【出演者について (2)】
リリー「おれの仕事場にポルノ映画のポスターが貼ってあって、長谷川(長谷川博己)くんは “どこに売ってるんですか” って。それで中野ブロードウェイに店があって、ポスターのファイルをめくって。それ途中で止めると店主に怒られるけど、全部めくるとコーヒーおごってもらえるよって言って。中大の学生で監督になりたいって。それで新劇に入って『進撃の巨人』(2014)に出る(一同笑)。石井(石井輝男)さんのファンでした。これ(『盲獣vs一寸法師』〈2004〉)のオーディション受けるとは変わってる。『シン・ゴジラ』(2016)や『セーラー服と機関銃 -卒業-』(2016)で、こういうメジャーな映画に出ていいのかって悩んじゃう。だからおれは、こういうのは出たくても出られない人がいるから出ときなさいと。『盲獣』にはいつでも出られる(一同笑)。
及川光博さん、あの役が決まらないって言ってるとき、ちょうどミッチーがおれの家の前に住んでて。ミッチーもアングラが好きで “こういうのあるよ” “ああいいですよ” ってよく判らなくて来た。(相手役の)女優さんはスタッフで、帰りに “スタッフの人とキスするの初めてでした” って。みんなよく判らず出てる(一同笑)。
ぼくの相手役の美女は橋本麗香さん。ト書きに「紋三、激して接吻」と。こんな綺麗な女優とキスするのか! その日は食べないで何度も歯磨いて、そのつもりで現場行ったら、石井さんが “リリーちゃん、ふりでいいから” (一同笑)。それからはずかしくなって、キスシーン自体厭になりました」
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『ゴジラ』(1984)や『ゴジラvsビオランテ』(1989)などでゴジラのスーツアクターを務め、北朝鮮の怪獣映画『プルガサリ 伝説の大怪獣』(1985)でも招聘されて怪獣を演じた薩摩剣八郎も出演。
リリー「薩摩剣八郎さんも出られてて、ゴジラのエピソードを聞いてたんですよ。『プルガサリ』のときは、金正日がゴジラのファンで、プルガサリの中身は薩摩剣八郎でと。薩摩さんが(北朝鮮に)呼ばれて入ってる」
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【石井監督について】
リリー・塚本両氏は、本作出演以前にも石井輝男作品に親しんでいた。
リリー「『直撃!地獄拳』(1974)は熱海の景色に “ニューヨーク” と(一同笑)」
塚本「10歳くらいで、親戚のお兄ちゃんと僕と弟とで見て笑って。ちゃちなスクリーンプロセスも(笑)。
『網走番外地』シリーズは1年に4本も撮ってて、夏になると網走でも雪がない。そこで(『網走番外地 南国の対決』〈1966〉では)沖縄行って、でも上がりを見たら葉っぱが丸い(笑)。針葉樹圏じゃないもんね」
リリー「 “映画なんてどんどん撮りゃいい、つまんないのが出ても次撮りゃいい” って。何十本も撮った人でないと言えない」
塚本「ぼくはいまも(全作品が)十何本。1本に3年かかっちゃって。けっこういっつもつくってても3年。一時期1本1年でつくったこともあるけど。『野火』(2015)の後は4年に1本。神代辰巳監督は『青春の蹉跌』(1974)をつくった年は1年に5本。『櫛の火』(1975)とか1年に4本。すごいですね、そのパワー」
リリー「撮ってると軽やかになるのかな」
塚本「動いちゃってると回転が速くなる」
リリー「滝田洋二郎さんの『痴漢電車』シリーズは3日で1本と(笑)」
石井監督が『盲獣』の前に、オウム真理教事件などを題材に撮った『地獄』(1999)には、平山久能氏も出演。
リリー「『地獄』はどこもかけてくれなくて、結局上野のホモ映画館で(一同笑)」
塚本「ぼく、そこへ見に行きましたよ。ほんとにびっくりしました」
リリー「オウムなんていまだに結審になってないのに『地獄』(の劇中で)でお前地獄行きだと」
下村「『シン・ゴジラ』のスクリプターの方は『地獄』がデビューでした」
リリー「スクリプター。『地獄』につながりを気にしてる部分があったのか(一同笑)」
塚本「石井さんの台本に “青春18きっぷ” とか(構想が)たくさん書いてあって “どう、 いいんじゃない!?” 」
リリー「120歳くらいまで生きないと。次は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ジャパン」ってのを健さん(高倉健)主演で撮りたいと。“リリーちゃん、やろう!” って。
石井さんのお墓は網走にあって、雪が降ると行けない。墓石には「安らかに 高倉健」って書いてあって、健さんの墓じゃないのに名前が(一同笑)」
【『野火』】
塚本氏が監督・主演を務めて高い評価を受けた『野火』では、塚本氏とリリー氏が久々に共演。
塚本「あのときの記憶で、『野火』に…」
リリー「『野火』の撮影では『盲獣』を思い出して」
塚本「だから出てくださると思ってました。あの心を忘れないと」
リリー「『野火』でもボランティアの人が多くて。(血が出るシーンで)ぼくの血が出てない。血糊がない、コンビニへ行こう、いやないだろって香ばしいささやきが(一同笑)。夜中の埼玉の公園で爆破とか、石井さんとやってること同じ」
塚本「許可は取ってます。でも消防車は(事前に)来てたのに(通報されて)また来ました。(爆発の)音は近くで聞くとボッくらいなのに、遠くで聞くと大きい」
リリー「野原で寝てるシーンとか、監督がカメラの位置決めて、自分でチェックしながら台詞言うってすごい」
塚本「それだけは上手い。他のことはできないです。道も判らないし(笑)」
リリー「塚本さんにベネチア(ベネチア国際映画祭)につれてってもらって。『リトル・ロマンス』(1979)の水路の橋の上でキスすると結ばれるっていう、ダイアン・レインの若いときの映画。それを思い出して、いっしょにいたコーディネーターの男に告りそうになりました(一同笑)。園(園子温)さんもベネチアでプロポーズしたって。ベネチアの雰囲気に飲まれましたね」
場内にはリリー氏主演の映画『美しい星』(2017)の吉田大八監督、石井氏に師事した山際永三監督の姿もあった。