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高寺成紀 インタビュー “2000年のヒーローに”・『仮面ライダークウガ』(1)

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 2000年からノンストップで継続する仮面ライダーシリーズ(それ以前は断続的だった)。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ』(2000)。警察と連携する仮面ライダー像や凝った設定、斬新なデザインや造型などいまなお語り継がれる。

 陣頭指揮を執った高寺成紀プロデューサーのインタビューがかつてネットにあったので、以下に引用したい。取材はちょうど20年前の夏に行われた、制作中の氏の情熱が伝わってくる。聞き手は添野知生・堺三保両氏が務める(明らかな誤字は訂正し、用字・用語は可能な限り統一した)。

 

 (1)バットマンがひとつのお手本です

——まず、仮面ライダー復活の経緯を教えて下さい。

 

高寺 とっかかりは、お父さん層のファン——僕と同世代の方々からの、昔のライダー体験にもとづく熱い声でしょうか。ゲームセンター用のプライズ商品に始まり、メディコムさんのフィギュアみたいに高額なものまで、かなりの動きを見せ始めて、東映社内だけでなく関連各社さんも、そういう風というか流れを感じていた。そこから次第に「仮面ライダーをまたやりたいですね」という声が高まってきまして、やってみましょうという話になりました。

 『クウガ』の母体になっているのは「オーティス」という企画なんですが、さらにその前に「ガーディアン」という企画があって、これはどちらかというと『スター・ウォーズ』のようなスペースオペラ——宇宙大活劇だったんです。

 

——プロデューサーとして企画に入られたのはいつごろですか。

 

高寺 『星獣戦隊ギンガマン』が(1999年の)1月に終わって、2月から着手したという形でしたね。文芸のお二人(大石真司、村山桂)とのお付き合いはその頃からですね。当時はまだ企画が実現する保証は何もなかったので、彼らは手弁当で参加してくれていました。放送まで約1年も準備期間があったというのは異例ですね。

 

——見ていていちばん良いと思うのは、リアルさと、新時代の正統派ヒーローとしての明朗さが、すごくいいバランスで保たれていることなんですが、過去のシリーズはどのぐらい意識しましたか。

 

高寺 まず、中途半端なリメイクはやめようとは思ってましたから、例えば、旧作をビデオで見直すということは、ほとんどやらなかったんです。頭の中になんとなく、ほとんど入っちゃってますしね…。何より、多くの人に見てほしかったので、「仮面ライダーというのはこういう番組だろう」という大まかなイメージは大切にしつつ、「こうじゃなきゃいけない」という教条主義的な部分は、極力排していこうと。バーンとぶちこわして、整理してみないと、中途半端な作品になってしまうと思ったので。確かに、そういう意味から、旧作の企画意図やそれによって派生した現象みたいなことは検証しましたね。

 ちなみに、近年やはり多くのヒーローがリメイクされましたけど、ゴジラウルトラマン。ある意味では『(スター・ウォーズ)エピソードⅠ 』とかもそうだと思うんですが、自分としては、旧作の呪縛のほうが見えてしまって、新作らしい面白さまでたどりつけないことが多かったんです。その点では、95年の『ガメラ(大怪獣空中決戦)』やティム・バートンの『バットマン』はお手本になる作品だったと思います。

 

——かつての仮面ライダーは、『クウガ』と違って、改造人間としての宿命を背負った、どちらかというと暗い、影のあるヒーローだったわけですよね。

 

高寺 「仮面ライダー」なのだから「暗いものをやってくれ」という声はありましたね。確かに人が生きていく中には悲しみもあるのですが、悲しいことだけが美しかったり正しかったりするわけじゃない。それをいかにがんばって乗り越えるか、というのが楽しいわけだし、やらなきゃいけないことなんじゃないかって。悲劇のヒーローって、ともすると何かを背負っているぜ、以上になりがちじゃないですか。僕としては、もっと前向きに、それを乗り越えていってこそ、初めて生きているってことになるんじゃないか、と思っているもので。

 あと、ヒーローというからには、まあ、お手本というと押しつけがましいですけれど、あの人みたいな人になりたいと、チビッコに思ってもらいたい。テレビの習慣性を考えると、毎週あのお兄ちゃんに会いたい、と思わせるヒーロー像にしたかったんです。そうするとやっぱり、頭抜けた明るさをもった、みんなが安心して見ていられる、誰にでも愛される人がそこにいないといけない。そのへんの考えをすりあわせながら、文芸チームと脚本の荒川荒川稔久さんといっしょに、かなりすったもんだしながら作っていきました。そのときの考えたことの複合体が、今の五代雄介を生んだんじゃないかと思います。つづく

以上、 “SFオンライン41号”より引用。 

 

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