私の中の見えない炎

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リリー・フランキー × 塚本晋也 トークショー(甦る映画魂 The Legend of 石井輝男)レポート・『盲獣vs一寸法師』(2)

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【撮影現場の想い出 (2)】

リリー「スタッフが、石井(石井輝男)さん除くと平均21歳くらい。石井さん入れると40くらいになる」

塚本「照明の方だけベテランでしたね」

リリー「そのときのスタッフがプロになってて、ときどき現場で会う。最初が『盲獣vs一寸法師』(2004)ならどんな映画でもつくれる(一同笑)」

塚本「自主映画みたいにつくられてて、お庭に大道具が山積み。あのお歳でああいうことをやってるのは、励みになりました」

リリー「最終的にアフレコになっちゃって、石井さんの家でやる。普通のテレビでアフレコして。石井さんが風邪で隣の部屋で寝てて。咳が聞こえて、まあ気持ちが入らない(一同笑)。

 最後に関係者集めて “犯人は!” ってのがクライマックス。犯人は女中の小松(わかばかなめ)って言うけど、でも小松はとっくに死んでて出てこない。大先輩に台本の矛盾を指摘するのも」

塚本「あれおかしい。でもいまさら進言できない」

リリー「小松は犯人じゃないし死んでますねって言ったら “間違う小五郎がいてもいいのよ” と(一同笑)。

 完成したばかりのとき、大分で回して、おれ舞台挨拶しました」

 

【出演者について (1)】

 出演者は初主演のリリー氏以下、個性派揃い。一寸法師役は小人プロレスのリトル・フランキー。

 

リリー「リトル・フランキーさん、小人プロレスの方ですけど、ぼくらの年代は地方にプロレスの興行が来ると前座は小人プロレス。リトル・フランキー、天草海坊主とか。自分のペンネームにもその音感が残ってる。

 いっしょにこたつ入ってると、リトルさんは顔がここぐらい(一同笑)。香ばしい話もあって、リトルさんはコーラが好き。でもいつもファンタ飲んでる。昔の自販機は背が高くて、売れるのはいちばん上。コーラまで手がとどかない。だからファンタを押してしまうと(一同笑)。

 予告で “Wフランキー、夢の共演” 。大方の人はどっちも知らねえ(一同笑)。予告ではドラッグクイーンの人たちを “ニューハーフたち!” と。雑だね(一同笑)」

 

 この映画には田中美絵子・元衆議院議員も出演していた。

 

リリー「突然スポーツ新聞にこの映画が一面で取り上げられて、うちの事務所にバンバン電話がかかってきてびっくりでした。裸でおっぱい出してた田中美絵子さん。この人が国会議員になって、民主党で与党になってた。この映画で乳出してた人が与党に…。“行かせません” ってあの政治手法もここで培われた(一同笑)。1回も同じシーンがないんです」

 

 ここで盲獣役・平山久能氏が客席から登場。

 

リリー「石井さんは盲獣と動物に厳しかった。おれには何もないのに。

 寺のシーンで “ネコいいね” って言い出して、おれにネコが寄ってきたら面白いと。おれの体にシーチキン塗って、背中にネコがポンッと乗るのをやってほしいと。ごらんになったら、シーチキンが映ってます。けどうまくいかないから “ネコ!” って怒鳴る。根津神社でも “ハト!” って怒鳴ってた(一同笑)」

平山「おっぱいがうまく揉めなくて、アフレコですからカメラの後ろから指示が飛んできて “違う、しっかり揉め!” 」

リリー「(盲獣は)前半はコンタクト、後半は裸眼だったね」

平山「コンタクト入れたことなくて大変でした」

塚本「『鉄男』(1989)も最初は入念に田口(田口トモロヲ)さんに鉄くっつけて撮って、後は簡略化。後半になるとお客さんの頭に定着してるから」

リリー「盲獣の家も紙でつくった香ばしいセット」

平山「撮影してるときも、乾いてなかったです(一同笑)」

リリー丹波丹波哲郎)さんが叩くと紙がセットになる」 

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 石井作品の常連・丹波哲郎はラストで唐突に登場し、場をさらう。

 

リリー「久々に丹波さんと石井さんが会ってるときに、石井さんが “いよー丹波ちゃん、痩せたね。ガン?” ってカジュアルですね(一同笑)。“いやいや、そうじゃないんだな” 。最終的にガンだったんですが。歳とるとフランクに訊く。石井さんは、この後に丹波さん主演で「怪人二十面相」やろうと。丹波さん死にそうだから早く撮らないとって。

 丹波さん、4時間くらい遅刻して。80歳で上下白いスウェット。お付きの方に背中支えられて入ってきて、そんな登場ですからシーンとなって。そしたら着替えてステッキを持ったらシャキッとなって “きょうは何をすればいいのかな” 。何をするか判ってない。“こういう話でね” と短く説明して、すると盲獣に丹波さんが芝居をつけ始める。何するか判ってない人が(一同笑)」

塚本「芝居に迫力があって、がんばろうって気になりました。ぼく気が小さくて何となくぐじゃぐじゃするけど」

リリー丹波さんがいないと、この映画どうやって終わるんだ。あれだけの眼力で何も判ってない。台本読むとかレベルを超えてる(一同笑)。

 芝居やったことなくて映画も出たことなくて、クレジットの最初がリリーで止めが丹波哲郎。止めが丹波の映画におれ出てる!」

 

 リリー氏の演じた小林紋三役には、長谷川博己が応募していたという。

 

リリー長谷川博己くんが小林役でオーディションに落ちてる。もし長谷川くんがやってたら、おれは映画に出なかった。いまでも「POPEYE」(マガジンハウス)に連載してるけど、昔アルバイトでぼくのイラスト取りに来る学生が長谷川くん」(つづく) 

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