テレビドラマではシナリオライターが、イメージリーダーという扱いを受けることが多いが、もちろんひとりでつくっているわけではなくしがらみも多い。『ヒーロー、ヒロインはこうして生まれる』(朝日新聞出版)にて小林靖子氏は制約について述べる。
「今はアニメなんかもそうですけど、制作委員会形式になっているので、「会議に出席してるからとりあえずなんか言わなきゃ。ダメ出ししなきゃ」ってかたもいるんですよ。脚本家としては、いろんな意見を自分の中で取捨選択して、スルーするものはスルーできればいいんですけど」(『ヒーロー、ヒロインはこうして生まれる』〈朝日新聞出版〉)
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小林靖子氏は2000年代後半くらいから特撮にアニメ(『ジョジョの奇妙な冒険』〈2012〉、『進撃の巨人』〈2013〉など)に超人的な仕事量だけれども「(執筆の時間を)そんなに決めてできないなあ。私はだらだらやってます」とか「勉強してるときに片付けしたくなるのと一緒ですよね。やんなきゃいけない方じゃない方にいっちゃうんですよね」といった意外な物言いに親近感が湧く。
最後は『ウルトラマンティガ』(1996)や『ウルトラマンガイア』(1998)、『ウルトラマンマックス』などを手がけ、『恐怖の作法 ホラー映画の技術』(河出書房新社)や『光を継ぐために ウルトラマンティガ』(洋泉社)といった著書もある小中千昭氏と、『仮面ライダー剣』(2004)や『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006)、アニメ『鋼の錬金術師』(2003)などで知られる會川昇氏。會川氏は佐々木守、長坂秀佳といった巨匠シナリオライターにも造詣が深い。
小中・會川両氏は、かつてオリジナルビデオ『ウルトラマングレート』(1990)にて協働しており、3つの中では最も特撮マニア度の濃厚な内容となった(この対談のみ何故かきちんと整理されておらず、話した内容をそのまま文字起こししていて読みにくい)。
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會川氏は、『ウルトラマンG』の時点での小中脚本は「前半『ウルトラQ』(66年放映)、後半『ウルトラマン』みたいな」構造でスローだったが『ウルトラマンティガ』では変わっていたと評する。
「情報も詰まってるし、昔だったら嫌だったであろう商品っていうかね、メカやなんかもきちっと、むしろ小中さんが一番使いこないてるみたいな感じになってきたし。最終回三部作、どういう共作(引用者注:第50〜52話の脚本は小中、右田昌万、長谷川圭一の各氏の連名になっている)のやり方でやったのか僕知らないけど、やっぱりすごく情に訴える話になっていて、情とSFのアイディアをうまくクロスさせて、きゅーっとあがって、それから何年かして、『マックス』(05〜06年放映)の最終回のときは、また私の知ってる小中脚本に戻ってたからそういう意味では小中さん『ティガ』のときは無理してたわけじゃないだろうけど、なんかああいうの書いてみようって意識的にやってたのかなって」(同上)
小中氏は「意識じゃなく、なんとなくそういうふうに強いられた」と話しているが、筆者など『ティガ』『マックス』を見ていて「情に訴える」というのは感じても小中脚本の構造の違いには思いが至らなかったので、さすがシナリオの研究家でもある會川氏の眼力には敬服する。
『ティガ』では防衛チームの創設の歴史が綿密に設定されていて、やはりマニア世代の作り手は細かいところに凝るなと思い込んでいたけれども、小中氏によると、上の年代の満田かずほプロデューサーから “戦争を放棄した世界” という設定を指示されて、それに応じた結果なのだという。
「今の時代スティーブ・ジョブスとかビル・ゲイツとか小さな企業やグループとかが一挙に世界を変えるっていうのは結構リアリティがあるんだけどそのときはほぼリアリティない設定ではあったんだけど、一人が非常に情熱的な人が迫り来る危機に、人類世界各国が対処しましょうという会議をしました。だから今がありますっていうヒストリーを作った。そうとはいえ怪獣が出てきたら戦闘機で戦う、戦車がある、間違いないよねって」(同上)
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