アニメちゃん(山田ふしぎ)とマンガくん(岡田二三)の姉弟が壁にイラストを描いたら、宇宙の電波の影響でその絵からブースカ、カネゴン、ピグモンが実体化。3匹が騒動を巻き起こす。
湯浅憲明監督のファンタジー映画『アニメちゃん』(1984)は『ウルトラマン物語』(1984)と同時上映だが、その後にソフト化やテレビ放映、配信などの機会に恵まれずに埋もれていた。今年7月、阿佐ヶ谷にて “本宮映画劇場まつり” 内でリバイバル上映が行われ、筆者も初めて見ることができた。『アニメちゃん』の他にショートムービー『もぎりさん』(2018)と『もぎりさん session2』(2019)も上映され、筑摩書房の青木真次、フリーペーパー「名画座かんぺ」発行人ののむみち、本宮映画劇場まつり主宰の田村優子の各氏によるトークもあった。活動弁士の山田広野氏もちょっと発言された(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分のございます。ご了承ください)。
【『アニメちゃん』】
のむみち「私は、特撮は全く通ってなくて」
青木「のむみちさんは宝田明さんの本(『銀幕に愛をこめて ぼくはゴジラの同期生』〈筑摩書房〉)をつくったんだけど(笑)」
のむみち「(笑)すみませんって感じだけど得意でなくて」
のむみち「きょうの『アニメちゃん』はかわいかったね。本家のウルトラマンは見てないので、キャラクターとしてカネゴンとかピグモンとかは知ってたけど、ウルトラシリーズの中でもあんな感じなんですか」
青木「カネゴンはお金が大好きな子どもがああなっちゃって、もうちょっとブラック。厭なガキが。ピグモンは『ウルトラQ』(1966)ではガラモンっていう怪獣でダムを壊す。宇宙から隕石で落ちてきてダムを壊す。それが『ウルトラマン』(1966)ではピグモンっていうかわいい怪獣になっちゃって人間の味方に。
特撮マニアだったんだけど、今回初めて見たんですよ。1984年の映画で社会人になったばっかりで「え、アニメちゃん?」みたいな感じがあってスルーしちゃった」
田村「ウルトラ世代の人が大人になってちょうど見てない時期の映画ですね。当時のポスターでも『アニメちゃん』の扱いが小さくて」
青木「怪獣の口がちゃんと動くのはいい(笑)。街のガソリンスタンドのシーンでおじさんが一瞬映ってましたけど、打出親五さんといって円谷プロの怪獣倉庫で怪獣の繕いをやってた人なんです。もともと東宝系の俳優さんだったらしいんだけど怪獣倉庫の修理のおじさんで、多分俳優さんを雇うのが…。あの時期、円谷プロは結構大変だったらしいんですよ。社員で間に合わせたのかな。他にもスタッフの名前が俳優さんのところに入ってた。
あそこ(この日の会場内を指して)に『ボクは五才』(1970)の立て看板があるけど、いまの新作で立て看板はあるのかな。昔は街角や映画館にあったりして。あの作品は『アニメちゃん』の湯浅憲明監督で、宇津井健がお父さんで大阪万博の現場へ出稼ぎに行く。主人公の未就学児童(岡本健)が左卜全と北林谷栄のいる四国からお父さんを訪ねて家出しちゃう。字が読めないから、かつて行ったときに描いた絵を頼りに旅する。見た風景をたどっていくのが映画的。ロケシーンが多くてドキュメンタリータッチで大阪の西成あたりが一瞬映ったりして、私は傑作だと思ってて」
青木「湯浅監督は大映のガメラシリーズで有名な方ですけど、実はカラオケの映像を500本撮ってるらしいです。私は、カラオケは何十年も行ってないんだけど、曲を入れると映像が出るじゃないですか。それを500本。私が調べたんじゃなくて、寺脇研さんが書いてるんだけど(笑)。湯浅監督は大映が倒産した後に円谷の『ウルトラマン80』(1980)や『アニメちゃん』を撮って、わりと一貫して子どものものを撮ってた方ですね」
田村「ちっちゃいときは姉妹で育ってアイドル映画を見ることが多かったんですね。『ウルトラマン物語』と『アニメちゃん』のポスターをちらっと見て、それでアイドル映画を見て。ここ数年見たくなっていろいろ調べたら京都で上映されたとか判ってきて、都内じゃやりそうもないので円谷プロに直談判(笑)。最初は知り合いを通じて訊いて。この企画を考えたときに『アニメちゃん』しかないって」
山田「当時リアルタイムで、郡山と会津若松で見てます。ぼくの記憶だと郡山では『ウルトラマンZOFFY』(1984)と『ウルトラマンキッズ』(1984)と『アニメちゃん』の3本立てでした。会津若松は『ウルトラマン物語』と『アニメちゃん』という正規の組み合わせ。ぼくは会津若松出身なんで、郡山は親に無理を言って連れていってもらいました。でもだいぶ忘れてましたね」
田村「見たって人にめったに会ったことないです」
青木「きょうの昼間(の回)に来てた切通理作さんは当時見たらしい」
田村「切通さんはもう大人になってたけどウルトラシリーズだから見たらしいですね」
青木「大ざっぱに言っちゃうと80年代は映画が激変する時期で、各社が自分のスタジオを持つというスタジオが崩れて異業種の人が入ってきたりとか。転換期だった感じがします。いまは名画座で80年代のはあんまりかからないですね」
のむみち「昔に比べるとかかるようにはなってきましたね。神保町シアターが頑張ってたり」
青木「特撮・アニメ関係も子どもの見るものと言われてたのが、当時『ゴジラ』(1984)も復活して。その時代の揺れのひとつが『アニメちゃん』だったのかなという気も」(つづく)