓場」で、この映画祭にもゆかりのある熊谷健さんが監督されていて。円谷プロの実際の怪獣倉庫で撮られています。『ウルトラファイト』が後押しになって『帰ってきたウルトラマン』(1971)がつくられているころで、ステゴンとかキングザウルスⅢ世とか『帰マン』に登場する怪獣も見えますね。『ウルトラファイト』は荒野で虚無的な戦いを繰りひろげる怪獣とウルトラセブンの話ですけど、そこから特撮作品が花ひらいていったところがあったと思います。