【『ウルトラマンティガ』(2)】
『ウルトラマンティガ』(1996〜97)の第49話「ウルトラの星」は、往年の『ウルトラマン』(1966)の制作現場が描かれる、異色のバックステージ編。
倉持「(「ウルトラの星」では)円谷プロに残っていた古いミッチェルを使いました。円谷英二さん、鈴木清さんも使っていたのかな。
(第50話「もっと高く!」は)浦安の “なんちゃってモンゴル” で撮りました」
大滝「「ウルトラの星」では、サワイ総監(川地民夫)とムナカタが怪獣談義をする。司令室が座談室になるのは厭って言ったら、そのシーン全部切られました(笑)。原田さんは長回しが多くて、台本でも長かったですけど、3分くらいでしたね」
原田監督の作品ではないが、第47話「闇にさようなら」の結婚式のシーンでは、キャストみながいい笑顔だった。
高樹「結婚式のシーンで、普通に喜んでましたね。イルマ忘れて、めでたい!と(一同笑)」
切通「このシーンは、スタッフのエキストラが多いんですね」
撮影終了後に『ティガ』のスタッフ・キャストみなで海へ行ったのが印象深いと、原田監督はインタビューで話していた(影丸氏のみ、当日は引っ越しで行けなかったのだという)。
高樹「いまでも写真が残っているんですけど、ピクニックに行って、みんな洋服のまま海へ入った(笑)。どんだけ遊びたかったんだ。終わってから、影丸さんの引っ越しの手伝いに行きました。普通じゃない仲のよさ。毎日飲みに行って、私はお酒飲めなかったのに行っていました。おかしいね」
右田「『ティガ』の隊員の方たちと遊びに行くようになったのは後で、当時は脚本書きながら、隊員にあこがれているような感じでした。すれ違って「ムナカタ副隊長! イルマ隊長!」とか。円谷プロ社員なのに(笑)」
高樹「こうやって残っていくって、すごいことですね。私たちの中で原田さんが生きているということで、私たちの次の世代につないでいけたら。
『ティガ』のころにイトーヨーカドーとかを普通に歩いてたら、お母さんは気づいてないのに、3、4歳くらいのお子さんがあっとこちらに気づいて「しっ」とやったら「うん」って(笑)。最近も29歳くらいの男の人が、私が芸能人ってことを知らなくて、あるとき高樹澪だって言ったら「あっ、おれ見てました!」って。ちょっと株が上がった(笑)。責任重大ですよ、これから気をつけていかないと」
影丸「この本は、原田さんの歴史をいろいろな人がそれぞれのスタンスで喋ってる。台本みたいに起承転結がある本じゃないけど、感動してしまって。ひとりの人間は、こういうふうにいるんだと涙が出てしまいました」
ウルトラマンティガ Complete Blu-ray BOX
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2014/09/24
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (1件) を見る
【『ウルトラマンダイナ』】
『ウルトラマンダイナ』(1997〜98)では本の表題になった第20話「少年宇宙人」、第13話「怪盗ヒマラ」などを手がけ、原田監督のファンタジー志向が色濃くなった。第46話「君を想う力」では、女性隊員(斎藤りさ)と幼なじみの男性(右田昌万)との交歓が描かれる。幼なじみ役は、脚本の右田氏が好演。
右田「『ダイナ』当時、原田さんが42歳。自分を振り返って、あそこまでどんと来いという感じは…。大人、お父さんっていう感じで。脚本家が出るっていうんで、当時高野宏一さんに大丈夫かよって言われたから「右田くらい撮ってやるよ、っておれは返したよ」と」
倉持「この役は脚本家の右田くんがやるっていうことで、脚本家が?っていう反応もあったんですよ。この現場は松本で、雨も降ったけど原田さんはにこにこしてました。右田さんが緊張しないようにロングで、カメラも望遠で撮りました。あの役は右田さんでないとできないですね」
右田「原田さんは、普段のあなたでやってくれと。役者は普段の自分が大事。あの経験は自分には大きくて、演技しないことが演技だなって」
倉持「よく言ってたのが、台詞は俳優が一生懸命やるから、どう撮ってもいい。それより、台詞のないときをどう撮るか。スタートすると、俳優さんがすぐ言い始めちゃう。まだ言うな、何カットか撮ってから台詞喋れ、とか。『ウルトラマンガイア』(1998〜99)だか『ウルトラマンコスモス』(2001〜2002)だかで「お前はただ立ってろ」と。台詞もアクションもなく、あれは難しい。「できないときはつば飲み込め、まばたきしろ」って。その人の持っているものを出そうとしてました。ある人にとっては厳しいだろうし、ある人にとっては優しい」
大滝「いま倉持さんが話しているとき、原田さんが来た感じがしましたね。霊感ないけど(笑)」
倉持「現場でいっしょに飲みに行くようになったのは『ダイナ』から。私は無趣味で酒飲むくらいだけど、監督は多趣味な方でしたね」
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 1999/10/25
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (2件) を見る
原田監督は、つづいて『ウルトラマンガイア』、『ウルトラマンコスモス』も撮っている。『コスモス』には、影丸氏や右田氏も準レギュラーで出演している。
影丸「『コスモス』のキスシーンでは、メガネが取れてハプニング(笑)」
大滝「ハプニングと言えば、(『ティガ』の第30話)「怪獣動物園」では不破万作さんのパンチが多香美ちゃんに当たって(笑)」
影丸「『コスモス』の医師役は、脚本家の人がいじってくれるキャラ。隊長の嶋大輔さんがうらやましがってましたね。
『コスモス』では、ぼく以上に監督が愉しんでて、倉持さんと話してました」
『コスモス』の主演・ムサシ隊員役の杉浦太陽氏は、原田監督に鍛えられたという。
渋谷「杉浦太陽くんは、本にも書いてありますけど、『コスモス』ではすごく苦しんだ。でも自分にとって原田監督は「思い出の先生」だと。つらい思い出だったけど「原稿はお任せします」ってノーチェックだったから、切通さんは感動したっておっしゃってて。『ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(2015)の舞台挨拶で最近会ったときも「そうなんですか、ぼくは大丈夫ですよ」って」
『コスモス』の第57話「雪の扉」では、ゲストの天本英世氏が名演を遺した。
倉持「ゲストが天本英世さんでみんな緊張してたら、終わった後で“円谷英二さんにはお世話になった”と挨拶していただいて、監督もあんなふうに言ってもらえて最高だねって」(つづく)
【関連記事】小中千昭 × 切通理作 トークショー“もっと高く!”レポート・『光を継ぐために ウルトラマンティガ』(1)
少年宇宙人 ~平成ウルトラマン監督・原田昌樹と映像の職人たち~
- 作者: 切通理作,原田昌樹
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2015/03/02
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る