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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

小中和哉 × 切通理作 トークショー レポート・『赤々煉恋』(1)

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 家で、学校で、街で、周囲の人と言葉を交わさず、ひとりふらつく女子高生・樹里(土屋太鳳)。彼女はこの世の人ではなく、すでに自殺して魂だけの状態で、現世をさまよっていたのであった。そして、生きている人間には見えない死神・ “虫男”を見ることができる…。

 小中和哉監督の新作『赤々煉恋』(2013)は、自殺した女子高生の彷徨を描く異色のファンタジー映画。小中監督は映画『四月怪談』(1988)、『なぞの転校生』(1998)、『ぼくが処刑される未来』(2012)などSFファンタジーにこだわって撮りつづける、日本では貴重な作り手である。今回は朱川湊人氏の短編小説『アタシの、いちばん、ほしいもの』(『赤々煉恋』〈創元推理文庫〉所収)を原作に、自殺という難しい題材に挑んでいて、シリアスな力作に仕上がった。

 1月に新宿にて、小中監督と批評家の切通理作氏によるトークショーが行われた。切通氏は、昨年よりメルマガ“映画の友よ”を主宰しておられ、1220日配信号にて『赤々煉恋』をレビューしている。筆者はもともと小中映画はけっこう見ているが、切通氏の解説を読んでいっそう興味を引かれ、見に行く気になった(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや、整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

小中「切通さんにはゼロ号(試写)で見ていただいて、メルマガに書かれていて、面白い見方だなって思ったのが、“樹里は神になった”と」

切通「判らないように書いたつもりだったんですが。それとなく忍び込ませておいたんだけど(笑)」

 

 メルマガでは、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013)など他の映画やアニメと絡めて、論じられている。

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切通「ヒロインは神さまは何もしていないって言って、お墓や教会へ行く。劇中でも言われてたけど死者が(他にも)たくさんいるのに、どうして何も感じないのかなって。その答えが映画にない。自殺するとああなるなら、(自殺者遺族の会のシーンで)遺族の人の背後にいるはずなのに他にはいない。だから樹里は神なのかなって」

小中「そういうつもりは特になかったんですけど。筒井康隆さんの『エディプスの恋人』(新潮文庫)では、最後に主人公が神になる。全能感を持つけど世界の状態が判るだけであって、知ることができても何もできないっていう。切通さんに言われて、それを思い出しましたね」

切通手塚治虫火の鳥 未来編』(秋田文庫)でも、何もできない、救うこともできないっていうのがありましたね」

 

 小中監督が、原作の朱川氏の作品に触れたのは、テレビ『ウルトラマンメビウス』(2006)の仕事がきっかけであるという。『メビウス』に朱川氏は脚本家として参加し、小中監督が演出を手がけた。

 

小中「『メビウス』で朱川さんという作家を知って、朱川さんはあのころ直木賞を獲って世に出たころですね。作品をいろいろ読んで、年齢も同じなんですけど、志向性が似ていると思ったんです。市川森一さんみたいに、ファンタジーの形で人間の心を描きたいと思っている。精神分析的にSFの設定を使うところが同じだったんですね。

 何本か企画したんですけど、これ(『アタシの、いちばん、ほしいもの』)がいちばんお金がかからなさそうでした。デビュー作の『四月怪談』にも似ていて原点回帰かな、いまの切り口でできるかな、と」

赤々煉恋

赤々煉恋

 

 小中監督の第2作『四月怪談』(35ミリ作品としては第1作)は、大島弓子の同名漫画(白泉社文庫)が原作で、幽霊が街をさまようという展開は共通するが、『赤々煉恋』よりコミカルなつくりになっていた。制作当時の小中監督は、まだ20代前半である。

 

小中「いろいろつくってきて、もうすぐ51ですけどベテランと言われる歳になってしまって。やりたいことをやらないと、残り時間がないかなって。それで、いちばんやりたいのは、人の心を描くファンタジーかなと」

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 映画では、主人公の周縁諸人物が原作より詳しく描き込まれている。友人役には、吉沢亮清水富美加という『仮面ライダーフォーゼ』(2011~12)でも共演していたふたりが配されていて、『フォーゼ』を見ている人はそれだけで愉しくなる。主人公が友人(清水)と出逢い、やがて彼女を裏切ってしまう過程が描かれるほか、母親(秋本奈緒美)の存在も大きい。自殺前の回想シーンで母親は、部屋にこもる主人公に「あなたを信じてる」と告げる。

 

小中「映画では、樹里のお母さんを掘り下げようと思ったんです。『四月怪談』のときは、自分の気持ちが高校生側にいました。いまは親のほうですね。

 ひきこもりの人は、“あなたを信じてる” “可能性を信じてる”って言われるのが、きついらしいんです。綺麗な言葉ですけど、言われる側にとってはしんどいと。

 樹里本人は“私は友だちを裏切った悪い子だ”って言いたかったんです。あそこで言えれば自殺しなかった」(つづく)

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