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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

田村亮 × 清水綋治 × 原知佐子 トークショー(実相寺昭雄展 ウルトラマンからオペラ『魔笛』まで)レポート (2)

実相寺昭雄 映画

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【エピソード (2)】 

清水「『曼荼羅』(1971)のとき、亮ちゃんといっしょに長い台詞を覚えたのに、後ろからしか撮らないんだ(笑)。そうかと思えば、顔のものすごいアップとか(一同笑)」 

田村「目のアップとかね。 

 『無常』(1970)のとき、石仏を削るシーンをやってて、いつまで経ってもカットがかからないんです。おかしいな、おれの芝居が悪いのかなと思ったら、カメラの横で監督が寝てて(一同笑)。こっちは思わず、ごほんと咳払いして(笑)。

 『無常』で、嵐山で撮るのに宿舎は滋賀で、通うのが大変で。撮影は夜遅くまでかかるので、きつかったですよ。この頃の監督は、コーヒーだけでお酒飲まなかったから」 

「若いときはね。酒乱になるのが怖いからって言ってました。でも、年とったら飲むようになって、現場は必ず5時に終わってお酒」 

田村「いいな~(一同笑)」 

 

【ラブシーン】 

田村「『無常』は近親相姦の話でしたから、ラブシーン、濡れ場の多いこと。またねちっこく撮るんですよ。女優さんは大変だったと思う。男はまだ楽なんだけどね。

 唾が好きでしたね。キスシーンで糸を引いてくれって言うんだよ。でも、相手からこっちに糸を引くって難しいでしょう。気持ちいいものでもないし(一同笑)」 

 

 『宵闇せまれば』(1969)にも、女子学生の口から流れる唾のアップという、何とも言い難いシーンがある。 

 

「(実相寺は)女は物と思っている節があったね。映画でも男の人にはまだ精神があるけど、女にはあまりそういうのを感じない」 

清水「そうか。でも、ラブシーンでは、男はあまり撮ってないんだよ。女の人を映して、男は移動させるだけだから楽なんだ(一同笑)」 

「私は(実相寺作品では)濡れ場は一度もないんですよ。失礼しちゃいますね(一同笑)」 

田村「やっぱり自分の女房を見られるのは厭なんだ(一同笑)。

 『無常』は、もう昼間からからんでるシーンが多くて。(シナリオでは)ト書きは一行だけなんです。こりゃ1時間くらいで終わるかなと思ったら、一行なのに何十カット撮りますって。おかげでカットごとに何十回もからみをして、5時間くらいかかりました(一同笑)」

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【役者と監督】 

 故・岸田森実相寺監督と親しく、テレビ『怪奇大作戦』(1968)、映画『曼荼羅』や『哥』(1972)などで組んだほか、『歌麿 夢と知りせば』(1977)では主役・歌麿役で起用された。『曼荼羅』でも、主役ではないのだが、岸田の目を見開いた怪演は印象に残る。 

 

田村「『哥』では、岸田森さんとコミカルにやろうって話をして。撮り始めたら、ふたりとも吹き出しちゃって。監督は、面白いけどやめようって。岸田さんはコミカルな演技が好きでしたね」 

清水「岸田さんは狂気じみたことが好きな役者さんだったね。それを実相寺が、うっとり見てるという(笑)。それと、草野(大悟)は、やっぱりすごいやつだったよ」 

 

 故・草野大悟は、『怪奇大作戦』『曼荼羅』などで起用されている。この人も、かなり不気味なルックスであった。 

 岸田森が、元妻の樹木希林内田裕也の前)、草野らと結成したのが劇団“六月劇場”。清水氏ら『宵闇』に出演した男子学生3人が、このメンバーであった。 

 

「まあとにかく、役者に言わない人でしたよ。ほんとに理解できない(笑)」

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【印象に残る出演作】 

田村「『無常』は宿泊がきつかったのをよく覚えてるんですが、『哥』はまたとにかく金がなくて。(旧家の場面で、どこがセットでどこがロケかを問われて)立派だったなら、ロケです(一同笑)。(予算の半分が美術費だったと聞いたが、と問われて)それくらい金がなかったんです(一同爆笑)」  

 

 1986年に実相寺監督が“火曜サスペンス劇場”の一本として撮ったのが『青い沼の女』。泉鏡花『沼夫人』を原作とした、何やら奇怪なミステリードラマであった。いかにもチープで金はかかってないのだが、その条件の悪さが、作り手の執念に油を注いだ(?)ようにも思える怪作である。 

 

田村「『青い沼の女』の沼は、全部セットなんです。狭いセットで沼をどう映すかが、きっと難しかったんでしょうが、監督は実験的にしたいと言ってたとカメラの中堀正夫さんが話してました。 

 カメラのレンズの周りに、ワセリンを塗るんです」 

 

 ワセリンを塗ると、映像がぼやけて、幻想的な映像が出来上がる。こうすると、照明のライトがうまく隠れてくれるという効能もあったという。 

 

田村「で、いつも監督本人がカメラをのぞくんです。もちろん中堀さんはいやがるんだけど(笑)。

 いまはなくなった東宝ビルトのセットで、(ヒロインの)山本陽子さんをだっこして沼へ入るんだけど、寒いこと(笑)。

 ぼくはもう4本目だか5本目だかで、監督の手のうちは判っていたんですが、陽子さんは初めてですからね。監督の好きな魚眼レンズで、陽子さんがとんでもない顔に映ってて、彼女は“え?これでOKですか”って(一同笑)」   

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 1989年に、にっかつの“ロッポニカ”枠の一本として撮ったのが、マルキ・ド・サド原作の『悪徳の栄え』。主演は清水氏である。 

清水「(自分が主役で)石橋蓮司寺田農が脇だったんです。で、まあ蓮司はあの通り怖いですからね(笑)。農(ノー)ちゃんも怖いけど、事前に一度話す会をもうけてくれって言ったことがあります。怖いもん(笑)。

 『悪徳』のときに限らず、実相寺作品はいつも金がなくて、戦いながらつくっているというところがありました。そんな実相寺のおもしろさ、けったいさを誰かに解き明かしてほしいですね。ほんとに極北にいる人でした」 

 

 お三方、お疲れさまでした。 

 トークが終わって展示を見ていると、原氏が来られていたが、口やかましい監視員に、ペットボトルをしまってくださいなどと注意されていて、まさか実相寺夫人とは思ってないんだろうなと思わず笑ってしまった。 

 

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