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寺田農 × 速水典子 × 志水季里子 トークショー(甦る相米慎二)レポート・『ラブホテル』(1)

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 1980年代の日本映画を代表する人物のひとりとして、よく名が挙がるのが、故・相米慎二監督。『セーラー服と機関銃』(1981)、『魚影の群れ』(1983)、『台風クラブ』(1985)といった作品群において、長回しのつるべうちで独特でアナーキーな世界をつくりあげ、この時代にカリスマ的な人気を誇った。

 今年の1月から全作品が渋谷のユーロスペースにて上映された(特集上映“甦る相米慎二”)。のべ30人にのぼるスタッフ・キャストが日替わりでトークに登場。ひとりの映画監督で、これほどの規模のトークが行われるのは、空前のことであるという。

 2013131日、『ラブホテル』(1985)の上映後に、出演者である寺田農 × 速水典子 × 志水季里子のトークショーが行われた。

 『ラブホテル』は“にっかつロマンポルノ”のレーベルで制作されており、1970年代ににっかつにて助監督を務めていた相米監督にとっては、古巣に帰った思いだったかもしれない。シナリオは、漫画家・映画監督として知られる石井隆が執筆。 

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 経営する小さな会社がつぶれ、借金の取り立てに来たやくざに、目の前で妻(志水季里子)を手込めにされてしまった村木(寺田農)。死を決意して、ホテトル嬢・名美(速水典子)を呼んで痛めつけるが、彼女に魅せられた村木は、死なずにタクシードライバーとして再起。2年後のある夜、ふたりは偶然再会するのだった。

 今回のトークでは、メインの役者さん3人が登壇した。トークの進行役は、多数の相米作品にて助監督を務めた、榎戸耕史監督。

 

【準備段階】

 寺田農さんは、アニメ映画『天空の城ラピュタ』(1986)のムスカ役で知られるが、相米慎二作品の常連俳優で、全13本のうち10本に出演。出演していない『お引越し』でも、メイキング番組のナレーションを務めた。『セーラー服と機関銃』(1981)や『ションベンライダー』(1983)などすでに相米作品を経験済みで、『ラブホテル』のころは台本を見て自身の役を選んでいたという。それゆえ、助監督だった榎戸耕史監督とは周知の仲。

 

榎戸「『夜叉』(1985)だったか、寺田さんが仕事をされている東宝撮影所に行って、食堂で今回どの役をやりますかと」

寺田「台本を見て、ああ石井隆さんが書いたんだって、じゃあおれ村木をやるって」

榎戸相米さんは、“え、農さん村木をやるか”と」

 

 相米監督は、村木役には別の俳優を想定していたらしい。 

 舞台やテレビと違って、映画では一般にリハーサルはあまりやらないようなのだが、『ラブホテル』(1985)は低予算で撮影に10日しかかけられないということで、事前にリハーサルが行われた。もっとも演技の稽古というより、ストーリーや設定について議論・雑談する場であったようである。

 

寺田「昼の12時から酒飲みながら始めて、5時頃に新宿に移動して飲むと」

榎戸「にっかつ芸術学院とか劇団ひまわりとか、いろいろなところを借りてリハーサルしましたね。ひまわりでロマンポルノかって(一同笑)」

寺田「散々何日も話した後、相米が“ひとつだけ判ったことがある”と言い出した。“何が判ったんだよ” “この名美は、大股で歩く!” “それだけかよ!”(一同笑)」

速水「大股ってことで、後で歩く効果音は、私の足音じゃなくて男性スタッフがヒール履いた音を使ってましたね(笑)」

寺田相米とふたりで『ラルジャン』(1983)を見に行ったとき、“映画は、画より音だ”と言ってた。靴音もそうだけど、相米の映画はいつも効果音にすごくこだわってる」

 

【撮影現場 (1)】

 撮影はわずか10日間で、連日徹夜の作業となった。

 

榎戸「昼12時スタートで、終わるのが翌朝の7時とか。で、きついので1日だけ休日を入れました」

寺田「監督が役者とリハーサルしてる間、スタッフは寝てる。で、スタッフが準備してる間、役者は寝てると。でも速水さんが寝ると、監督は“起きろ!”と起こしてた(一同笑)」

 

 ちなみに撮影に使われたラブホテルは、会場となったユーロスペースから歩いて2分程度のところに、いまも現存するという。

 

榎戸「あまりにきつかったから、その後2、3年はこの辺へ来たくなかったですね」

つづく

 

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