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寺田農 × 速水典子 × 志水季里子 トークショー(甦る相米慎二)レポート・『ラブホテル』(1)

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 1980年代の日本映画を代表する人物のひとりとして、よく名が挙がるのが、故・相米慎二監督である。『セーラー服と機関銃』(1981)、『魚影の群れ』(1983)、『台風クラブ』(1985)といった作品群において、長回しのつるべうちで独特でアナーキーな世界をつくりあげ、この時代にカリスマ的な人気を誇った。

 相米作品を90年代以降に見始めた筆者は、『魚影の群れ』、『台風クラブ』、『お引越し』、『夏の庭 The Friend』(1994)などをテレビやDVDで見ていき、特に『魚影』『台風』など面白いと思ったものの、やはり彼の作品に強い愛着を持つのは、80年代にリアルタイムで接することのできた上の世代だろうという気がしていた。

 そんな思いが一気にひっくりかえったのは、この度の特集上映“甦る相米慎二”による。今年の1月から全作品が渋谷のユーロスペースにて上映されたのだが、初めてスクリーンで相米作品に接すると、長回しのおかげで、中途で止められることのない役者たちの全身の演技が、圧倒的な魅惑を放っていた。

 “甦る相米慎二”では、のべ30人にのぼるスタッフ・キャストが日替わりでトークに登場。ひとりの映画監督で、これほどの規模のトークが行われるのは、空前のことであるという。

 2013131日、『ラブホテル』(1985)の上映後に、出演者である寺田農 × 速水典子 × 志水季里子のトークショーが行われた。

 『ラブホテル』は“にっかつロマンポルノ”のレーベルで制作されており、1970年代ににっかつにて助監督を務めていた相米監督にとっては、古巣に帰った思いだったかもしれない。シナリオは、漫画家・映画監督として知られる石井隆が執筆。 

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 経営する小さな会社がつぶれ、借金の取り立てに来たやくざに、目の前で妻(志水季里子)を手込めにされてしまった村木(寺田農)。死を決意して、ホテトル嬢・名美(速水典子)を呼んで痛めつけるが、彼女に魅せられた村木は、死なずにタクシードライバーとして再起。2年後のある夜、ふたりは偶然再会するのだった。

 

 相米作品らしい長回しの演出は『ラブホテル』にも随所にあるのだが、『ションベンライダー』(1983)や『雪の断章』のように筋が破綻するほどの長回しはなく、『魚影の群れ』のように冗長なまでに役者を追いかけるシーンもなく、全編に渡って安定感のある作品であった。 

 今回のトークでは、メインの役者さん三人が登壇。

 寺田農さんは、アニメ映画『天空の城ラピュタ』(1986)のムスカ役で知られるが、相米慎二作品の常連俳優で、全13本のうち10本に出演。出演していない『お引越し』でも、メイキング番組のナレーションを務めた。昨2012年には、年甲斐のないスキャンダルでも話題になった(笑)。

 

 速水典子さんは、『ラブホテル』の脚本を手がけた石井隆監督の常連で、『死んでもいい』(1992)、『ヌードの夜』(1993)など、90年代の石井作品に多数登場した。『ラブホテル』はやはり代表作で、やや硬い演技ながら、強い印象を感じさせる。

 相米監督の逝去直後のインタビューでは、速水さんが制作側で相米が監督するという話があったと言っておられたが(『キネマ旬報』2001年11月上旬号)、今回のトークでその話は出なかった。

 

 志水季里子さんは、80年代からにっかつロマンポルノで活躍し、『ラブホテル』では、主人公・村木の妻の役。他に『マルサの女』(1987)の愛人役で知られ、近年も映画『仮面ライダー響鬼7人の戦鬼』(2005)、テレビ『水戸黄門』(2011)など、コンスタントに活動されている。 

 トークの進行役は、多数の相米作品にて助監督を務めた、榎戸耕史監督である。(つづく)

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